理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件-被害者との示談

はじめに

 

 今回は、刑事事件における被害者との示談について、ご説明したいと思います。

 既に記事にしたような気がしていましたが、まだ書いていませんでした。

 刑事事件における弁護人の活動として、最も重要なもののの一つですね。

 

示談までの流れ

 

 今回は、自白事件(=被疑者が罪を認めている事件)を前提にご説明します。

 

 なお、否認事件の場合は、本来的には示談はあり得ないのですが、事件によっては、少しイレギュラーな形で示談をすることもありますので、それはまた別の機会にご説明したいと思います。

 

 被疑者が逮捕・勾留されると、勾留状に被疑事実が書かれ、その中で被害者が特定されています

 

 担当検察官に連絡をして、被害者との示談を前提に、連絡先(電話番号)を(弁護人限りで)教えてもらいます。担当検察官は被害者に連絡し、示談交渉に応じられるか被害者に確認します。その上で、OKが出れば、示談交渉スタートということになります。

 

 場合によっては、担当検察官の方から、「示談はお考えですか?」という旨の連絡を頂いたりします。

 

 被疑者と相談し、示談を進める場合には、弁護人が被疑者を代理して示談の交渉をします。

 示談というのは、簡単に言えばお金を支払って許してもらう等の合意(契約)ですので、これ自体は民事の性質を有しています。

 しかし、示談の成立の有無が、(被疑者段階での)刑事事件の処分や、裁判の(被告人段階)での刑に有利に影響しますので、刑事弁護人としても示談を進めるわけです。

 

 示談の場合は、示談金(お金)を支払うことを前提としますので、被疑者の資力(支払えるか)が前提問題としてあり、場合によっては家族に立て替えてもらったり、家族等から借りて対応します。

 

示談金の相場

 

 これが何とも難しいですね。

 

 たとえば、窃盗罪の場合は、被害金額というものがありますので(たとえば、財布から3万円だけ抜き取った場合)、被害金額プラスアルファ(被害者は、警察の捜査・取調べに協力させられ、時間も奪われていますので、その迷惑料)を払います。

 

 3万円の被害金額の場合、たとえば5万円~10万円くらいでしょうか。

 

 もちろん、被疑者にその資力があることが前提なので、3万円以上支払えない場合は、3万円又はそれ以下でお許し頂くようお願いすることもあります。

 

 また、被害者のあることですから、たとえ(数万円の)窃盗でも、被害者にとっては相当腹立たしいことで、

 

 「被疑者を死刑にしろ!1000万円払え!」

 

と言われることもあります。

 

 こうやって罵られたりすると、弁護士も普通の人ですから「嫌だなぁ」とか精神的に滅入ってしまい、以後、刑事事件をやらなくなったりします。

 私は、慣れました・・・。

 

示談のタイムリミット

 

被疑者段階の場合

 

 被疑者段階では、逮捕・勾留され、10日ないし20日の満期に、検察官が不起訴とするか、略式罰金とするか、公判請求(裁判にする)かを決めます。

 

 弁護人としては、何とか、不起訴や(犯罪にもよりますが)略式罰金で済ませて、裁判にならないようにしたいところです。

 

  ですので、満期までに示談を成立させたいところです。厳密には、決裁の関係で、満期の2日前までに示談が成立しているのがベストです。

 

 被疑者にとっては、勾留されている10日ないし20日は非常に長く感じると思いますが、弁護人にとっては、示談交渉の期間としては、すごく短く感じます

 

 実際、示談交渉では、被疑者の代理人としては、被疑者の利益を考え、なるべく低額で示談が成立するよう努力します。弁護人の腕の見せ所かもしれません。

 

 もっとも、被疑者段階では、このタイムリミットがあるため、あまりじっくりと金額交渉する余裕がありません。結果的に、被害者の言い値になってしまうことも残念ながら結構あります。

 

被告人段階の場合

 

 起訴されてからの示談交渉は、裁判(審理)が終結するまでです。

 起訴されてからは数か月あるので、被疑者段階よりは時間があるので、じっくりと示談交渉できる場合もあります。

 

罪や事件の内容により示談金は異なる

 

 もちろんですが、示談金は罪や事件により様々です。

 

 窃盗罪の場合は、前述のように、被害金額が示談金のベースとなります。

 以前に、私が担当した下記の事件を紹介しました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 被疑者が、ある家の前に置いてある猫除け用の水道水の入ったペットボトルを盗んで飲み干したという事案でした。

 

 被害金額は水道水2リットルで、限りなく0に近いですし、被害者のお婆さんは、「弁償なんていりません。」と言ってくれたのですが、示談の前提としていくらかお金を払った方がよいのですので、結局、1000円をお支払いして示談を成立させました。

 

 粗暴犯(傷害罪)の場合には、治療費等がベースとなります。慰謝料(精神的な損害)も考慮したりします。

 相手を殴って全治1~2週間の怪我させたというような場合は、数万から数十万円といったところでしょうか。

 

 性犯罪の場合は、大変難しくて、治療費、精神的な慰謝料、また、被疑者・被告人から離れるために引っ越しを余儀なくされたなど、示談金のベースが上がります。

 

 性犯罪も様々で、全く知らない人というのもあれば、知り合い同士もあり、内容も様々なので一律には決まりません。

 それこそ、何十万~何百万、(芸能人だと)何千万とかになりますよね。

 

最後に

 

 示談についてざっと書きましたが、まだまだご説明すべきことはたくさんありそうです。またの機会に。

 

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

 


弁護士ランキング