はじめに
前回、仮想刑事事件(マスク不着用罪)のお話を始めました。
その第2話です。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
法律事務所での会話
事務員: 「先生、今日、国選の待機日だったんですね。
事件配点のFAXが来てたので、先生にメールで転送しておきました。」
弁護士: 「あっ、ありがとうございます。さっき、電話で配点受けたんです。
日本人男性で、赤坂署でした。事務所から近くて良かったです。」
事務員: 「先生、他に言うことないんですかっ。」
弁護士: 「はぁ。そうですよ。ついにマスク不着用罪の事件がついに来ましたよ。
今日、勾留決定です。マスク着けなかっただけで、身柄拘束ですよ。
全くコロナってのは。」
事務員: 「まだ、ニュースでも、それほど聞かないので、見せしめですかね。
きっと、マスクをしないという強い信念の人ですよ。いわゆる
確信犯ってやつですよ。マスク不着用罪が憲法違ってことで、
全面的に争いましょう。」
弁護士: 「はぁ~。全く。」
警察署にて初回の接見
弁護士: 「はじめまして、弁護士の小林です。国選をご自身で頼まれましたよね。
私が、国選弁護人に選任されました。宜しくお願い致します。」
被疑者: 「はい。」
弁護士: 「あなたは、令和1○年○月○日、つまり、3日前ですが、
正当な理由なく、港区○-○-○の○○ビル前の路上において、
マスクを着用しなかったものである、というマスク不着用罪で
逮捕され、本日勾留決定がされました。
この事実は、間違いないんですか?」
被疑者: 「マスクしてましたけど、おっさんにマスクを取られたんですよ。」
弁護士: 「取られた? 突然マスクを取られたんですか?」
被疑者: 「いや、知らないおっさんが、突然近づいてきて、
『おまえ、鼻までマスクしてないじゃないか』って言われて・・・。
近くに来て、『おまえ、そのマスク、何とか製じゃないか。
そんなのマスクしているうちに入らないんだよ。』とか言われて。
それで、マスクを外されて、道に投げつけられたんですよ。」
弁護士: 「それで、どうしたんですか?」
被疑者: 「私、『ふざけんな。』って言いましたよ。男はすぐに立ち去ったん
ですが、あまりに腹が立って、すこし男を追いかけて歩いて、
男がいなくなっても、イライラしてたんで、一人で『ふざけんな。」って
叫んでいたら、突然警察が来て・・・。それで、捕まったんです。」
弁護士: 「その男に手を出したりしたんですか?」
被疑者: 「してませんよ。『ふざけんな。』とは大声でどなりましたけど。」
弁護士: 「なるほど。それで、警察に捕まったのは、今回が初めてですか?」
被疑者: 「いや、覚醒剤で何度も捕まってます。実は、先月出所したばっかりなん
ですよ。」
弁護士: 「そうですか。職質で疑われたんですね。尿検査もしたでしょ。」
被疑者: 「はい。でも陰性でした。クスリはもうやってません。
でも、マスクをしてないってことで。」
弁護士: 「警察官には、マスクを男に取られたってことは説明したんですよね。」
被疑者: 「しましたよ。でも、信じてもらえなくて。」
弁護士: 「マスクを投げつけられた場所とかも言いましたか。
警察はマスクを確認したんですか。」
被疑者: 「言いましたけど、マスク無かったって。」
弁護士: 「いずれにしても、マスクを取られて、マスクを着用していなかった
という事実はありますが、故意にマスクを着けていなかったわけでは
ないですからね。」
被疑者: 「マスク不着用罪ができたの知ってましたけど、
こんな厳しいとか思いませんでした。」
弁護士: 「実際、柔軟に運用されているはずですが、運が悪かったんだと思います。
前科とかの関係もあって・・・。
ところで、同居されているご家族はいらっしゃるんですか?」
被疑者: 「妻がいます。しかも、出所したばかりなのに、知り合いのリフォームの
会社で働かせてもらうことになったのに。」
弁護士: 「そうですか。
ご存じかもしれませんが、(黙秘権、調書への指印等、
基本的なことをお話して)これからの弁護方針を説明しますね。」
(つづく)
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