はじめに
今回は、上告棄却決定(刑事事件が最高裁まで行ったが、無罪や量刑不当の主張が認められなかった場合)が出てしまった後の、不服申立ての手段である異議申立てについて紹介したいと思います。
私が、刑事事件の上告審を積極的に担当していることについては、以前記事にしました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
異議申立て
裁判制度は、第一審(簡易裁判所or地方裁判所)、控訴審(高等裁判所)、上告審(最高裁判所)の三審制で、刑事事件も同様です。
しかし、上告棄却決定については、更に、異議申立てが可能です。
もっとも、最高裁の同じ裁判合議体が判断しますので、上告棄却決定が覆る可能性は、残念ながら、ほぼありません。
それでも、なお、なぜ異議申立てをするかというと、
① 執行猶予付き判決であった前刑の執行猶予を満了させるために確定を遅らせるため
(前刑の執行猶予期間が満了する前に、本件が確定してしまうと、前刑の執行猶予が取り消され、前刑と今回の刑とを合算した年数の懲役に服さなければならなくなってしまいます。一方で、異議申立てなどで本件の確定前を遅らせ、確定前に前刑の執行猶予期間が満了してしまえば、前刑の罪による懲役には服す必要がなくなります。)
② 事件の確定を遅らせ、刑務所に行くのを遅らせるため
(在宅事件などで、刑務所に行く前に、なるべく頑張って仕事してお金を稼ぎ、刑務所に行く前に家族の生活費を残すためなど。)
などの場合に、(本来的な理由ではありませんが、)利用されます。
期間制限
異議申立ての申立て期間は、非常に短く、被告人に送達された翌日から数えて3日以内必着です。
たとえば、大阪にいる被告人の上告事件の場合、東京にいる私の方が先に上告棄却決定を受けることが多いのですが、大阪の被告人が上告棄却決定を受領した翌日から3日以内に、異議申立書を提出(必着)しなければなりません。
たとえば、金曜日に上告棄却決定が被告人のところに到着すると、月曜日には異議申立書を提出(必着)しなければならないので、〆切がタイトで大変です。
最近担当事件で、私は、万が一にも期限を徒過してしまうのが怖いので、念のため、上告棄却決定を自分が受領した日のうちに、異議申立書を、最高裁の夜間受付に提出しに行きました(予め準備してありました。)。
夜間の書面提出に関しては、
① まず、最高裁の入口で「入構票」なるものをもらい、入構時間を記入し、
② 電話ボックスが大きくなったような密閉空間で(1人用)、提出書類を備え付けの封筒に入れて密閉し、入構票の写しを封筒に糊で張り付けて、密閉空間内にあるボックスに提出し、
③ その後、入構票に退構時間を記入し、警備員の署名・押印をした入構票の写しを、控えとして受け取ります。
そして、念のため、翌日、最高裁の担当書記官に電話し、異議申立書の受領を確認しました。
異議申立書を提出してから、申立ての棄却決定が出るまでは、だいたい約2週間くらいです。
つまり、2週間、本件が確定するのを遅らせることができます。
最後に
上告棄却後の異議申立てについては、実はこの制度自体を知らない弁護士も多いのですが、刑事事件の確定や刑に服することを遅らせることができるという理由で、被告人からの依頼により、ときどき利用します。
しかし、申立て期間が3日間と大変短いので、注意が必要です。