理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

自己紹介(理系弁護士)

 

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ザルツブルグのカフェ・モーツアルトにて

 

 東京で弁護士・弁理士をしている小林正和です。

 

 2020年のコロナ危機を経験し、いろいろと思うところもあって、ブログを始めることにしました。

 ブログを書く目的は、自分がこれまでどう生きてきて、これからどう生きていくのかを記録しておくこと。私も、(コロナに限らず、いろんな事情で)突然死んでしまうかもしれませんので、記録として残しておきたいと思いました。

 

 ですので、内容としては、あまり人の役に立つ記事はないかもしれません。

 

 しかし、私のような仕事にご興味があったり、特許知財)関係の仕事をされていたり、ビール宇宙が異常に好きだったり、不運にも刑事事件に関与することになった方(加害者、被害者、関係者)にとっては、もしかしたら、何かお役に立つこともあるかもしれません。

 

 どうぞよろしくお願いします。

 

 以下、簡単な自己紹介。

 

 <趣味>

 タイトルのとおりですが、一番はビールです。どちらかというと、おとなしく飲むのが好きです。

 宇宙も好きですが、主には、スタートレックStarTrek)です。

 特許も、長年やっているので、仕事ですが、まぁまぁ好きです。

 刑事事件は、実は、結構好きです。帰国後は、諸事情で減らしましたが。

 

 <職歴・経歴>

 ・東京大学 工学部 航空宇宙工学科 卒業

 ・東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 修了 

 ・特許庁審査官を7年半。その間、夜間の筑波ロースクール修了。

 ・司法試験合格後、退職し、司法修習を経て、2009年から弁護士。その後、弁理士も登録。

 ・2年間ドイツ・ミュンヘンに留学。マックスプランク研究所付設のLL.M.を修了し、その後、ミュンヘンにある法律事務所・特許事務所で研修して、帰国。

 ・2019年からは、母校の筑波ロースクールで、知財法演習の非常勤講師も担当。

 

 <主な仕事>

 自分のバックグラウンドや興味やご紹介の関係で、以下の4種類の仕事が多いです。

 ・知財事件(特に、特許紛争)やその他の技術が関連する紛争・契約等

 ・学校・企業の不祥事、コンプライアンス、ハラスメント事案の第三者委員

 ・知財(特に)特許関係の授業やセミナーの講師

 ・刑事事件 ※既に10年で200件くらいやりましたが、今後は減らす予定。

 もっとも、ごく普通の企業法務や民事事件(家事含む)も結構扱っています。

 

 詳細は、http://www.nakapat.gr.jp/ja/professionals/masakazu-kobayashimr/

 

 

刑事事件 ー 示談

はじめに

 

今日は、刑事事件における示談について、ご説明したいと思います。

 

・「示談金が振り込まれない!」

・「示談金の額はいくら(が妥当)でしょうか?」

 

については、以下の記事をご覧ください。 

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

示談の進め方

 

示談の進め方は、弁護士により様々だと思います。おそらく正解というものはなく、それぞれの弁護人の力量、信念、キャラクターによるところが大きいのではないかと思います。

 

被疑者・被告人が、たとえば窃盗罪などの罪を認めている場合において、弁護活動として最も重要となるのが、示談です。示談をすることで、(裁判にならずに)不起訴になったり、裁判でも執行猶予が付く可能性が各段に大きくなります。

 

まずは、検察官から、被害者の連絡先を教えてもらい、示談交渉を始めます。

示談が成立すると、被疑者段階では検察官に、被告人段階では裁判所に、示談書を提出し、有利な情状として考慮してもらうよう主張します。

 

示談が順調に行く場合

 

被害者に電話をし、被疑者・被告人が罪を認めた上で、反省していることを伝えます。

 

その際の被害者の声のトーンや話す内容から、被害者の被害感情が大きくないと判断した場合には、端的に示談をしたい旨と示談金の額を提案します。

そして、了解を頂ければ、直接お会いして、示談書を交わし、示談金をその場でお支払いして示談が成立します。

 

示談が順調に行かない場合ー被害者が怒っている等

 

電話した際に、被害者やその家族が、①非常に怒っていたり、②被告人に関して色々と執拗に問い詰めてきたり(「死刑にしろ!」など)、あるいは、③我々弁護人に対して敵意をむき出しにしたりする場合も結構あります。気持ちは十分に分かります。

 

もっとも、示談をする際には、このような嫌な経験をするので、刑事事件はやりたくないという弁護士が多いのは事実です。ストレスも溜まりますしね。でも誰かがやらねばなりません。

 

私は、被疑者・被告人に代わって、「本当に、申し訳ありませんでした。」と非常に丁寧に謝罪を致します

 

一方で、弁護人の中には、あくまでの被疑者・被告人の謝罪の意思を伝えるだけで、自分の口からは決して謝罪文言を言わないという方もいらっしゃいます。それはそれで自然ですし、そのような考えの先生がいらっしゃっても当然だと思います。

