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刑事事件-ありふれた傷害事件

事案

 ※事件の内容は、抽象的に、かつ、若干内容を変更して、記述しています。

 

 (酔っていた)被疑者が、店舗及びその周辺で、ちょっとしたトラブルが原因で、(知り合いではない)被害者に対し、暴行し、被害者が全治10日程度の傷害を負った事案。

 被疑者は、現行犯逮捕。その後、勾留(延長され20日)。

 なお、被疑者には前科・前歴なし。

 

事件の流れ

 

 示談すれば、起訴猶予(不起訴)の事案と考え、示談するのが相当と考えました。

 

 被疑者と接見すると、被疑事実の細かい点について、否認(被害者の認識との食い違い)あり。

 その時点では、じゃあ、争いましょうか、となりました。

 

 その後、被疑者は、警察から防犯カメラを見せられ(自己の暴行の様子がしっかり映っていたらしい)、自分がやったことを認識し、被疑事実を認め、自白に転じました。

 ※被疑者は、はやく釈放されたいが故に、簡単に認めてしまうこともあるので、

  注意して、暴行の態様等が間違いないか一つ一つ確認しました。

 

 そうすると、示談をすべきということになりますが、検事に確認したところ、示談の有無に関わらず、取調べの関係で、勾留延長はすると言われました。んー。

 

 いずれにしても、示談をすすめようとしたところ、被疑者は、20万円程度なら用意できるということでした。

 

 そこで、検事から被害者の連絡先を聞き、さっそく連絡。

 すると、被害者は、示談には応じるが、示談金は100万円と言われました。

 

 事案からして、見通しとしては、示談できなくても、自白事件なので、「略式罰金20~30万円かな。」と思いました。ここが甘かったです。

 

 10日の満期の2日前に、検事宛てに意見書を送りました。

 

 ・被疑者、被疑事実を認めている。

 ・被疑者、反省し、二度と犯罪をしないと約束している。

 ・被疑者は、被疑者や店舗には近づかないと誓約している。

 ・示談金は、20万円であれば払える用意がある。

 ・しかし、被害者が100万円を要求しているので、示談ができなさそう。

 

 その後、検事から連絡がありました。

 検事が、被害者に電話し、示談金としては100万円は多きすぎるので、減額できないか検討してほしいと話してくれたようです。良い検事ですね。

 

 それを受けて、その後、再び、被害者に電話したところ、示談金は70万円に減額してくれました。

 

 ただ、被疑者は70万円は支払えないし、私としても、事案や傷害の程度を考えると、やはり20~30万円くらいが妥当ではないかと思いました。 

 

 それで、示談はちょっと難しいかなと思いまいた。

 

 検事との意見交換の中で、

 ①示談できれば不起訴、

 ②示談できなければ20~30万円の略式罰金、

という共通認識があると(少なくとも私は)理解していた。ここも私が甘かった。

 

 そこで、被疑者と話し合い、まぁ、示談できなくても、罰金ちゃんと払えるお金があれば、労役場留置にもならないし、罰金であれば、20日満期で釈放されるので、まぁよいかなと被疑者は思ったようで、私もそれで決着と思いました。

 

しかし・・・

 

 勾留18日目(満期の2日前で、検察官が処分を決める日)の朝に、突然、

 

 「今日の夕方までに示談できなければ、

  公判請求(起訴)する。」

 

と言われました・・・。

 

 方針変更は、検事が決裁官(東京でいえば副部長)とのやりとりの結果だと思われますが、その事情については、検事から具体的教えてもらいましたが、ここでは伏せておきたいと思います。ただし、私はその事情を聞いても、納得できませんでしたが。

 

 一方で、検事が、また被害者に連絡をしてくれ、「示談金としては、30万円程度が妥当ではないか。」ということを言ってくれたようです。この点は良い検事ですね。

 

18日目の動き

 

 ① 検事の電話の後、すぐに、被疑者の知人に電話し、

  すぐに示談金30万円を用意して欲しいと頼む。

  ※当初から、私は、被疑者の知人と電話で何度もやりとりしていたので、

   スムーズに行きました。この点はラッキー。

 

 ② また、被害者に電話し、30万円で示談してほしいと頼み、了解を得ました。

  (これは、検事のおかげです。)

 

 ③ すぐに被疑者と接見。

   被疑者に、被害者と30万円で示談をしてよいか確認し、了解を得ました。

 

 ④ すぐに移動し、被疑者の知り合いと、待ち合わせて、30万円を受け取り。

 

 ⑤ また、すぐに事務所に移動し、示談書を起案し、領収書を準備。

 

 ⑥ すぐに移動し、被疑者に会いにいき、無事示談成立。

   その場で、検事に電話をかけ、被害者にも検事と話してもらい、

   示談ができたことを確認してもらった。

 

 ⑦ すぐに事務所に戻り、示談書と領収書を検事にFAXして終了。

 

 無事、不起訴となりました。やれやれ。

 

 東京23区を移動しまくった感じでした。

 

最後に

 

 国選事件なので、示談の報酬が(丸一日潰しても)わずか3万円であるという寂しい事件であること、また、実は、被疑者も被害者も外国人で、かつ、言語が異なる、という恐ろしく大変な事件でした。

 

 まぁ、でも、事案としては、ありふれた事件でした。

 

 やれやれ。見通しの甘さなど、色々反省することも多い事件でした。

 

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