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刑事事件-児童ポルノ関係(2)製造

はじめに

 

 前回から、児童ポルノ関係の刑事事件について記事を書いています。

 前回の記事は、いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法単純所持について説明しました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 今回は、児童ポルノ製造についてです。

 

児童ポルノの製造

 

 児童ポルノの製造というと、例えば、古典的には、①児童ポルノの写真を製本したものを作成したり、あるいは、②児童ポルノビデオを撮影してDVDに焼いたりして製造することをイメージしそうですが、もっと端的な(簡単な行為により成立する)ものも含まれます。

 

 以下で説明するように、児童に所定のポーズを取らせ、スマホで撮影したような場合も含み得ます。  

 一昔前と違い、今では、誰もが、スマホなどで気軽に写真・動画の撮影ができてしまう関係で、簡単に児童ポルノの製造が出来てしまう状況にあります。

 

条文

 

 まず、条文を見てみます。

 

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【児童買春・児童ポルノ禁止法7条4項】

 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 

【児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項】

  この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

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 7条4項に、「前二項と同様とする。」とありますが、具体的には、

 

  「・・・三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」

 

です。

 前回説明した単純所持は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金でしたので、

これよりは重くなっています。

 単に所持しているより、製造した方が、法益の侵害の程度が大きい(児童に対する権利侵害の程度が大きい)ということですね。

 

 この製造罪では、前回ご説明した単純所持罪とは異なり、(他の犯罪該当性がある場合も含め)結構、逮捕(身柄拘束)をされている事例をニュースで見かけます。

 

条文の解説

 

この犯罪に該当する要件は、以下のとおりです。

 

① 「児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ」

 

  どのような姿態(ポーズ)をとらせるかは、上記の2条3号1~3号を

 見てください(詳しくはあまり書きたくない・・・)。

  これは、児童と直接会って、そのようにさせることは当然ですが、スマホを用いて

 遠隔でも該当します。つまり、通話やアプリにより指示する場合も含まれます。

  行為者の言動等により、児童が上記姿態(ポーズ)をとるに至った場合です。

 たとえ強制しない場合でも該当し得ます。

 

② 「これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、

 当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、」

 

  児童に上記所定のポーズをとらせ、写真に印刷したり、(あるいは、

 こちらの場合がほとんどかもしれませんが、)スマホの記録媒体に記録したことに

 より、これに該当することになります。

 

  その後、更に、複製したり、他のメディア(記録媒体)に移したりすることが、

 「製造」に当たるかは、裁判例で色々議論されているところです。

  端的には児童ポルノ「拡散」の危険性が該当性に影響し得ます。

 

  少なくとも、最初の段階(児童に所定のポーズを取らせて、スマホで撮影して

 記録すること)は「製造」になります。

 

  ここで、児童による「自撮り」の場合(これを送信させる)はどうかなのですが、

 これも行為者の言動等(指示)によるものであれば、「製造」に該当し得ます。

 

最後に

 

 児童に所定の姿態をとらせ製造することについて、条文の内容はそれほど分かりくくないのですが、具体的に、「こういう場合は該当する・該当しない」というのが、様々な事例が考えられるので、判断がつきにくい場合が結構あります。

 

 ごく簡単に解説しましたが、また、今後、別の機会に、(ご相談頂いた件や裁判所で問題となった件など)具体的な事例も説明したいと思います。

 

 あと、製造罪の場合は、児童と直接・間接的に交流をもつ関係で、刑法典に規定されている脅迫罪強要罪強制わいせつ罪強制性交等罪、本法に規定されている児童買春罪、その他、児童福祉法違反都道府県の条例違反(いわゆる青少年保護育成条例)の該当の問題となります。

 いろいろ該当してしまうと、重くなってしまい、また、発覚の可能性も大きくなり、逮捕・勾留の可能性も高まります。

 これらも、徐々に解説していきたいと思います。

 

 

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