はじめに
今回は、特殊詐欺で執行猶予はとれるか?についてご説明したいと思います。
窃盗の場合
たとえば、(大したことのない金額のものを盗ったような)万引きについて言えば、
(1)初めて逮捕されると、お目玉で、不起訴
(2)2回目だと、罰金(略式起訴・略式罰金)
(3)3回目だと、起訴(裁判)になりますが、執行猶予付き判決
※執行猶予期間中(たとえば、3~5年)に犯罪をしなければ、
刑務所に行かなくて済む。
(4)4回目だと、実刑
(5)その後は、だんたん刑期が長くなり、短期間に繰り返すと常習累犯窃盗となる。
という感じで、ざっくり言うと、だんだん重くなっていく感じです。
もちろん、窃盗の場合でも、高額なものを盗んだり、悪質だったり、件数が多かったりすと、いきなり、(1)、(2)は飛び越えて、起訴されたり、いきなり実刑になったりもしますが。
ただし、その場合でも、示談により、減刑を図るということができます。
特殊詐欺の場合
特殊詐欺(オレオレ詐欺やら、振り込め詐欺やら、還付金詐欺など色々あります。場合によっては、詐欺罪ではなく、電子計算機使用詐欺罪や窃盗罪という犯罪が成立しますが、量刑という点では同じです。)の場合は、違います。
詐欺集団の末端といえる受け子や出し子でも、2年半~3年半、すこし上の立場になると4年以上の実刑になります。
それは、たとえ、初犯であったとしてもです。
特殊詐欺が厳罰である理由は、
① 主にはお年寄りに対し、
② 複数人(共犯)で、
③ 複数の被害者を生み、④非常に高額な金額が詐取され、
④ 社会的に大問題となっている犯罪だからです。
たとえ、行為として、上から指示を受けて、事務作業をするかのように淡々とお金を移したり、引き出したりしているだけでも、です。
この点は、以前の記事でも書きました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
特殊詐欺が重罪であることは、認識されていない
これも、上記記事で書いたのですが、あまり認識されていません。
私が担当した控訴審事件で、被告人から、「第一審の弁護人は執行猶予が付くと言ったのに、実際は実刑だったので、あわてて控訴した。」と言われたことが何回かあります。
弁護士でも、あまり特殊詐欺の事件を扱っていないと、「まぁ、初犯だから執行猶予が付くでしょ。」と安易に被告人に説明してしまうのかもしれません。
最近聞いたところでは、被告人が、警察官から、「執行猶予付くから大丈夫。」と言われたそうです。
特殊詐欺を数件まとめて起訴されて、更に、追起訴までされて、たとえ初犯でも、執行猶予はとても無理です。
警察官でも、厳罰であることを認識していないのか?とちょっと驚きました。
執行猶予を獲得するには?
それでも、特殊詐欺で執行猶予を取得するためには、被害弁償・示談しかありません。
もちろん、被告人に有利な情状としては、①反省しているとか、②身元引受人(親や家族)がいるとか、③定職があるとか、色々主張することはできるのですが、結局のところ、それらの情状を揃えても、執行猶予は難しいです。
大きく影響するのは、被害弁償・示談です。
しかし、実際の被害金額は、合計で4桁(数千万)になったりします。
末端で、受け子や出し子をしている人は、何件に関与して、いくらの被害金額を出しているか全く認識していません。
逮捕されてから、被害金額の大きさに驚くのです。
とても、家族に相談しても一般的な家庭では支払える金額ではありませんよね。
実際、受け子や出し子は、報酬としてせいぜい数万円とか数十万円しか得ていなかったりします。上層部に利益はとられてしまうんでしょうね。
でも、自分が得た報酬に相当する数万円や数十万円だけを弁償するだけでは、とても被害弁償にはなりませんし(焼け石に水)、示談も難しいです。
最後に
ということで、繰り返しですが、特殊詐欺に関わると、まず実刑(いきなり刑務所行き)になってしまうので、くれぐれも手を出さないようにしてください。