 

でも、私は、被告人の親のような立場で謝るようにしています

 

私は、謝ること自体に、あまり抵抗がありませんし、それほどはストレスも感じません。

 

弁護士自身が、真摯に謝ることで、被害者の態度が軟化することが結構あります。一般的には、弁護士は立派な職業という印象があるようで、その弁護士が、丁寧に謝ることで、「弁護士がそこまで言うなら・・・」ということで示談に応じてくれる場合は結構あります。やはり、日本人は「謝罪」の文化でしょうか。

 

また、真摯に謝られた結果、すっきりして、示談に応じてくれる被害者も多いです。(厳密には、被害者は、怒っているうちに、自分自身でどんどん盛り上がってしまい、さらにどんどんエスカレートして怒り続けることも多いのですが、時間が経つと落ち着てきます。その場合、私は相槌を打つだけで、あまり具体的な応答をせず、聞き役に徹します。)

 

電話ではうまくいかない場合

 

電話で埒が明かない場合には、直接お会いできないか提案します

 

もし、お会いできないと言われた場合には、おそらく示談の余地がないので諦めます。もっとも、「ご検討ください。」と一旦電話を切り、(拒否されていない限りは、)後日、再び、電話をすることはあります。

 

会えることになれば、示談の可能性が一定程度あることを意味します。わざわざ時間をとって会ってくれるわけですから。実際、被害者としても会った上で示談を断るのは申し訳ないという気持ちもあるようです。

直接お会いした場合には、上述したように、直接真摯に謝罪し、あるときは聞き役に徹し、何とか示談ができるよう努力します。

 

それでも、なかなかうまく行かない場合には、特に国選事件の場合ですが、一つだけよく言うセリフがあります。

 

「私は、刑事事件が係属している場合は、被疑者・被告人の弁護人として、示談金のお受け取りをお願いできるのですが、不起訴等により、被疑者・被告人が釈放された場合には、任務終了してしまいますので、示談交渉の権限がなくなってしまいます。その場合は、後で、ご自身で、あるいは、弁護士を雇って頂いて、被疑者・被告人と交渉して頂くことになります。それだと大変ですので、私がご協力できる今の段階で、何とか示談ができないでしょうか。」

 

金額はともかく、いずれは示談で解決しようと思っている被害者にとっては、(私のような弁護人が事件から外れ、)後で自分が被疑者・被告人と直接交渉することは非常に嫌なことでしょうし、自分で弁護士を雇うのもお金がかかります。そうであれば、今の時点で、示談をしておこうというモチベーションにつながります。

 

どうしても示談できない場合

 

残念ながら、一律に示談ができない場合です。大手スーパーやチェーン店などでの万引きの場合は、「当社は、一貫して万引きを許さないスタンスですので、一律に示談には応じません。」と言われることがあります。これは、会社(店)としての方針なので、どうしようもありません。

 

もっとも、フランチャイズのコンビニやレストランの中には、店長の判断で、示談をして頂ける場合もあります。

 

 示談できない場合に、贖罪寄付という制度もあります。これは、被疑者・被告人が反省と贖罪の気持ちを表明するために公益団体(弁護士会)とかに寄付するものです。

被害者には示談金を受け取ってもらえないので、第三者にその額を寄付するというイメージです。

 

私は、被疑者・被告人に積極的に勧めたしたことはありませんが、判決文の中には贖罪寄付をしたことを有利な情状として明示的に考慮しているものもありますので、一定の効果はあるのかもしれません。

 

まとめ

 

示談は、当たり前はありますが、①被疑者・被告人の反省・謝罪を伝え(私の場合は親のように謝り)、②被害者の言うことに耳を傾け、落ち着いたところで、③示談をお願いし、金額を決定します。

 

私自身は、幸いにも、「外見的には」まじめで真摯に見られるようですので、ちょっと得しているところがあるかもしれません。示談の成立率も結構高いです。

 

確かに、示談の際、特に、直接面会して交渉する場合は、嫌な思いをすることもありますので、当然ストレスに感じることもなくはないですが、成立したときには被疑者・被告人にとって非常な成果になりますし、弁護士として交渉力を鍛えるという側面もありますので、示談交渉を含む刑事事件を辞めたいとは思いません。

特許実務(ウェットティッシュ事件3 + Cu-Ni-Si系合金事件)

 

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被告製品

 

はじめに

 

前々回から、「特許実務」のタイトルで、私が興味を持った裁判例(平成29年(ワ)第28189号 令和2年1月17日 東京地裁40部判決[佐藤裁判長])を紹介しています(https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/418/089418_hanrei.pdf)。

 

これまでの記事は以下のとおりです。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

取り上げた論点は、

 

(1) 「略」(ほぼ)の意義

(2) なぜ、「1/2」と規定したか。

    「1/2」に、どの程度まで近いと侵害と評価すべき? 

