理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

仮想刑事事件(マスク不着用罪)第2話

 

f:id:masakazu_kobayashi:20210127185440j:plain

Lady with a Mask (1911)

Thomas Wilmer Dewing (American, 1851-1938)

 

はじめに

 

 前回、仮想刑事事件(マスク不着用罪)のお話を始めました。 

 その第2話です。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

法律事務所での会話

 

事務員: 「先生、今日、国選の待機日だったんですね。

      事件配点のFAXが来てたので、先生にメールで転送しておきました。」

 

弁護士: 「あっ、ありがとうございます。さっき、電話で配点受けたんです。

      日本人男性で、赤坂署でした。事務所から近くて良かったです。」

 

事務員: 「先生、他に言うことないんですかっ。」

 

弁護士: 「はぁ。そうですよ。ついにマスク不着用罪の事件がついに来ましたよ。

      今日、勾留決定です。マスク着けなかっただけで、身柄拘束ですよ。

      全くコロナってのは。」

 

事務員: 「まだ、ニュースでも、それほど聞かないので、見せしめですかね。

      きっと、マスクをしないという強い信念の人ですよ。いわゆる

      確信犯ってやつですよ。マスク不着用罪が憲法違ってことで、

      全面的に争いましょう。」

 

弁護士: 「はぁ~。全く。」

 

警察署にて初回の接見

 

弁護士: 「はじめまして、弁護士の小林です。国選をご自身で頼まれましたよね。

      私が、国選弁護人に選任されました。宜しくお願い致します。」

 

被疑者: 「はい。」

 

弁護士: 「あなたは、令和1○年○月○日、つまり、3日前ですが、

      正当な理由なく、港区○-○-○の○○ビル前の路上において、

      マスクを着用しなかったものである、というマスク不着用罪で

      逮捕され、本日勾留決定がされました。

      この事実は、間違いないんですか?」

 

被疑者: 「マスクしてましたけど、おっさんにマスクを取られたんですよ。」

 

弁護士: 「取られた? 突然マスクを取られたんですか?」

 

被疑者: 「いや、知らないおっさんが、突然近づいてきて、

      『おまえ、鼻までマスクしてないじゃないか』って言われて・・・。

      近くに来て、『おまえ、そのマスク、何とか製じゃないか。

      そんなのマスクしているうちに入らないんだよ。』とか言われて。

      それで、マスクを外されて、道に投げつけられたんですよ。」

 

弁護士: 「それで、どうしたんですか?」

 

被疑者: 「私、『ふざけんな。』って言いましたよ。男はすぐに立ち去ったん

      ですが、あまりに腹が立って、すこし男を追いかけて歩いて、

      男がいなくなっても、イライラしてたんで、一人で『ふざけんな。」って

      叫んでいたら、突然警察が来て・・・。それで、捕まったんです。」

 

弁護士: 「その男に手を出したりしたんですか?」

 

被疑者: 「してませんよ。『ふざけんな。』とは大声でどなりましたけど。」

 

弁護士: 「なるほど。それで、警察に捕まったのは、今回が初めてですか?」

 

被疑者: 「いや、覚醒剤で何度も捕まってます。実は、先月出所したばっかりなん

      ですよ。」

 

弁護士: 「そうですか。職質で疑われたんですね。尿検査もしたでしょ。」

 

被疑者: 「はい。でも陰性でした。クスリはもうやってません。

      でも、マスクをしてないってことで。」

 

弁護士: 「警察官には、マスクを男に取られたってことは説明したんですよね。」

 

被疑者: 「しましたよ。でも、信じてもらえなくて。」

 

弁護士: 「マスクを投げつけられた場所とかも言いましたか。

      警察はマスクを確認したんですか。」

 

被疑者: 「言いましたけど、マスク無かったって。」

 

弁護士: 「いずれにしても、マスクを取られて、マスクを着用していなかった

      という事実はありますが、故意にマスクを着けていなかったわけでは

      ないですからね。」

 

被疑者: 「マスク不着用罪ができたの知ってましたけど、

      こんな厳しいとか思いませんでした。」

 

弁護士: 「実際、柔軟に運用されているはずですが、運が悪かったんだと思います。

      前科とかの関係もあって・・・。

      ところで、同居されているご家族はいらっしゃるんですか?」

 

被疑者: 「妻がいます。しかも、出所したばかりなのに、知り合いのリフォームの

      会社で働かせてもらうことになったのに。」

 

弁護士: 「そうですか。

      ご存じかもしれませんが、(黙秘権、調書への指印等、

      基本的なことをお話して)これからの弁護方針を説明しますね。」

 

(つづく)

  

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

 


弁護士ランキング