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理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件-盗撮

はじめに

 

 最近のブログ記事は、全てビール関連ばかりで、しばらく、特許(知財)や刑事事件や宇宙の記事を書いていませんでした。

 

 今回は、久しぶりに刑事事件関連の記事です。

 

 なお、前回は、5か月も前で、特殊詐欺の記事でしたね。私は、現在、特殊詐欺の件を2件扱っていますが、追起訴が続いており、裁判がなかなか終わりません。そして、本当に、3~4年の実刑という厳罰ですので、くれぐれも特殊詐欺には手を出さないようにしてください。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 今回は、盗撮について書こうと思います。最近はこんなニュースもありました。

 

news.yahoo.co.jp

 

 これから書く記事と上の事件は直接関係ありませんが、よく見かける盗撮事件のですよね。

 

盗撮について

 

 刑法に、(窃盗罪のように)盗撮罪というものが規定されているのではなくて、各都道府県の迷惑防止条例に、盗撮に該当する罪が規定されています。

 

 各都道府県ということで、各地によって若干異なった規定となっていたりします。私の場合は、東京ですので、東京、さいたま、神奈川、千葉あたりの条例を見ることが多いです。

 

 おおよそ、公共の場所(電車の中)での盗撮などが違法とされているのですが、必ずしも公共の場所とはいえない(誰でも入れるわけではない)、学校や会社のトイレなどの場合は、迷惑防止条例違反で取り締まれない場合もあります。

 

 あと、軽犯罪法にも盗撮に関連する規定があるのですが、なにぶん、軽犯罪法は軽いので、あまり取り締まりに有効ではありません。

 

 迷惑防止条例違反は、住所侵入罪とセットにされることがあります(デパートのトイレにカメラを設置するなどの場合)。

 

 盗撮の手法は、もっぱら、スマホです。小型カメラを靴や鞄に仕込んで持ち歩くとか、トイレなどに小型カメラを設置するという計画的かつ本格的な手法は、それほど多くありません。

 

 逆に言うと、スマホの普及で、盗撮が簡単にできてしまっているという社会の事情があります。

 

 なお、スーパーのビニールが有料となり、みんながトートバックを店に持って来ることが増え、それに乗じて、トートバック万引きが増えている社会現象と同じ感じですね。社会的事情の変化で犯罪が増えたりします。

 

被告人像や動機

 

 私自身、刑事事件をこれまで多く扱ってきたのですが、盗撮(迷惑防止条例違反)で捕まる方は、いわゆる皆さんがイメージする変態な感じの人ではなく、ごく普通の方です。家族と話をしても、仕事も順調で、性格も問題ない方が多いです。

 

 しかし、まぁやっていることは、盗撮した画像を何百枚もスマホやパソコンに保存したり、整理したりしているので、いわゆる変態と評価されてしまうのかもしれませんが・・・。

 

 本当に、ごく普通のサラリーマン学生さん(私がこれまで担当したのは全員男性)です。ちゃんとした学歴・仕事の方も多いです。

 

 そして、動機はもっぱらストレス解消というのが圧倒的に多いです。

 

 ですので、本当に、たまたま運悪く(あるいは、性的嗜好で)、ストレス解消法として、盗撮に手を出してしまったという感じかもしれません。

 

 私の場合ですと、たとえば、ストレス解消は、幸いにもビールを飲むことなので(もちろん、飲み過ぎは健康に良くありませんが)、これは全く合法で良かったです。スポーツでストレス解消できる方も、ある意味で幸運かもしれません。

 

 また、(盗撮の類に興味を持ってしまっても、)合法の風俗で満足できる人なら、これもまた問題ありません。家庭における倫理的な問題は別として・・・。

 

 でも、ストレス解消のため、(盗撮される者の同意なく)盗撮をしてしまうと、途端に犯罪になってしまうわけです。逮捕・勾留もされることが多いです。

 

 昔(私が20代くらいの頃)は、電車で盗撮をさせてくれるようなイメクラ(もはや死語でしょうか?)がよく深夜のテレビで話題になっていたような気がしますが、今はもうないんでしょうか。

 

