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刑事事件-児童ポルノ関係(4)盗撮による製造

はじめに

 

 前回までは、下記記事で、児童にポーズをとらせての製造罪について説明しました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 今回は、盗撮による製造罪について説明します。

 

盗撮による製造罪

 

 児童買春・児童ポルノ禁止法(正確には、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」です。)の7条5項には、以下のように規定されています。

 

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【児童買春、児童ポルノ禁止法7条5項】

 

 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 

【児童買春、児童ポルノ禁止法2条3項】

 

 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。

 
 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
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 法定刑は、前回説明した4項の(児童にポーズをとらせての)製造罪と同じで、
 
 3年以下の懲役 又は 300万円以下の罰金
 
です。
 
 この盗撮による製造罪は、平成26年の改正による新設された罪です。
 趣旨としては、被害児童の保護はもちろん、発覚しにくく巧妙で悪質であること等を踏まえ、規定されました。
 
 条文にある「ひそかに」がポイントですね。
 児童とのやりとり(直接やSNSを)を通じて所定のポーズをとらせ、児童ポルノを製造するのは、前回の記事で説明した4項の「児童にポーズをとらせての製造罪」が成立しますが、こっそりと撮影(盗撮)するなどした場合は、この4項では罰せられませんので、この5項の「盗撮による製造罪」が問題となるわけです。
 
 細かい話ですが、たまたま児童が隠し撮りに気づき、でも、盗撮されることを「まぁいいや」と黙示的に承諾していた場合でも、成立し得ます。
 

軽犯罪法の窃視の罪

 

 ところで、「のぞき」というのは、軽犯罪法に規定されています。

 この軽犯罪法って、司法試験を勉強したりしても、あまり出て来ないので、意外に知られてしません。

 刑罰も重くないので、あまり問題にならないのですね。

 軽犯罪法は、結構古いままの法律です。

 

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軽犯罪法1条】

 

 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

 ・・・

二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

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 なお、拘留又は過料は、下記のとおり、刑法に定めがあります。

 

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【刑法16条】
 
 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。
 
【刑法17条】
 科料は、千円以上一万円未満とする。
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 刑罰の重さとしては、それほどは重くはありません。

 

 そこで、公共の場(電車内など)での「のぞき」とか盗撮とかは、都道府県の迷惑防止条例違反とかで対応していたりします。デパートのトイレとかだと、建造物侵入罪で対応することもありますね。

 

 また、軽犯罪法の「のぞき」(窃視の罪)にも、「ひそかに」が出てきますが、これは、プライバシー権の保護を趣旨とするので、被害者の同意があれば、法益侵害がなく、罪にならないとされているようです。

 

 でも、今回説明した児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項の「ひそかに」は、児童の承諾の有無を問題とする要件ではないとされています。

 

 プライバシー権以上に、児童の尊厳を害し、人格権を侵害するものであり、性的対象とすることの深刻な問題点から、(軽犯罪法とは違い)そのように解釈されるようです。

 

最後に

 

 児童買春・児童ポルノ関連の問題については、(相談も多いので、)今後も、時々記事にしたいと思います。

 

 

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