               ※判決は1割まで(つまり、1/2の90%~100%)

(3) 実は、たとえば被告製品②の場合、78枚のウェットティッシュのうち、3枚は「1割」に収まっていた点

 

で、今回は、最後に(3)について検討したいと思います。

 

1つの被告製品の中に、特許請求の範囲を充足するものと充足しないものが混在している場合

 

本件で問題となっている構成要件は、以下の構成要件Cです。

 

構成要件C

「上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第1の中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と,」

 

冒頭の図を見て頂いて、(折り返された部分である)「第2の中間片」が、ウェットティッシュ全体の幅にあたる)「第1の中間片」の「略1/2」であるかどうかです。

 

判決文を見ると、

 

ウェットティッシュ1袋の80枚中のうち、裁判所が定立した充足の基準である「1/2」の90%以内(つまり、1/2の90~100%)にあるウェットティッシュは、

 

被告製品②につき、3枚(原告測定)、30枚(被告測定)

被告製品③につき、6枚(原告測定)、1枚(被告測定)

被告製品①につき、2枚

 

ということでした。

 

いずれの被告製品も、(異常値を示すことが多い最初と最後のウェットテイッシュ2枚を除く)78枚の平均は80%~84%くらいでしたので、裁判所の充足の基準である90%~100%を満たさず、非充足(非侵害)と評価されています。

 

今回の発明は「積層体」(一袋単位のウェットティッシュが積層された束)が対象製品ですので、(裁判所の充足の基準が妥当かどうかはともかく、)平均値との関係で、非充足という判断は、一応合理的だと思います

 

しかし、たとえば、本件とは異なり、ウェットティッシュ1袋の平均値が(たとえば88%で)充足していないとしても、1枚1枚のウェットティッシュについて、半数以上が(90%以上で)充足していたとしたら、それでもなお非充足というのかは、ちょっと問題になりそうですね。

 

事例によっては、「平均値」ではなく、(充足するウェットテイッシュの枚数の)「割合」という基準も考えられるかもしれません。

結論ありきのケースバイケースでしょうか。

 

被告製品ごとに、特許請求の範囲を充足するものと充足しないものが混在している場合

 

本件では、1つの被告製品の中で、数値にばらつきのある場合でしたが、本件を離れて、複数の被告製品の中で、数値にばらつきがある場合はどうなるでしょうか。

 

これに関する裁判例が、タイトルにもあるCu-Ni-Si系合金事件(平成24年(ワ)第15621号・平成27年1月22日東京地裁47部判決[高野裁判長])です

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/805/084805_hanrei.pdf)。

 

この事件は、私がミュンヘンへの留学中に興味を持ち、内々の判例研究会で発表した裁判例で、私の修士論文の内容(差止請求権の制限)にも影響を与えました。

 

改めてネットで検索してみたところ、以下の論文が一番詳しそうでした。

 

新藤圭介, 「複数の被告製品の一部が数値限定発明の技術的範囲に属する場合に差止めの必要性を否定した事例」

http://ksilawpat.jp/wp-content/uploads/2019/03/d49c2c9efabe1c0e92c79d47155227a2.pdf

 

この裁判の詳細な説明は省略しますが、要するに、(測定する所にもよるようなのですが)ある被告製品は充足していたり、別の被告製品は充足していなかったりする場合の差止め請求権の(制限の)可否です。

 

実は、私も、同じような事案で、一度相談を受けたことがあります。

 

対象特許発明は数値限定発明でしたが、中国から輸入された製品が、結構適当に作られているようで、製品の寸法にかなりばらつきがあり、数値限定を充足するものや充足しないものが混在していました。そのような場合に、「権利行使できるのでしょうか?」と聞かれました。

 

この裁判例のずっと前のことでしたので、個人的な見解として、

 

① パンプレット等で、被疑侵害者の仕様書での数値(ターゲット値)がわかる場合には、その仕様書の値が、数値限定の範囲にあるのであれば、それを狙って製造しているはずだから、実際の製品が多少充足していないくても、おそらく侵害は認められるだろう、

 

② パンフレット等がなく、仕様書の数値がわからない場合、(裁判になれば、文書提出命令等で入手できる可能性もなくはないが、)現段階においては、実際の製品における充足する被告製品の「割合」によるのではないか、

 

と回答した記憶があります。

 

しかし、②の「割合」が5割(半分半分)とかだと、どうなるのでしょう。

 

差止請求と損害賠償請求では考え方も違ってくるかもしれません。

 

差止請求に関するを上記のCu-Ni-Si系合金事件は、

 

「被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。
さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが,これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。
これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。」

 

と判示し、差止めを制限していますね。

 

判例では、割合によるとは判示していませんが、過剰の差止、衡平の原理で、本件については差止めを認めていますね。

 

日本では、(米国と異なり)「充足すれば自動的に差止め」が通常なのですが、差止めの制限について、過剰性や衡平の観点から、「差止めの必要性」を検討しているところが面白いですね。

 

差止めは、〇か✖かの問題?

