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刑事事件-酒気帯び運転(道路交通法違反事件)

 

はじめに

 

 最近は、自動車事故に関する刑事事件がよく話題になっていますね。

 他の同種事案に比べて軽すぎるのではないか等、SNS上で話題になっています。

 

 今回は、私が、過去に担当した私選の道路交通法違反事件(酒気帯び運転)について紹介します。

  知り合いの知り合いの紹介で受任しました。

 

事案

 

 平成25年の事件です。ちょうど、自動車運転の刑罰が厳しくなってきたころです。

 若い女性で、資格を必要とする仕事に就いており、いわゆる酒気帯び運転(0.15ミリグラム以上のアルコールを保有する状態での運転)で、他人の家の庭に突っ込んでしまい、逮捕・勾留され、その後、起訴されました。

 酒気帯び運転は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 お仕事の関係でかなり悩んでいたらしく、お酒を飲んでしまったが、ある用事を思い出し、その状態で運転をしてしまいました。

 

逮捕翌日に受任し、弁護活動

 

 逮捕された翌日に依頼を受けました。ちなみに、関東ですが、東京の事件ではありません。

 

 依頼を受けた当日に、直ちに、庭の住人と示談をしました。実質的な被害はなかったのですが、3万円をお支払い、宥恕文言の付きの示談書をとりかわしました。

 

 その後、本人の反省文(二度とお酒を飲まない誓約)、両親の嘆願書、上司の嘆願書など、弁護人ができるあらゆることをし、関係者が協力的であったこともあり、極めてスピーディーに証拠を集め、自分の中で、ほぼ100点の出来でした。

 

 しかしながら、残念ながら勾留され、かつ、起訴されました。

 この時点で、若かりし頃の私、検事に対し、相当にイラついていました。今でもよく覚えています。

 起訴前に、検事から、この種の事案では一律で起訴する運用基準になっている(ここは、いかにも役人っぽいですね。)と言われ、(元特許審査官という役人だった私は)「だったら、その運用基準を開示してください!」とまで言いました(笑)。

 

 私の専門である特許出願の分野だと、特許審査基準があって(私はもと審査官で役人)、これはちゃんと公開されていますよね。

 

裁判の結果

 

 両親に被告人の監督者として出廷してもらい、証言をしてもらいました。

 被告人に前科・前歴はありませんでした

 公判での弁護活動も、協力者のおかげでほぼ満点でした。

 

 検察官の求刑7月に対し、判決は懲役7年執行猶予3年でした。

 執行猶予が付きましたので、刑務所に行かずには済みました。

 

 しかし、資格関係の仕事のため、(欠格事由ではないのですが)資格を取り消される可能性がでてしまいました

 

事件の量刑等について

 

 私としては、資格関係の仕事についている方なので、起訴を免れたかったのですが、捜査段階でできる最大限のことをやり、示談を含めてすべてうまく行ったのですが、起訴されました。

 

 まだ、弁護士になって何年も経っていなかったので、何より検事に対し、非常に腹立たしく感じたのを覚えています。

 

 弁論要旨(裁判での弁護人の主張)において、通常主張すべき、示談や、身元引受人の存在や、上司の嘆願、本人の反省等に加え、

 当時の私は、どうしても言わずには我慢できなかったのか、

 

 同じ東京高裁の管轄に事案で、当時話題となった有名人の自動車運転過失致死罪(不注意により人を轢いてしまい、亡くなってしまった事件)で罰金100万円で終わった事件を持ち出して公平性を問うとともに、

 

 「弁護人の被疑者段階において、略式起訴による終局処分(※要するに略式罰金)をめざして全力で弁護をしたものの、残念ながら、検事は、『〇〇検察庁の基準によれば、原則として、本件は公判請求の事案である。』と言って譲らず(なお、当職は、その運用基準について開示を求めたが、応じなかった。)、検察官による勾留延長請求が却下され、被告人(※当時は被疑者)の身柄が解放された後、被告人の結婚式の直後に、被告人を呼び出した上で、略式起訴(罰金)ではあく、敢えて公判請求(起訴処分)をした。」

 

と述べて、何と、公訴権濫用論(検察官による起訴自体が、検察官の権限の濫用であり、違法である旨)の主張までしていました。公訴権濫用論の主張は、もしかしたら、最初で最後かもしれません・・・。

 

 私、昔は、かなりイケイケで過激でしたね。

 

最後に

 

 刑事事件の事案は、様々で、同じような事案でも全く同じものはありません。

 

 同じような事案で、ある人は逮捕されず、別の人は逮捕され、また、ある人は略式罰金で終わり、別の人は起訴(裁判)されて懲役となる。

 

 弁護人としては、当該事件で、被疑者・被告人に有利となるあらゆる証拠を集めるのが大事で、他の事件と比べて、どうこうというのはそれほどは主張しません。(が、どうしてもというときは、今回紹介した件のように言ってしまいます・・・。)

 本来であれば、ニュースで話題になった事件(自動車事故関連の事件とは言え、過失の事件であり、同種の事件とまでは言えません。) よりも、過去の裁判例を調査し、対比して、主張するのがより説得力がありますね。

 もっとも、時代によって刑罰が重くなったりもします。最近だと、自動車関連の刑事事件や性犯罪、詐欺罪などです。

 この当時、自動車関連の刑事事件は、ある悲惨な事件が報道されたのをきっかけに、特に重くなっていた頃でした。

 

 今も、自動車事故関連の刑事事件で、その意見が正しいか否かは別として、(そもそも逮捕されていないことについて)公平性を問う意見がSNSで多数を占めています。

 

 繰り返しになりますが、事件というのは、1つとして同じ事件はありません。

 しかし、やはり、公平性という観点は、一般の人にとっても、私のように専門であっても、気になるところです。

 

 裁判員裁判がはじまって大分経ちますが、国民の納得感の得られる司法が実現してもらいたいところです。 

 

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