理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件を扱うようになったきっかけ

はじめに

 

 今回は、私が、刑事事件を扱うようになったきっかけを書いて残しておこうと思います。

 

 ご存じかもしれませんが、全ての弁護士が刑事事件を扱っているわけではありません。私の事務所の弁護士でも、私を含め、多分2、3人しか刑事弁護をしていません。

 

 弁護士になるための司法試験では刑事系科目(刑法、刑事訴訟法)は必須ですし、修習生(=法曹になるための研修生)の最後の試験(2回試験)でも、刑事裁判・検察・刑事弁護の3つの試験(起案)があります。

 

 しかし、一旦弁護士なってしまうと、刑事弁護をしない弁護士が圧倒的に多いと思います。

 

 私は、刑事系科目は(民事系科目に比べて憶えることが少ないので)好きでしたし、他の科目よりは得意ではありましたが、司法試験に合格した時点では、刑事弁護をやるつもりは全くありませんでした

 

修習生時代

 

 全ては、約1年間の修習生時代(約1年間の弁護士等の法曹になるための研修生期間)の「出会い」がきっかけでした。

 

弁護修習

 

 弁護修習(法律事務所での研修)で、立川にある多摩パブリック法律事務所に配属になりました。公設事務所で、当時は10人ほどの弁護士がいらっしゃって、どの先生方も刑事弁護に熱心に取り組んでいらっしゃいました。

 

 おそらく、他の事務所に配属された修習生よりも、何倍もたくさんの事件を見せてもらい、法廷や接見(=被疑者、被告人との拘置所や警察署での面会)に立ち会わせて頂き、書面も起案させて頂きました。

 

 弁護士が参加する弁護法廷技術の研修に(修習生の身分で)参加させて頂き、ボロクソに批評されたのを覚えています(笑)。

 

 10年も前のことですので、今は、多摩パブリック法律事務所には、当時お世話になった先生は一人もいらっしゃいませんが、多摩地区で独立されたりして活躍されていらっしゃいます。

 

 刑事弁護は面白いと思いましたが、同時に、(どなり散らす被疑者と、堂々と面会している先生を見て、)ひどく大変な仕事だとも思いました。

 

刑事裁判修習

 

 東京地裁の刑事4部に配属されました。

 

 裁判長(部長)は、大量殺人事件や、アイドルの薬物事案や、政治家の汚職事件、再審事件等、著名な事件を担当された方でした。

 

 部長は、一言で言うと、一件一件の事件に、物凄くしっかりと向き合う方でした。

 

 私が、当時は珍しく理科系出身の修習生であったため、私にも色々興味も持ってくださり、熱心にご指導頂いただけでなく、飲み会やカラオケに連れていってもらいまいした。本当に楽しい修習でした。

 

 部長は、昨年末に、定年退職されました。 

 私は、定年退職される前に、ご挨拶をと思い、12月の初めに、大阪高裁までご挨拶に行ってきました。

 

 その際に、運よく部長の法廷(高裁判決)を拝見することができました。

 

 部長は、判決(控訴棄却なので、被告人には有罪の結果が維持された内容でした。)を単に読み上げるだけでなく、読み上げた後に、被告人に話しかけ、判決がどのような内容かを嚙み砕いて被告人にご説明されていました。がっつり、被告人と向き合っていました。

 

 私は、東京高裁で何十件も控訴審の判決を見ましたが、判決を読み終えるとそそくさと法廷を後にする裁判官が多い中、そのときの部長の判決を見て、やっぱり、一件一件に物凄く向き合っていらっしゃるのだなぁと思い、感動しました。

 

 法廷を拝見した後、ご挨拶に伺い、お話することができました。10年以上前でしたが、私のことを覚えていてくださり、当時は、私の起案(書面)を見て、(「良い意味で」だとおっしゃっていましたが、)「これが、理系の文章か。」と印象に残っていたそうです(どんな意味なんでしょう???)。

 

 刑事裁判修習の成績は、Aを頂きました。

 

 修習生時代に部長とお会いし、ご指導頂けたことも、弁護士になってから刑事弁護をやろうというきっかけとなりました。

 

 私は、国選の上告事件(最高裁)を結構担当していましたので、実は部長が大阪高裁でされた事件を上告審で担当したことがありました。

 

 判決の内容が(他の裁判長の判決と比べ)これでもかというくらい言葉多く具体的に判示されていました。ある意味では、徹底的に書いてあるので、これを覆すのは難しいなぁと思うと同時に、言葉多く具体的に判示されているので、反論は書きやすい判決でした。

 

検察修習

 

 検察修習は嫌いでした。

 

 私は特許庁で役人経験があったので、検察庁の役人の際たる感じを察知し、(「特許庁辞めたのに、またかよ。」と言う感じで、)非常に違和感がありました。

 

 修習生になって最初の修習が検察修習で、これが嫌だったんのであまり熱心に取り組まなかったのですが、後に、弁護修習や刑事裁判修習で、刑事弁護を志すようになったわけなので、そうであれば、(相手方となる)検察のこともよく見ておけばよかったと今は後悔しています。

 

最後に

 

 そうは言っても、私の事務所は専門が知的財産ですし、これから立場上どんどん忙しくなってしまうと、いずれは刑事事件も扱えなくなってしまうのではないかとも思っています。

 

 しかし、証人尋問など、知財の事件では経験値が得られない(ある意味で)弁護士本来の法廷技術を保持するためにも、たとえ年1件であっても、できる限り取り組みたいなぁと思っています。

 

 もっとも、国選で、あまりにも不合理な被疑者・被告人に会うと、もう刑事弁護は辞めようかと思うこともしばしばですが・・・。

 

 ちなみに、私、いわゆる人権派弁護士でも、特定の思想をもった弁護士でもありません。

 実際、それほど、被疑者・被告人に同情したりもしません。

 実は、死刑反対でもありません。

 

 (刑事事件全般で言えることですが、)圧倒的に不利な状況で、相手(検察や裁判所の判決)に逐一反論したり、様々に設けられた手続きを駆使して、有利な結果を導き出すよう一人で色々と考えて実行に移すことが、好きなだけです。

 

 気の弱い私ですが、年齢と経験とともに、ちょっと度胸もついてきますしね。

 

 

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