 

差止請求権の場合、差し止めるか、差し止めないか、二者択一ですね。

理論的には可能かもしれませんが、一部の差止めというのは実務的には難しいと思われます。

 

上記裁判例では、充足するものとしないものが混在し得る場合に、原告による被告製品の特定に起因するにも関わらず、被告がいちいち測定して、非充足を確認してからでないと出荷できないというのは、衡平を欠くという判断でした。

逆に、簡単に判別できるのであれば、差止めを認めてることも可能なかもしれません。

 

また、充足している被告製品が大半(90%以上とか)であれば、過剰な差止めには当たらず、差止めが認められるかもしれません。

 

損害賠償請求はどうか?割合的?

 

一方で、このCu-Ni-Si系合金事件では、損害賠償請求がされていないため問題となっていませんが、同様の事例で、損害賠償請求はどうでしょうか。

 

損害賠償請求は金銭なので、差止めとは違い、割合的に認めることが可能です。

 

ですので、たとば、被告製品のうち、5割が充足、5割が非充足であった場合には、1/2の額の損害賠償請求を認めてもよいようにも思われますが、どうでしょうか。

 

最後に

 

3回にわたって、ウェットティッシュ事件を取り上げました。

 

「1/2」という明示の数値限定や、「半分」、「直角」といった見えない数値限定についても、権利範囲を狭めないよう(特に機械・電気系分野の方は)気を付けましょうというお話でした。

 

また、①ウェットティッシュ事件のように、被告製品内で一部が充足、一部が非充足な場合や、②今回紹介したCu-Ni-Si系合金事件のように、複数の被告製品のうち、一部が充足、一部が非充足の場合、差止請求が認められるか、更に、損害賠償請求が割合的に認められるかについて、検討してみました。

 

損害賠償請求の点については、このような裁判例があるかどうか確認できていませんもしかしたら、既にそのような点について判断した裁判例があるかもしれませんし、まだ無いかもしれません。

 

しかし、ウェットティッシュ事件にしても、Cu-Ni-Si系合金事件にしても、地裁での判断ですから、今後の知財高裁での同様の事例を楽しみに待ちたいと思います。

仮想刑事事件(不倫罪)第5回-検察官との交渉

 

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Dancing Couple In The Snow (Reverse)(1928-1929)

Ernst Ludwig Kirchner (German, 1880-1938)

 

はじめに

 

仮想の不倫罪で逮捕された芸人 ワタナベ・カンの弁護人の物語の続き(第4回)です。

前回までの内容は、下の記事のとおりです。

 

令和3年1月1日に施行された仮想の不倫罪によって逮捕・勾留された芸人のワタナベ・カン。その弁護人となった私は、早期釈放をめざして弁護活動を進める。

ワタナベ・カンは不倫(不貞行為)の事実を概ね認めているため、情状活動により不起訴獲得をめざす。

 

今回は、担当検事との交渉である。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

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事前に担当検事に電話して予約をし、面接を申込み、検察庁にやってきた。

 

「本日は、お時間を頂きましてありがとうございます。ワタナベ・カンの弁護士の小林と申します。」

 

担当検事S

「どうも。検事の白川です。」

 

私(独り言)

【黒川ではなくて、白川か。期待できるかな。】 

 

「事前に、FAXでもお送りさせて頂いたのですが、①被告人の反省文、②被告人の妻であるササザキさんへの謝罪文(写し)、③ササザキさんの身元引受書、④事務所社長の嘆願書、⑤仕事仲間(相方)であるオオシマさんの嘆願書、⑥依存症である旨の医師の診断書を持参しました。これらを踏まえた弁護人からの意見書も、事前にFAXでもお送りしています。」

 

担当検事S

「ご苦労様です。拝見しました。」

 

「できれば、明後日の終局処分においては、起訴猶予でお願いできればと思っています。不貞罪の法定刑は、住居侵入罪と同様、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金ですから、それほど重い類型の罪ではありませんし。」

※終局処分=検察官が起訴・不起訴を決める処分

起訴猶予=犯罪の嫌疑があるとしても、裁判にせずに事件を処理すること

 

担当検事S

「んーそうですね。しかし、本件は5件の被疑事実(※不貞行為)ということですので、なかなかちょっと・・・。」

 

「確かに、5件というのは確かにあれですけども、その点については、医師との面会でも、いわゆる依存症の可能性が高く、彼の生活環境を整えつつ、長期の治療が必要ではないかということです。一刻も早く治療により、社会内で更生するのがワタナベさんにとって良いのではないかと考えます。」

 

担当検事S

「依存症ですか。まぁ。本件は、ワタナベさんが芸能人である点は措くとしても、いわゆる不倫罪の初適用ということで、世間でも結構注目されてますしね。」

 

「そうですね。さぞかし検事にとってもプレッシャーでしょうね。世の中で広く行われているであろう不倫罪に、警察・検察が介入することになりましたからね。」

 

