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刑事事件-引き続きの国選弁護人担当は難しい。

はじめに

 

 以前に、下記の記事で、一審ないし控訴審の国選事件を担当した国選弁護人が、引き続き、(上級審である)控訴審や上告審で担当できるか、という点について記事で書きました。

 

 原則的には、国選弁護人は、審級毎(一審、控訴審、上告審)に、それぞれ(別の弁護士)選任されるのですが、例外的に、引き続き担当できるか、という問題です。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

私が最近、要望書を出した2事件

 

 最近、私が国選事件で控訴審(東京高裁)から担当し、上告審(最高裁)においても引き続き国選として担当したい旨の要望を出した2事件がありました。

 

 ① 別の国選弁護人が担当した複雑な詐欺事件(否認事件)で、一審は有罪判決。

   私は、控訴審から担当しました。

   被告人も、事件の全貌を説明するのが大変そうで、記録・証拠も膨大でした。

   控訴趣意書(弁護人の主張書面)の内容を、私と被告人との間で何度も、

   直接面会をし、あるいは、手紙でやりとりをするなどして推敲し、

   充実した内容にしました。

   当然、私と被告人とのには十分な信頼関係ができました。

   しかし、控訴審の結果は残念ながら控訴棄却でした(有罪が維持されました)。

   残念な結果であったにも関わらず、被告人から、上告審も担当して欲しい旨の

   強い打診がありましたので、最高裁に引き続き担当したい旨の要望書を

   出しました。

 

 ② 別の国選弁護人が担当した覚醒剤取締法違反(使用)の自白事件で、

   一審は有罪判決でした。

   これも、私が、控訴審から担当しました。

   一審判決が有罪で、被告人は判決後直ちに収監されてしまいましたが、

   私が控訴審の国選弁護人に選任されて直ちに保釈請求をし、幸いにも

   保釈許可決定がでて、無事釈放されました。

   この件は情状立証をしたものの、残念ながら、控訴棄却(つまり、一審の刑が

   そのまま維持)されてしまいました。

   被告人が上告申立てをすると同時に、控訴審であった私が、再び保釈請求をし、

   幸いにも保釈が認められました

   (通常は、上告審の国選弁護人が保釈請求ををするのですが、緊急性があった

   ため、控訴審の担当であった私が、上告申立て後に、保釈請求をしましました

   書記官の話によれば、次の上告審の弁護人が選任されていない段階では、

   控訴審の国選弁護人が、上告審段階において保釈請求をすることは、手続的には

   可能なのだそうです。

   もっとも、私の名義で保釈請求をしたため、私自身が上告審を担当しないにも

   関わらず、上告審で事件が確定した後に、私が被告人に保釈金の返還手続きをし

   なければならないという立場にあります。言い換えれば、もはや国選弁護人では

   なくなるのに、上告審が終わるまで、保釈金の返還手続きだけが残ってしまう

   です。

   この件も、被告人からの強い要望により、引き続き、担当したい旨の要望書を

   最高裁に提出しました。

 

いずれも要望は受け入れられず

 

 結局、2事件とも、要望は認められませんでした。

 したがって、2事件とも上告審では新しい国選弁護人が選任されることになります。

 

 法律としても、原則として、別の審級では、別の国選弁護人が担当する旨規定されており、例外的に、引き続きの担当が認められる場合もある、ということになっていますが、この例外にはなかなか該当しないようです。

 

 私選であればもちろん担当できるのですが、2事件の被告人とも資力に乏しく、私選弁護人として私を雇うということはできませんでした。

 

  まぁ、法律の規定が例外的に引き続きの選任を認めているだけなので、やむを得ないかもしれませんが、要するに、

 

 ① 否認の複雑な事件、

 ② (上告審段階で)控訴審の国選弁護人が保釈請求をした事件

 

という程度では、引き続きの選任は認められないことが分かりました(事案によるのかもしれませんが)。

 

 法律の要件が、

 

 「控訴審(本件2事件の場合「上告審」と読み替え)の審理のため特に必要があると

  (※裁判所が)認めるとき

 

なのですが、新たな別の国選弁護人が担当することで、何か不都合なことって現実的にはあまりなさそうなので、これに該当するというのは稀なのかもしれません。

 

 ちなみに、引き続き担当の場合は、国選費用(国から国選弁護人に支払われるわずかながらの報酬)が、確か1、2万円程度、減額されます。

 なので、引き続き担当の方が、(上の法律の規定の趣旨は別として、)節税としては良いと思うのですが・・・。

 

 あと、新たな弁護人が新たな視点で事件を見た方が、被告人にとって有益な場合がある、ということも言われたりしますが、これも上記の法律の規定の趣旨とはあまり関係ありませんよね。国選に限って言えることでもありません。

 

 想像するに、たとえば、国選弁護人が一審で無罪を勝ち取り、検察官が控訴した場合などには、控訴審でも国選弁護人を担当することが許されるのかもしれません。私には、それくらいしか思いつきません。

 

最後に

 

 引き続き、被告人のために事件を担当できない結果となりましたが、翻って、控訴棄却、つまり、良い結果が出なかったにも関わらず、引き続き担当して欲しいとお願いされることは、非常に嬉しいことです。刑事事件に限りませんが・・・。

 

 認められにくいことは今回でも分かりましたが、被告人から要望されれば、今後も、要望書を提出する予定です。 

 

 被告人にもし資力があれば、私選で受任させて頂くことができるということですから、民事事件で言えば、いわば、依頼者を獲得したのと同じ状況ですよね。嬉しいことです。

 

 まぁ、引き続き選任されなかったことが、別に、自分の責任(たとえば、能力不足など)というわけではないので、これにめげることなく、今後も頑張りたいと思います。

 

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