はじめに
今回は、国選事件で、一審ないし控訴審を担当した弁護人を、引き続き、控訴審ないし上告審を担当してもらえるか、についてご説明したいと思います。
私は、刑事の控訴審、上告審を扱っていますが、以前下記の記事に書きました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
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私、「ちゃんと」国選弁護をやっているので、ときどき、引き続き担当して欲しいと要望されることがあります。
原則論
まず、国選だけでなく、私選も、弁護人は審級毎(一審、控訴審、上告審)に委任・選任されなければなりません。
私選の場合は、弁護人の委任は全く自由です。
気にいらなければ途中で解任してもよいし(某政治家がやってましたね)、一審の弁護人が良ければ、引き続き、控訴審、上告審を担当してもらっても構いません。
さて、国選弁護人は、資力のない被告人などのために弁護活動をすべく、国から選任される弁護人です。
国選弁護人の選任に関する規定は、以下の刑事訴訟法規則の条文です(自分の備忘録として引用しておきます。)。
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刑事訴訟規則
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刑事訴訟規則29条3項の規定からすると、原則として、一審とは別の弁護人を付すこととされており、「審理のため特に必要があると認めるとき」だけ、裁判所等は、その裁量により、引き続き、控訴審でも一審の弁護人を引き続き選任することができます。
同29条4項は、控訴審の弁護人を、引き続き、上告審の弁護人として選任する場合にも同様ということです。
実際の例
実際に、被告人からの強い要望により、過去2回、引き続き弁護人になるための上申書を裁判所へ、要望書を法テラスへ、それぞれ提出したことがあります。
しかし、2回とも認められませんでした。
他の弁護士から聞いてみると、ほぼ認められないと聞いています(私は、認められた例は聞いていません。)。
法の規定が、明らかに例外的にしか認められないとされていますが、その趣旨は、(ちゃんと調べたわけではないので知りませんが、想像するに、)
① 違う弁護士が、新しい視点で事件を見た方がよいから、
(否定的に言えば、前審の弁護人の不手際を隠さないようにするため)
② 弁護人と被告人との何らかの馴れ合いを防ぐため、
③ 国選の制度は、被告人が弁護人を選べない制度である(選びたければ私選を)、
といったところでしょうか。
しかし、
① 事案が複雑だったりした場合に、被告人は、上級審で、一から別の弁護人に事案を説明しなければならないという負担が生じますし、
② 被告人と国選弁護人との間で、信頼関係が構築されていれば、引き続き同じ弁護人が担当することが、被告人にとって利益となることが多いと思われる
ことからすれば、個人的には、引き続きの弁護人の選任は緩く認められても良いように思われます。
最後に
なぜ、なぜ今回この記事を書いたかというと、今現在、2人の被告人から上級審での引き続きの担当を要望されているからです。
上述したように、認められないことが通常なので、通常は、「国選の制度上、引き続きの担当は、難しいと思われます。」と言って被告人には納得してもらいます。
しかし、今要望のある2件については、諸事情により、私が引き続き担当した方が良いであろうと思われるためです。決して自分の失敗の隠蔽のためではありません(笑)。念のため。
この2件も、おそらく認められない可能性が高いですが、万が一認められたら、またご報告したいと思います。