担当検事S

「時代の流れなんでしょうか。我々は、法を適切に執行するだけですから。」

 

「今まで犯罪ではなかったことでが、急に犯罪になる。あまり例がありませんね。しかも、不貞行為というのは、世の中で結構行われてしましたしね。」

 

「ところで、本件についての検事のお考えは如何ですか? 公判請求もあり得るということでしょうか。」

※公判請求=起訴(裁判)

 

担当検事S

「正直なところ、迷っています。前例もありませんしね。」

 

「3年以下の懲役・罰金刑という法定刑からしても、裁判にするほどの事件ではないように思いますが。」

 

担当検事S

「でも、不貞行為の被疑事実は5件ですしね。万引きや住居侵入も5件となると、常習ですしね。」

 

「弁護人としては、できる限りの情状活動はさせて頂き、資料も揃えました。ワタナベ本人は、だいぶ反省していますし、一方で相当滅入っているようです。医師の診断にあるように依存症ということもありますし、精神的に早く回復しないと取り返しがつかないことになってしまいます。もっとも、今後もマスコミも放っておかなでしょうし。これからも、大変です。」

 

担当検事S

「そうですね。」

 

「彼には、前科・前歴もありません。このようなことがあっても、奥さんであるササザキさんからもお許しを得ていますし。彼女も女優ですが、一緒に芸能界でもう一度やり直したいそうです。できる限り早い社会復帰が必要かと思います。彼も、芸能人ということで今後もマスコミなどから注目されますし、奥さんと医師の監督の下、もはや再犯ということもあり得ないのではないでしょうか。ワタナベは、5人との関係は完全に絶つこと、スマホの連絡先も消去することを誓約していますし。」

※再犯=再び罪を犯すこと 

 

担当検事S

「そうかもしれません。私も、副部長の決裁が必要となりますので、先生から頂きましたご意見も十分に検討して、終局処分にしたいと思います。ちなみにですが、略式というのはお考えとして如何ですか?」

※略式=裁判にせずに、罰金で事件を終了すること。

 

私(心の声)

【おっ!きたー!】

 

「被疑事実の点については、依存症による衝動的な行動が多かったため、本人が明確に覚えていないこともありますが、概ね認めております。起訴猶予が相当ではないかとは思いますが、略式罰金の可能性については、本人にも事前に話をし、了解を得ております。検事が略式罰金をお考えでということであれば、本人には異議はないと思います。」

 

担当検事

「分かりました。今回は、先生にも大変ご努力頂いたこともありますしね。その方向で検討してみます。」

 

起訴猶予が難しいということでも、略式罰金でお願いできればと思います。私も、正式裁判で、不倫罪の憲法違反を主張するのには躊躇していましたし。世間で、『不倫弁護士』とか言われたら、大変ですしね。」

 

担当検事

憲法違反ですか。ははは。」

 

「平等権と幸福追求権でしょうか。皮肉にも不幸を追求する結果になっていますね。憲法違反はさて措くとしても、この不倫罪は、有名人の不倫をマスコミが見つけ出したり、あるいは、言い方悪いですけど、特に我々のような中高年がハメられるような罪のような気がします。」

 

担当検事

「んー、そうでしょうか。でも罪は罪ですからね。」

 

「私は、もちろん不倫はしませんが、不倫って、やる人はやってしまいますからね。一度逮捕されれば、もう懲りるでしょうが、逮捕されるまではバレないだろうというか、まさか逮捕されるとは思わずに不倫をしてしまう人は大勢いるような気がします。刑法犯となっても、人間の本質は変わりませんからね。」

 

担当検事

「抑止力にはなりませんかね。」

 

「多分、そのうち、警察官や検察官でも不倫で逮捕される人も出て来るかもしれませんね。」

 

担当検事

「ありえないとはいいませんけどね。」

 

「もっと言うと、特定の人物を狙って、クラウド・ファンディングでお金を集めて、探偵を雇って不倫調査をし、マスコミに垂れ込んで、捜査機関が動くなんてこともありそうですね。一度狙われたら、終わりですね。」

 

担当検事

「くっ、クラウド・ファンディングですか。」

 

「検察官や裁判官も名前が売れれば、ターゲットになりそうですね。検事も、東京高検の検事長くらい出世されれば、狙われるかもしれませんね。ははは。」

※東京高検=東京高等検察庁

検事長高等検察庁のトップ

 

担当検事

「・・・」

 

「ちなみに、検事は結婚されているんですか。」

 

 

担当検事

「・・・。まぁ。」

 

「それでは、本日はどうもありがとうございました。起訴猶予ないし略式罰金で宜しく願い致します。」

 

結局、本件は、略式罰金により、ワタナベ・カンは10日の満期で釈放された

 

終わりに

 

不倫罪という仮想の罪を犯した芸人ワタナベ・カンのお話でした。

 

現実には、不倫罪はありません。おそらく、憲法違反でしょうから、今後、このような罪が成立することはないと信じます。

 

