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特許実務-企業と大学との共同研究契約(その2)

はじめに

  

 前回は、企業と大学との共同研究契約について、重要なポイントをご説明しました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 少し、書き足りなかったので、補足したいと思います。

 

研究成果の公表

 

 大学にとっては研究成果を公表することは実績であり、いわば使命ですが、一方で、共同研究の成果について特許出願などをする場合には、(新規性喪失の例外があるにせよ)公表を控えなければなりません。

 

 公表の手順・時期等については、共同研究契約において当然に規定すべきものですが、肝心の大学の先生がそのことを認識されていない場合も、未だに結構多いので、大学の先生には、事前に直接お話をしておく必要があります。

 

 公表の問題に限らず、大学の先生の中には、

 

 論文>特許

 

と考えている先生は、未だに多いですからね。

 

 私が学生の頃などは、大学の先生の中には、特許をとることは、金儲け主義ではしたない行為だと考えている先生もいらっしゃいました。

 

 今は、大学(特に国立大学)は予算が厳しくなってきているので、そうも言っていられず、研究成果の収益化を図る必要があり、大学としてはその方向で進んでいますが、一方で、大学の先生個人としてはそのような認識が希薄で、特許出願前に研究成果を論文等で公表してしまうことは原則としてダメということさえも認識していなことも多いので注意しましょう。

 

特別試験研究費の税額控除制度

 

 企業は、大学との共同研究において、研究費が高額となった場合は、特別試験研究費の税額控除制度を使うことができる場合があります。

 

www.meti.go.jp

 

 税額控除を受けるためには、共同研究契約書において、盛り込む必要のある事項があるので、契約書を交わす際には、大学側の雛形を加筆・修正する必要があります。

 

 特に、費用の分担及びその明細や、定期的な進捗状況に関する報告の内容及び方法(少なくとも年1回以上の定期的な報告)などは、必ずしも大学の雛形には十分には記載されていない場合も多いので、企業側において加筆・修正する必要があります。

 

最後に

 

 各大学、共同研究契約における知的財産権の帰属や研究成果の取扱い等について、契約の知識や交渉力の差が大きいように思われます。

 

 東大や慶応をはじめとした大手の大学は非常にしっかりしていると思いますが、必ずしもそうではない大学も結構見られます。

 

 大学としては、良い研究をするだけでなく、成果の利用による収益化のために、共同研究開発をはじめとした契約の知識や、企業との交渉力を向上させる必要がありそうです。

 

 

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