理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件-児童ポルノ関係(3)製造(つづき)

はじめに

 

 児童ポルノ関係の刑事事件について、下記2記事を書きました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 また、かなり以前ですが、児童ポルノ所持罪についての自首の問題も

下記のとおり記事にしました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 今回は、児童ポルノ製造罪の続きで、具体的には、児童による自撮りの場合です。

 

 典型的な製造罪は、児童とホテルなどで実際に会い、児童にポーズをとらせ、行為者自らがスマホなどで撮影して、それが保存されることにより、成立するというものです。

 しかし、SNSなどでのやりとりを通じて、遠隔で、児童に指示を与え、児童に自撮りさせ、送信させて、自らのスマホに保存しても、製造罪には該当し得ます。

 

児童による自撮り写真が、行為者に送信された場合

 

 行為者が、SNSなどを通じて児童と知り合い、児童に働きかけ、児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項各号のポーズをとるように指示し、これを自分のスマホなどに送信させた場合、児童ポルノ製造罪に該当する場合があります。

 

 前回の記事でご紹介したように、刑罰は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金

でした。

 

-------------------------------------------------------------------------------------------------

【児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項】

 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 

【児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項】

  この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

-------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 社会的な背景として、コロナの影響で、児童が家に居る時間が多くなり、また、直接会うわけではないので、児童の気が緩んでしまい、SNSを通じて、この手のやりとりがなされ、行為者(大人)が児童ポルノ製造罪となってしまうようです。

 

 行為者も、児童(被害者)も、自宅に居ながら、気軽にできてしまうことが、このような犯罪を増加させています。

 

 その手口ですが、

 

 ① 「モデルの仕事が紹介できるから、画像送って。」などという場合、

 ② 行為者自身が(ほんとは大人なのに)児童であるかのように装う場合、

 ③ 先に、下着写真などを遅らせ、それをネタに脅迫し、更に、

  過激な写真を送らせる場合

 

など、様々です。その過程を楽しんでいるかのような行為者(犯罪者)も実際います。

 

 検挙されている児童ポル事犯は、確実に増えているようです。

 

児童による自撮り写真が、行為者に送信されなかった場合

 

 上記の児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項が、「児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者」と規定していることから、児童とのそういったやりとりがなされたにも関わらず、最終的に、画像等が送信されなかった場合には、行為者のスマホに画像が保存されないので、「製造」に該当しません

 

 いわゆる未遂になるわけですが、児童買春・児童ポルノ禁止法が、明文で未遂を規定していませんので、同法では罰せられません(なお、罪刑法定主義と言って、未遂を罰する際には、ちゃんと規定しなければなりません。)

 

 しかしながら、都道府県のいわゆる青少年保護育成条例は、このような未遂にあたる場合を別途規定し、罰則を設けている場合があります。

 

 たとえば、東京都の青少年保護育成条例(正確には、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)を見ると、以下のように、18条の7で、青少年に対し、お金を払って児童ポルノ等の提供を行うよう求めること(要求行為)自体を禁止行為としています。

 

 罰則ですが、同法26条7号で、30万円以下の罰金とされています。なお、懲役刑は規定されていません。

 

-------------------------------------------------------------------------------------------------

東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の7】

(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)

 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。

 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(・・・)の

 提供を行うように求めること。

 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し

 若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を

 行うように求めること

 

東京都青少年の健全な育成に関する条例26条】

 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 

 ・・・

 七  第十八条の七規定に違反した者

-------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 東京都以外の各都道府県の青少年保護育成条例も(多少違えど)同じような規定があると思われます。気になる方は、ご自身の住居の都道府県の青少年保護育成条例を見てみてください。

 

最後に

 

 今回は、児童ポルノの製造罪のうち、特に、児童による自撮りの場合について説明し、未遂の場合でも、各都道府県の条例で罰則となる場合があることをご説明しました。

 

 今後は、児童ポルノ・児童買春に関する他の犯罪行為や、具体的な相談事例や、実務(逮捕されるのか、とか、捜索差押えがなされ得るのか、など)も記事にしたいと思います。

 

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

 


弁護士ランキング