しかし、監視社会・管理社会が一層進んだ将来、もしかしたら、不倫罪が成立するかもしれませんね。

世論の流れで、刑罰が重罰化したり、新設することはよくあることですから。

 

 

ビール紀行(韓国、ソウル2/2)

はじめに

 

前回は、韓国・ソウルのビール紀行をご紹介しました。韓国で昨年新しく販売されたTERRAテラ)ビールや、サムゲタンを紹介しました。

 

今回は、その続きです。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

仁川空港のラウンジ(Lounge. L)

 

本当は、ソウル観光について記事にしたいところですが、残念ながら今回は観光する時間はなく、早くも帰国です。

 

仁川空港のラウンジにやって来ました。

第2ターミナルのLoung. Lです。

いつものように、プライオリティパスで無料で入ることができます。

仁川空港には、他にもたくさんラウンジあるようですが、このLounge. Lが搭乗口に一番近いラウンジでしたので、利用しました。

 

さすがに、韓国ですね。ラウンジも、様々な料理があります。ラウンジの料理の充実度は、おそらく世界一ではないでしょうか。

 

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ラウンジの料理(唐揚げなど)

 

この唐揚げだけでも、いったいビールが何杯飲めるの?というくらいボリュームのある料理が多いです。

 

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Kloudビールとトッポギなど

 

ビールは、Kloudクラウド)タップが置いてありました。自分で自由に注ぐことができます。これは、ロッテのビールなのですね。

 

company.lottechilsung.co.kr

 

(今回の旅行では飲みませんでしたが、)CassHiteは薄くて泡立ちも悪い印象ですが、このKloudは、これらよりは美味しかったように思います。

 

しかし、前回飲んだ新発売のTERRAテラ)と比べると、やっぱりTERRAでしょうか。

 

でも、アサヒスーパードライと比べると、やはり、韓国料理には、キリっとしたアサヒスーパードライではないでしょうか。

 

前回の記事でも書きましたが、韓国ではアサヒの売り上げが95%減ですからね。んー。

 

いずれも同じ一般的なラガー・ビールですので、皆様も韓国に行かれた際には、是非比べてみてください。

 

あと、写真にあるトッポギでしょうか、ぷよぷした餅のような感覚、大好きです。

 

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ラウンジのおつまみ(ビビンバの材料?)

 

味の濃い脂っこい料理が多い中で、上の料理は、比較的さっぱりしたおつまみ系かなぁと思います。でも、自分でビビンバが作れるようになっていましたので、これって、ビビンバを作るための素材かもしれません。

 

ビールを飲むのがメインですので、ご飯はちょっと遠慮しておきました。

 

 

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ラウンジの料理(プルコギなど)

 

上の写真のプルコギも美味しかったです。

結局、何杯のビールを飲めばよいことやら。お腹のふくらみにも限界がありますよね。

 

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ポテト

 このポテトも、美味しそうでしたが、さすがにお腹が無理でした。

 

最後に

 

この後、大韓航空で帰国しましたが、ここまでラウンジでビール飲んでしまいましたので、フライト中は、もはや何も食べることも飲むことも一切できませんでした。

 

やっぱり、韓国は料理が最高ですね。あと、今回は、TERRAという新発売の美味しいビールも飲みましたので、満足です。

 

コロナもそうですが、日韓関係もはやく改善してもらいたいところですね。

 

スポーツもそうでしょうか、ビールの美味しさには、国境や紛争は関係ありませんから。

特許実務(ウェットティッシュ事件2-「略1/2の幅」について)

 

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被告製品の構成

 

はじめに

 

前回から、「特許実務」のタイトルで、私が勝手に興味を持った裁判例平成29年(ワ)第28189号 令和2年1月17日 東京地裁40部判決[佐藤裁判長])を紹介しています(https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/418/089418_hanrei.pdf)。

 

 

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今回はその2回目です。

 

本件の論点としては、

 

(1) 「略」(ほぼ)の意義

(2) なぜ、「1/2」と規定したか。

    「1/2」に、どの程度まで近いと侵害と評価すべき? ※判決は1割まで

(3) 実は、たとえば被告製品②の場合、78枚のウェットティッシュ のうち、3枚は「1割」に収まっていた点

 

前回の記事では(1)を取り上げました。

今日は(2)についてです。

 

なぜ、特許権者は「1/2」と規定したか?

