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刑事事件-児童ポルノ所持罪で、弁護士を伴って自首すべきか?

 

はじめに

 

 下記のニュースを見ました。

 

www.asahi.com

 

 海外にサーバのある児童ポルノサイトの捜査が困難だったようですが、(コロナの影響による)サイト運営者の帰国に伴い、強制捜査を実施し、2万人分の会員名簿等が押収されたそうです。

 

 捜査機関が、児童ポルノを売買した人の名前や住所を(正直に登録していたのであればですが)、把握したことになります。

 警察に直接相談に行ったり、弁護士に相談している人も増えています。

 

 今回は、これについて記事を書きたいと思います。

 

自首すべき?

 

 ここで、私が自首について一から説明しなくとも、「自首」でググってみて頂ければ、自首のメリットが丁寧に説明された、カラフルで綺麗に整理された読みやすいサイトがいくつも出てくると思います。説明は概ね正しいです。

 

 でも、サイトの多くが、逮捕の恐怖を強調し、自首を促していませんか

 

 私、これを見てちょっと怖くなりました・・・。

 これ、正直、弁護士の新しいビジネスかと思いました。

 

自首すべき?

 

 私のところに相談に来る方には、(児童ポルノ所持罪に限らず、)次の順序で答えます(これが、絶対正しいとは言いませんが)。

 

 ① まず、相談者がしたことが、そもそも犯罪に該当するのかを検討します

   実は、相談者が悪いことをしたと思っても、犯罪に該当しなかったり、

   ほぼ逮捕されることがないであろう事案も、実は結構多いです。

 

 ② 犯罪に該当するとして、態様がどれくらい重大なものかを見極めます

   道端で立ちションしても軽犯罪法違反ですが、自首を促したりしません。

   一方で、殺人をしてしまったのであれば、自首を促します。

   児童ポルノ所持罪であっても、単純所持なのか、不特定多数へ提供たのか、

  買春してビデオ撮影したのか、刑罰も様々です。

 

 ③ 相談者が逮捕される可能性がどれくらいあるか考えます

   相談者の氏名等の個人情報を知っている被害者(児童買春でトラブル等)が、

   間違いなく警察に駆け込み、相談者の個人情報から、警察が相談者に

   たどり着くか等を検討します。

 

 ④ 逮捕される可能性がある程度高い場合に、相談者の家族や生活状況等を伺い、

   今後、どうするかを決めます

   つまり、自首するかどうか、自首するとして一人で警察に行くか、

   弁護士(私)が伴って自首するかを決めます。

   敢えて自首しないという判断もあり得ます。

 

児童ポルノ所持罪の場合

 

 ①→②→③と確認して、逮捕される可能性としては、一般的に以下の感じでしょうか。

 

 単純所持 < 不特定多数への提供 < 買春によるビデオ撮影(、それを売る)

 

 逮捕されるかどうかは、個別事案によりますし、何パーセントとは言えません。

 

 単純所持なら、それほど逮捕される可能性は高くないですが、買春よるビデオ撮影(しかも児童とトラブった事案)であれば逮捕される可能性は結構高いでしょう。

 

弁護士の運営するサイト

 

 明らかに、逮捕の恐怖(逮捕されたときに、如何に大変なことになるかを煽っている)を示して、弁護士を伴った自首を促そうとしているように思われるサイトがあります。

 

 気を付けてください。

 

 最初から、(事案の詳細や、本人の家族構成、本人の希望を聞かずに)熱心に自首を勧めてくる弁護士がいたら注意してください。

 

 残念ながら、弁護士も商売です。多分、自首を促して数十万円を要求すると思います。

 

 「いやぁ、逮捕される可能性は少ないから、とりあえず見送りましょう。」

 

 と言って、相談料5500円で済ませるべき事案を、そうしない弁護士はきっといるだろうと思います。

 

 でも、これを責めるのは難しいです。逮捕される可能性が0%でなければ、自首を促すことが問題があるとまでは言えないからです。

 

 死ぬ可能性がほとんどない傷でも、(稀に傷からウイルスが入って死ぬ人もいるとして)死ぬ可能性がゼロではない以上、死んでしまったら大変だから、手術しましょうと言って、数十万円の手術代を請求するような感じです(お医者さんはそんなことはしないと思いますが)。

 

 でも、たとえば、逮捕される可能性が10%くらいだったら、自首しない方がいいと思います。それがきっかけで、逆に、送検され、自宅に強制捜査(ガサ入れ)が入ってしまうかもしれません。

 

最後に

 

 私が説明したことが全部正しいということは申し上げません。

 確かに、児童ポルノは、近年厳罰化され、検挙も多くなってきています。

 単純所持でも、逮捕される可能性はゼロではありません。逮捕されないという保証はできません。

 

 一方で、弁護士の自首ビジネスと思われるサイトが多いです。

 

 繰り返しになりますが、事案の内容や相談者の生活状況や希望をあまり聞かずに、熱心に自首を勧めてきたら、ちょっと別の弁護士に相談した方がよいかもしれません。

 

 このブログで何度も申し上げていますが、弁護士の良し悪しは、必ずしも、綺麗なウェブサイトで紹介されているか否かではありません。弁護士でない方に、良い弁護士とそうでない弁護士の区別は残念ながらつきにくいです。

 

 是非、何かのために、信頼できる弁護士と知り合いになってください

 

 そうすれば、その弁護士にまずは相談し、仮にその弁護士が(刑事の)専門でなくても、きちんとした弁護士を紹介してくれるはずです。

 

 飛び込みは、弁護士ビジネスの餌食になってしまう可能性が高いです。

 

 くれぐれもご注意を!

 

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