はじめに
すごく久しぶりのブログ記事です。3月の忙しさを何とか乗り越え、一部の大変な仕事のせいで溜まってしまっていた仕事を4月の前半にこなし、ちょっと余裕がでてきました。
しばらく、特許関連の記事ばかりでしたが、刑事事件やビールを飲むことも継続しています。
最近、なぜか、児童ポルノ関連の相談が多いです。いちいち答えるのが面倒ということもあり、整理する意味で、少しこれから書いていこうと思いました。
なお、結構前ですが、下記記事を書きました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
児童ポルノの単純所持
たとえば、窃盗(万引き)とか、殺人とかは「刑法」典に書かれてします。
しかし、「刑法」典以外にも、さまざまな法律に、さまざまな犯罪が規定されています。
たとえば、スピード超過だったら道路交通法ですし、覚醒剤の所持なら、覚醒剤取締法といった感じです。
児童ポルノの(単純)所持も、犯罪です。あとで、条文を確認しますが、持っているだけで、犯罪というのは、結構すごいことです。
その意味で、禁制品である、覚醒剤や大麻と同じですね。これらほど罪は重くありませんが。
ちなみに、法律を知らなかったから、罰せられない、ということはありません。
ですので、後で紹介する児童買春・児童ポルノ禁止法を知らなかったとしても、そこの規定されている罪に該当する行為(児童ポルノの単純所持)をしてしまうと、罪になります。
このブログでは、児童ポルノを所持しているのは、けしからんとか書きません(もちろん、けしからんことはない、とは言いませんが。)。
いろいろな相談を受けますが、相談者は、ふと魔が差して行為に及んでいる人が多いです。あとで、あたふたしてしまうんですよね。
条文(児童ポルノの単純所持)
児童ポルノの単純所持は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(略して、「児童買春・児童ポルノ禁止法」といいます。)の7条1項に規定されています。
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【児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項】
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
【児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項】
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
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条文解説(児童ポルノの単純所持)
① 自己の性的好奇心を満たす目的
・・・罪に該当するにはこのような目的が必要ですが、現実的には、
この目的がなかったとして罪に問われない状況というのは少ないかもしれません
(自分の子供の成長記録で、お風呂での撮影をしたのは通常該当しませんね。
よろしければ、3条も参照。)。
どこかの児童とのやりとりで入手した場合には、その証拠が残るかもしませんし、
そうでなくても、警察の取調べでそのように認めて、供述調書を取られることも
多いでしょう(なので、逮捕された場合には、さすがに弁護士に依頼しましょう。
もっと言えば、知り合いの弁護士の名刺を財布に入れておきましょう。)
② 児童ポルノの所持
・・・紙に印刷した写真や、スマホやパソコンの中のデータとして持っている
場合ですね。圧倒的に後者が多いでしょうね。
③ 1年以下の懲役 又は 100万円以下の罰金
・・・刑の重さの感覚が分かりにくいと思うので、「刑法」典にある
なじみのある他の罪と比較してみましょう。
暴行罪(人を殴った等)は、
2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金等、
傷害罪(人に怪我させた等)、
15年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金等、
遺失物横領罪(お金拾って懐に入れた等)は、
1年以下の懲役又は10万円以下の罰金等、
です。
他の犯罪と比較し、必ずしも、重罪というわけではありません。
ということで、児童ポルノの単純所持だけでは、いきなり逮捕されるというのは、
それほど多くないと思います。
ただ、送致(警察から検察へ事件が送られる。ニュースでは送検と言ったり
します。)され、略式罰金という事はあり得ます。もちろん、前科や悪質性や
他の罪も成立するかどうかで変わってきます。ケースバイケースです。
後日説明する児童ポルノの「製造」や、条例違反(児童に対するわいせつ行為
などをした場合)、児童買春(本法や児童福祉法違反)が併せて問題となるときは、
具体的な被害者(児童)やその親が警察に相談に行き、それを端緒として、
捜査(内偵)が行われ、逮捕や捜索差押に至るということもあります。
もっとも、他の弁護士のサイトのように、
児童ポルノ所持
→逮捕される(可能性)
→自首すべき
→弁護士雇おう(我々が力になります)
→費用は○○万円
とは言いませんが、ケースバイケースですね。
少なくとも、今回紹介した単純所持だけで、逮捕はあまり聞きません。
最後に
これから、その他の罪である児童ポルノの「製造」や、これに関連した、児童買春、児童福祉法違反、各都道府県の条例違反、具体的な相談事例も紹介していこうと思います。
また、罪が発覚してしまう状況や、逮捕されるか否か、裁判になるかどうか(略式罰金で終わるかどうか)は、ケースバイケースですが、実務的な観点で説明していきたいと思います。