 

以下の構成要件Cの充足性(下線部分)が問題となりました。

 

構成要件C

「上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ,上記第1の中間片の略1/2の幅に,上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と,」

 

(被告製品ですが)冒頭の図を参照して頂いて、本件特許発明は、なるべく大きなウェットティッシュ所定の大きさの袋に入れることを可能にするという効果を奏するため、(折り畳まれる)「第2の中間片」(と「第1の折片」も)の長さをなるべく大きくしたい、という課題がありました。

 

もっとも、「第2の中間片」は左右交互に積層されるので、1/2以上にする(=中心部分を超えてしまう)と、各中間片の真ん中部分が重なり、真ん中部分だけが高く膨らんでしまい、ウェットティッシュの積層がうまく安定しません。

 

つまり、なるべく大きなウェットテッシュを収納したい(大きく)、でも、積層が安定した状態は保ちたい(1/2以下)、ということで、1/2がベストモードだったのでしょう

 

そこで、クレームの規定上、「第2の中間片」が「第1の中間片」の「1/2」となったと思われます。

 

もっとも、「1/2」と規定してしまうと、これは数値限定ですから、「点」の権利(つまり、「1/2」よりも少しでも大きくても、少しでも小さくても、権利範囲外になってしまう狭い権利)になってしまうので、「略」という文言を付けたのだと思われます。

 

前回もご説明しましたが、審査官によっては、個別具体的に判断すべき「略」の文言による不明確性については、厳しく見る(全件について、特許法36条6項2号の拒絶理由を通知する)人もいますが、製造誤差の範囲を含むという趣旨でしょう、ということで特許されることもあります。本件では、「略」が残ったまま特許されています。

 

なぜ、裁判所は、「1/2」の1割減(90%)までを充足と評価したか?

 

判決では、

 

「『略』という語の通常の意義及び構成要件Cにおいて第2の中間片の幅寸法が規定されている技術的意義に照らすと,同構成要件にいう「略1/2」とは,正確に2分の1であることは要しないとしても,可能な限りこれに近似する数値とすることが想定されているものというべきで10 あり,各種誤差,シート状物の伸縮性等を考慮しても,第1の中間片の2分の1との乖離の幅が1割程度の範囲内にない場合は「略1/2」に該当しないと解するのが相当である。」(下線、赤色は私が付しました。)

 

と述べて、「1/2」の1割(90%より)短くなると、充足しないという基準が定立されました。

 

「1/2」以下を広く含むべきである原告の主張に対しては、

 

「しかし,本件明細書等には,第2の中間片が第1の中間片の幅の1/2より小さい幅となったときに第2の折片がその誤差を吸収することにより積層体の幅寸法を維持することが本件発明等の課題である旨の記載は存在しない。むしろ,前記判示のとおり,本件明細書等には,積層体の幅を従来と同様とした上で,第2の折片を設けることにより「第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物」(段落【0011】)を形成することが本件発明等の課題である旨が記載されているのであって,その課題解決のためには,前記のとおり,第2の中間片の幅を,可能な限り第1の中間片の1/2を超えない範囲でこれに近づけることが望ましいものというべきである。」

 

として、原告の主張を排斥しています。

 

もっとも、判決文を読む限り、なぜ、「1割」以内でなければならないのかについては明確には述べられていません。

なぜ「15%」ではダメなのか?「可能な限り・・・近づけることが望ましい」というのであれば、「5%」以内でもよいのでは?という疑問が生じます。

 

「1割」というのは、被告製品を見た上での基準定立であるのように思えてきます。

 

被告製品の一つ(被告製品②)を見ると、1つの袋に入る78枚のウェットティッシュ(ほんとは80枚入るが、両端はイレギュラーなので外したようです。)平均が83%で、充足といえる90~100%のものはわずか3枚だけだったようです(なお、他の被告製品は充足する枚数がもっと多いものもありました。)。

 

もし、裁判所が「2割」以内とすれば、被告製品は本件特許発明の構成要件Cを充足していました。

 

結論として、非充足と判断すべきとしたのでしょう。

 

この結論は、私にはそれほど違和感がありません。

なぜなら、「1/2」という規定は、数値限定発明ですので、成分を規定した薬剤のように、数値の範囲の上限下限(権利範囲の境界)は、ある意味非常にシャープでなければならないからです(本来、数値限定に曖昧さはないはずです。)。

 

ですから、「1/2」は、数値限定として、その権利範囲を厳格に判断すべきとしたのではないでしょうか。

 

そして、被告製品が8割程度なので、これは含められないが、基準としては、「略」という用語も一応ついているので、厳密に「1/2」の100%(10割)とは言わないまでも、切りの良い1割(90%)以内にしておこうか、という感じだったのではないでしょうか。

 

不用意な数値限定の怖さ 

 

化学や薬の部門では、数値範囲について、明細書に段階的に記述し、クレームでも、段階的に従属項に書くなどして、シビアに規定します。

 

しかし、物の構造等(機械、電気部門)においては、数値限定という感覚があまりなく、あまり厳格には捉えず、疎かにしがちないように思われます。

 

たとえば、半分」というのは、「50%」で、数値限定です

直角」というのも、「90°」 ですから、数値限定です

 

これらをクレームで規定すると、「点」の権利になってしまいます

 

「略」を付けて幅を持たせるようとしても、(そもそも審査官に不明確の拒絶理由を通知されたり、)今回のように、せいぜい90%の範囲内ということになってしまいます。「略」が付いてなかったら、もっと狭く解釈されてしまったかもしれませんね。

 

前回の記事では、「略」を付けても、付けなくても、(製造誤差を含む程度の意味で)結論にあまり影響はないのではないかと申し上げましたが、このような事件で、「略」をきっかけとして、原告側の主張をある程度は膨らませることができるかもしれないので、権利者としては「略」が無いよりは、あった方がよいのかもしれませんね。でも、「略」につき、審査段階で審査官に拒絶理由を打たれてしまってはどうしようもありませんが・・・。

 

では、特許権者はどう規定すればよかったか?

