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拘置所と、勾留中の被告人と、コロナによる影響

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東京拘置所小菅駅のホームから)

 

東京拘置所での接見(面会)

 

東京での緊急事態宣言が解除されてから、ある被告人の接見(面会)のために、東京拘置所に行ってきました。東京拘置所に行くのは、ずいぶん久しぶりな感じがします。

 

東京拘置所は、「東拘」(とうこう)と略されたりします。東京拘置所にあまり馴染みのない方には、「田中角栄さんが入っていたところですよ。」と説明していたのですが、そろそろ、「ゴーンさんが入っていたところですよ。」に説明をかえた方がよさそうです。死刑執行も行われるところです。

 

東京拘置所は、小菅駅から歩いて5分ほどのところにあります。東武スカイツリーラインの駅ですが、都心から行く場合は、日比谷線が接続しています。私の事務所の近く(日比谷線銀座駅ないし日比谷駅)からだと、片道30分くらいでしょうか。北千住の次の駅です。

 

一般に、逮捕・勾留された後、起訴されてからしばらくの間は、各警察署の留置施設にいるのですが、その後、警察署から東京拘置所に移送されます。警察署から拘置所への移送のタイミングは、拘置所のキャパ等によって変わってきますが、だいたい、起訴後2週間くらいでしょうか

 

今回、東京拘置所の建物に到着すると、その入り口には、これまで見たこともない(確かオレンジ色の)巨大なテントが設けられていました。一般の面会者は、このテントで入る前に検温等が必要なようでした

 

しかし、弁護士(弁護人)は、テントに入る必要もなく、検温もなく、いつもどおり、入口から普通に入れました

弁護士も検温して良さそうですが、もし、弁護士に熱があって、弁護士が接見交通権を理由に被告人との接見を断固希望したときは、ちょっと難しい問題になります。

接見交通権とは、逮捕・勾留されている被疑者・被告人が、外部者と面会したり、物品を授受することができる権利です。特に、弁護人との間の接見交通権は、憲法で保障されているので、そう簡単には制限できません。

 

ちなみに、拘置所の場合は、面会時間の制限がありますが、警察署の場合は、弁護士は、24時間被疑者・被告人と面会可能です。弁護人を依頼するメリットはここにもあります。

 

東京拘置所の中では、面会者の「立ち位置」がマークで決められていたり、ソーシャルディスタンスのための対応がされてました。

 

面会者は、

 

「はい、ここ(「立ち位置」のマーク)に立って待って!」

 

とか言われていました。

 

弁護士の私は、いつもどおりの手続きを済ませて、いつもどおり面会室まで行けました。特に、いつもより時間がかかるということもありませんでした。

 

東京拘置所へ面会(接見)

 

今回、接見(面会)した被告人は、某地方の拘置所から移ってきたばかりの方でした。その方がおっしゃるには、某地方の拘置所とは違い、東京拘置所のコロナ対策により、全体的にピリピリして、非常に物々しいそうです。

 

「さすが東京は違うねぇ。」

 

とおっしゃっていました。 東京拘置所クラスターが発生してしまったら、大変ですものね。

 

ちなみに、関東の地方の拘置所から、東京拘置所へ来るのは、被告人が控訴した場合です。東京高裁で裁判がありますので、出席のため事前に移送されてきます。

 

その被告人は、東京拘置所に移ってきたばかりなので、しばらく独房ですが、いずれ雑居房に移されるので、不安だともおっしゃっていました。そうですよね。

 

拘置所に収容されている方からの手紙

 

全国的に緊急事態宣言が出ていた4月、5月は、東京拘置所や大阪拘置所にいる被告人から手紙が来ました。手紙には、コロナについて情報も少なく、検査もなく、衛生面からも大変不安だと。

 

報道によれば、東京拘置所も大阪拘置所も、関係者にコロナ感染者が出てましたものね。

 

コロナが蔓延しているという理由だけで、保釈が認められるわけでもなく、被告人の皆様は、精神的にも肉体的にも厳しい状況が続いています。

 

公判期日(裁判)の取消し

 

しかも、緊急事態宣言により、4月、5月の裁判(公判期日)は、ほとんど取り消されてしまいました。つまり、本当なら4月、5月に裁判が開かれるはずの事件が、緊急事態宣言のため、拘置所で身柄を拘束された状態で、いつ始まるかもわからない裁判が始まるのを待たなければならなかったのです。

 

最近になってやっと、7月以降に、裁判(公判期日)が指定され始めました。2か月以上遅れています。

 

期日の取消の際には、事前に、裁判所から弁護人のところへ電話がかかってきて、期日取消について意見を求められるのですが、私としては、

 

「いやぁ、身柄事件で(無駄に勾留が長引くのは、被告人にとって酷なので)、予定どおり、5月に期日を開いてください!」

 

と申し上げました。

1件だけは、予定どおり期日を開いてくれましたが、残りは、私の意見は聞き入れられず、裁判所は、裁量ですので、当然のように期日を取り消しました。うーん。

 

被告人の利益はもちろんですが、期日延期されて、万が一私がコロナに感染してしまったら大変だから、元気なうちに裁判を始めて欲しいというが正直なとこです。

 

しかも、裁判なんて、そんな密じゃないです。  

法廷では、裁判官は一段上に座ってるし、裁判官・書記官と弁護士と検察官の距離も、もともと2メートルくらい離れているし、マスクも付けるし、・・・

 

マスク着用を拒否した弁護人

 

おっと、マスクを付けない弁護人がニュースになってましたね。なんか、弁護人に対して批判的な印象で報じられている記事もありました。でも、あれは、弁護人が事前に裁判所にマスクを着用しない旨、伝えていたそうです。

 

裁判員に訴えかける際や、証人尋問の際は、やはり、弁護人が被告人のためにベストを尽くすという意味においては、お互いにマスクを着用した状態は、好ましくないことは確かです

 

でも、もし、弁護士が(無症状で)コロナに感染していて、裁判員にうつしてしまうかもしれないし。

 

そこで、ドクター中松氏の発明した「スーパーM.E.N」でしょうか。裁判所も、「マスク無し」よりは、認めてくれそうですね。

 

dr.nakamats.com

 

私は、コロナ渦の中、裁判員裁判も、(重要な)証人尋問もなかったので、普通にマスクして裁判に出席していました。

 

ちなみに、民事裁判は、これまたほとんどの期日が取り消され、一件だけ裁判所と原告

被告との間の電話会議書面による準備手続)で対応しました。 

 

裁判も、早く平常に戻って欲しいです。