はじめに
以前の記事で、特殊詐欺(オレオレ詐欺、振り込め詐欺、還付金詐欺など)は、受け子などの末端者であっても、そして、前科・前歴がなくても、皆さんが思っている以上に、ものすごく重い罪になってしまう、ということを説明しました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
今回は、私が以前に担当した特殊詐欺の事件について、紹介したいと思います。
事案
被疑者は若い男性で、共犯者とともに、還付金が受け取れると被害者を騙して、お金を振り込ませたという、特殊詐欺の一種である還付金詐欺の事件で、電子計算機使用詐欺罪に問われています。
オレオレ詐欺とは違って、還付金を受けるためであって、被害者には詐欺グループにお金を振り込むという意思(交付意思)がないので、通常の詐欺罪ではなく、虚偽の情報を銀行のコンピュータ(電子計算機)に入力させたということで、電子計算機使用詐欺罪が問題となります。
被疑者は、被害者が特殊詐欺グループの管理する銀行口座に振り込んだお金を、送金したり、引き出したりする役割を果たしていました。
被疑者は、被害者との直接の接触はなく、素性も知らない上(共犯者)からの指示で、送金・引き出しを繰り返していたので、自分が一体何件の罪に関わり、被害者が何人いるのかもわかっていません。
ですので、被疑者は、被疑事実をみても、これに自分が関与したのかさえもわかりません。
仮に、自分の行為が、被疑事実に関わっていたのだとしても、被害額が大きすぎて、示談もできません。被疑者のご両親に相談しましたが、金額的に無理でした。
勾留との関係で、今回、更にひどかったのは、20日の満期まで勾留された後、別の被害者の詐欺に関わったとして、2件目で再逮捕されました。
そうすると、また初めから、逮捕・勾留を含めて、最大23日間、警察に留め置かれることになります。
1件目は、(処分保留釈放という形ですが、)2件目と一緒に、23日後に起訴されることになると思われます。
まだ、更にもう1件あるかもしれません。
そのもう1件で再逮捕か、あるは、起訴された後で追起訴(もう1件を乗っけてくる)可能性もあります。
現時点で起訴されておらず、2件目で被疑者勾留の状態にありますので、保釈請求もできません。
裁判も含めると、相当の長期の勾留になってしまい、被疑者にとって大変な状態です。
以前の記事でも書きましたが、特殊詐欺の場合は、前科前歴がなくて、末端関与者であっても、起訴され、3年前後の実刑になることが予想されます。
最後に
ということで、(たとえ、コロナで職を失ったり、仕事がなかったりしても、)特殊詐欺だけには絶対に関与しないようにしましょう。
特殊詐欺の被害を減らすためには、
①潜在的な被害者に注意喚起するだけではなく(これは既に徹底されています)、
②関与した人が、滅茶苦茶に重い罪になることも、もっと警察が啓蒙すべきですね。
刑事弁護人としても、特殊詐欺の事案は、長期勾留のために長期間担当することになり、また、(金額的に示談も難しく、結果として)被告人がすごく重い罪になってしまう場合が多いので、取り扱うのが大変辛いです。