 ちなみに、刑事事件を扱っていると風俗関係の方が依頼人であったり、被害者であったりすることもたまにあるのですが、せいぜい表面的な示談ぐらいで、がっつりと関わったことはあまりありません。

 

 盗撮で捕まったしまった被疑者に対しては、「(合法な)風俗とかで済ますというのはダメなの?」とよく聞いてみたりしますが、やはりダメなようです。お金がない等の理由ではありません。風俗での「同意のある」盗撮では、(真の意味で)ストレス解消にはならないようです。合法の代替手段がないのは難しい問題ですね。

 

 ストレス解消目的で盗撮をするそうですが、具体的にどう感じるのか、という点を質問します。これは、犯罪動機に関わるからです。

 彼らの口からは、「緊張感スリル)」、「高揚感」、「(盗撮をする女性に対する)優越感」と言ったワードが出てきます。

 

 これらの感情に支配されてしまうと逃れる(盗撮を止める)ことが難しくなるのは容易に想像できます。

 

弁護人として

 

 盗撮で捕まってしまった人には、反省を促し、二度とやらない旨誓約してもらい、監督者(家族)の存在を確保するなどの通常の弁護活動をするわけですが、どこまでいっても(弁護活動が)表面的に感じてしまいます。

 

 ですので、これに加えて、抜本的な解決として医師による治療やカウンセリングということも考えなければなりません。

 

 これは、窃盗(万引き)の場合もそうなのですが、病的窃盗という自分ではどうも制御できずに、窃盗(万引き)をしてしまう方がいます。

 

 盗撮も、自分ではもはや止められない状態になっている場合がほとんどです。なお、かといって、行動制御能力がないとか減退しているとかで責任が軽くしてもらえる事例というのは、実務上なかなかありません。

 薬物事犯は特に顕著ですが、病的なものとして、窃盗(万引き)や盗撮・痴漢ですね。

 

 盗撮、この性的趣向を病気と言ってよいのか正直よく分かりませんが、いずれにしても、犯罪に該当する以上、これを医学的に止められる方法(治療)があれば、それを実行する必要があります。

 

 そうでないと、盗撮も繰り返せば、実刑で刑務所に行くことになり、社会人として、もはや社会への復帰が難しくなってしまうので、それ以前に(1回の過ち)で留めたいからです。

 

 実は、刑事弁護ではないのですが、ある学校で、ある教員が学生・生徒を盗撮をしている疑いがあり、この教員について調査し、処分を検討する三者委員会の委員になったこともあります。その件でも、盗撮について(意図せず)かなり勉強することになりました。

 

 ちなみに、盗撮自体ではなく、盗撮した画像を(見るというよりは)「集める」ことに固執・執着してしまうという事例もありました。

 

最後に

 

 盗撮はもちろん犯罪で、被害者にとっては許しがたいものだと思います。弁護人としても、それはもちろん承知しています。

 

 しかし、一方で、ごく普通の方の一定数が、「盗撮を止められない」という状況に陥っているのも事実です。これは、ストレスの多い社会の問題かもしれませんし、そのような嗜好に陥ってしまった個人の問題なのかもしれません。両方かもしれません。

 

 他のストレス解消法や合法的な風俗とかで対処するのは一つの手ですが、実際に盗撮をしてしまった人の話を聞く限り、「緊張感(スリル)」、「高揚感」、「優越感」という感情に取りつかれており、限界があるように思われます。

 

 そうすると、(通常の弁護活動とともに、)医師による治療やカウンセリングで何とか対処することになります。

 

 できれば、逮捕されてから我々のような弁護士に刑事弁護を依頼するのではなく、事前に、我々弁護士に相談してもらうことで未然に犯罪を防ぐことができたら、弁護士としては職域以上のより良い仕事ができたことになるので、これが理想的なのですが、なかなか難しいですよね。

 実際には、夫が盗撮で逮捕・勾留され、家族が絶望とともに相談に来るというパターンがほとんどです。

 

 「やめられない」窃盗、性犯罪(特に、盗撮と痴漢)、薬物事犯については、ちょっと刑事弁護を経験しつつも、心理学やら医学やらを勉強しています。

 

 

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