 

そもそも、物の構造等においても、数値限定であることを明確に認識していれば、「1/2」という規定ではなく、たとえば、「1/2~1/4」あるいは「25~50%」というように幅を持たせて規定することも、可能だったのではないでしょうか。

後からはいくらでも言えますよね、すいません。

 

「1/2」がベストモードであったとしても、それ以下、たとえば「1/4」や「25%」であっても、従来と比べ大きなウェットティッシュを収納できるという効果を、ある程度は奏することができると思われます。

 

本件も、化学や薬学の分野における数値範囲の段階的規定と同じように、範囲で規定できたかもしれません。

 

化学や薬学の分野のみならず、機械(物の構造)の分野でも、(均等論も含めて)数値限定が非常に厳格に判断されることを認識した上で、知らず知らずのうちに不要な数値限定をして、権利が「点」になってしまうのを予め防止しましょう

 

本件は「1/2」の規定で、これは数値限定ですが、半分」とか「直角」といった用語を使う際も、本当に厳密に、半分や直角でなくてもよいのであれば、「略」を付けるだけでは、権利範囲にそれほど幅を持たせることはできないので、数値限定発明であると明確に認識した上で、(1/4以上1/2以下、あるいは、25~50%といった)幅のある規定をする方が、より権利範囲としては広く、強い特許になったかもしれませんね

 

最後に

 

「(略)1/2」はクレームの文言としては、非常に狭い数値限定です。

物の形状や構造の分野では、(化学や薬学の分野とは違い、) 安易に使いがちかもしれませんので、是非気を付けましょう。

 

次回は、

 

(3) 実は、たとえば被告製品②の場合、78枚のウェットティッシュのうち、3枚は「1割」に収まっていた点

 

について、本件を少し離れて、一般論として検討してみたいと思います。

日本スペースロー研究会(JSLA)のホームページ完成!


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日本スペースロー研究会のホームページ完成!

 

久しぶりの宇宙の話題です。

この度、日本スペースロー研究会JSLA)のウェブサイトが遂に完成しました。

 

japan-space-law-association.org

 

なかなかカッコ良い感じですね。カッコ良いことは何より大事なことです。

 

日本スペースロー研究会は、弁護士の立場から、宇宙ビジネスを支援すべく誕生しました

私は、実は初期のメンバーではなかったのですが、ご縁があってメンバーに加入させて頂きました。今回、一般社団法人になった際に、理事に就任しました。

 

下記のメンバー紹介を見て頂くと、私も名前を連ねております。

 

japan-space-law-association.org

 

メンバーは皆さん、比較的若手から中堅の弁護士で、宇宙法だけでなく、様々な専門分野(私の場合は知的財産分野、特に、特許分野)を持っています。

実際に、宇宙ベンチャーの仕事をしたり、宇宙法関係の論文や記事を書いたりしているメンバーも多いです。

 

私は、航空宇宙工学科を卒業している点と、事務所でJAXAのお仕事をさせて頂いている点と、エルトン・ジョンRocket Manという曲が好きという点と、スタートレックが好きな点などで、宇宙との繋がりがあります。

ちなみに、冒頭の写真は、私の机の上。スタートレックに登場する宇宙船(エンタープライズ号など)やスペース・ステーションの模型です。

 

私も、知財法(特に、特許法)の観点からも貢献できればと思っています。

 

日本スペースロー研究会としては、昨年2月に、初のセミナーも開催しました。が、その直後にコロナ渦で世の中が大変なことになってしまいました。しかし、コロナに負けずに、日本スペースロー研究会として、様々な活動をしていきたいと思っています。

 

現在、色々企画中です!

 

フェイスブックツイッター

 

実は、結構前から、日本スペースロー研究会のフェイスブックツイッターもありました。

 

www.facebook.com

 

ツイッター

https://twitter.com/japanspacelawa1

 

フェイスブックでは、持ち回りで、宇宙関係の話題を紹介しています。

このブログでも紹介した、スペースXのドッキング・シミュレーターフェイスブックで私から紹介しています。

 

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最後に

 

宇宙ベンチャーや(私の専門の知財分野で今話題の)ベンチャー×知財は、これからどれだけ伸びていくのか全く分かりませんが、私が特許や刑事を扱っているように、弁護士は何でも屋のようなところがありますので、自分の興味のある分野でどんどん仕事をしてきたいなぁと思っています。

 

あとは、現物(ビール)報酬での醸造顧問弁護士といったところでしょうか。