はじめに
自分が正義だと思うことを、他人に要求してしまったことで、犯罪被害者になってしまったり、加害者(被疑者)となって逮捕されてしまう、という事件は結構多いです。
今回は、そのようなことで、刑事事件に関わってしまわないようにと思い、記事にしました。
傷害事件
上記の事件は、電車の車両内で、ある男性が他の男性に「マスクを付けるときは鼻まで覆え」などと注意し、互いに口論になり、駅のホーム上でもみ合いになった末、他の男性が持っていたスプレーをある男に吹きかけたという傷害事件だそうです。
この場合、注意された方が加害者(被疑者)となり(まだ逮捕されていないようです)、注意した方が被害者となってしまいました。
自分の正義を振りかざすと・・・
さて、今回の事件では、被害者は、自分の正義である「マスクを付けるときは鼻まで覆うべき」ということを、他人に要求したことにより、被害者になってしまいました。
あるいは、逆に、注意した方が口論の末、カッとなって、手を出してしまったら、暴行・傷害の被疑者(加害者)になっていたかもしません。
さて、刑事事件に巻き込まれないためには、外で他人に正義を振りかざしてはいけません。
「マスクを付けるときは鼻まで覆うべき」というのは、コロナ対策としては、科学的に正しいことなのかもしれません(科学的に必ずしもそうではない可能性もあります。)
しかし、鼻を覆っていないことは、違法なことではありませんので、他人に要求してはいけません。違法ではないことまで、他人に要求してはいけません。
この場合は、もし、自分がその人からコロナをうつされてしまうという懸念を抱いたのであればその人から離れればよいだけですし、周辺の人々のために自分が率先して行動をとる必要もありません。
もっと言えば、他人が、たとえ違法なことをしていたとしても、注意してはいけません。違法なことをしている人は、気が高ぶっていたり、危険なもの(たとえばナイフなど)を所持している場合も多く、被害者になる危険性はより高いです。
結局のところ、自らの正義を振りかざして、違法ではないことを注意するのは、自分の正義を押し付けることになるとともに、自らを危険にさらしてしまいますし、違法なことについても、警察に通報すれば足り、自ら危険性の高い違法行為者に直接注意してはいけません。
正義を振りかざされたら・・・
逆に、「マスクをしろ!」とか、「マスクを鼻まで覆え!」などと、他人から注意された場合にも、決して争ってはいけません。
「マスクを鼻まで覆わなければならないなんて法律は存在しないんだ!」と争ってしまうと、口論となり、先の事件と同じようになってしまいます。
その場をそっと離れましょう。
決して、注意をしてきた他人と言い争ってはいけません。口論というのは、お互いにどんどん盛り上がってしまい、後に引けず、一触即発でどちらかが手を出してしまうことが多いです。第三者が仲介に入ってきてくれれば、暴力沙汰にならないことはありますが、それを期待しては行けません。
特に、お酒を飲んだときや、何か気に入らないことがあって不機嫌なときなどは、他人と関わらないように注意しましょう。
最後に
「正しいことは、正しいと言おう。間違ったことは、間違ったと言おう。」というのは、教育としては正しいのかもしれません。
しかし、外の世界で、素性を知らない他人に対して、自分の正義(必ずしも正しいとは限りません)を要求したり、あるいは、違法行為でさえ注意したりしてはいけません。
犯罪被害者か、あるいは、加害者(被疑者)になってしまう可能性が高いです。
今は、もう昔ではありませんし、価値観は多様化していますし、特に最近はコロナやそれによる不況で、みんな多かれ少なかれストレスを抱いており、ピリピリしています。
他人の行為が違法行為でなければ、それは我慢し、あるいは、その場から離れ、他人の行為が違法行為であれば、警察に通報して終わりにしましょう。
注意された場合は、何も言わずに、その場を離れましょう。
刑事事件に巻き込まれると、加害者(被疑者)となっても被害者となっても、あなただけでなく、家族も不幸になります。
正義を振りかざし、あるいは、正義を振りかざされた結果、刑事事件となってしまう場合を弁護人として結構多く見てきましたので、是非、ご留意頂ければと思います。