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特許実務 - 進歩性の基本的考え方(19)【示唆と阻害要因】

はじめに

 

 前回(下記記事)に続き、進歩性の基本的考え方(19)です。

 テーマは、示唆阻害要因です。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

示唆

 

f:id:masakazu_kobayashi:20220210220237j:plain

示唆

 

 「示唆」というのは、ある引用発明の内容中に、他の引用発明を適用することに

関する記述です。

 

 本件発明の構成要件がA+B+C+Dであるとして、

 たとえば、スライドの例1にあるように、

  

 公知文献1に、構成A+B+Cからなる公知発明1が開示されており、かつ、

当該公知発明1が高温で用いられると記載されている一方、

 

 公知文献2には、構成C高温で安定するため、好ましくはと共に用いられる

記載されているとすると(公知発明2は、構成C+Dかなる発明)、

 

 公知文献1には、公知発明1に公知発明2を組み合わせる示唆があると言える

かもしれません。

 

 この場合、高温という環境条件が、いわば、公知発明1と公知発明2を結び付ける

「糊」として役割を果たしており、これが示唆に当たります。

 

 この「糊」すなわち示唆としては、その他には、スライドの例2で挙げられている

用途も考えられるでしょう。

 

 結局のところ、示唆というのは、技術分野、課題、機能・作用以外の、あれば嬉しい「糊」の働きをするもの、と言えるかもしれません。

 

 また、ある意味では、技術分野が関連していることや、課題や機能・作用が

共通していることも、「示唆がある」という範疇に含まれるようにも思われ、

その意味で、示唆というのは、動機付けの総括的なもの、あるいは、

補充的(その他的)なものといえるかもしれません。

 

阻害要因

 

概念

 

 阻害要因は、マイナスに働く動機付け要素であり、これがあると、組合せが認められない方向の要素です。

 

 もっとも、阻害要因というのも、他の動機付け要素の関連性・共通性の程度(具体的なレベルか抽象的なレベルか。下記記事参照。)と同様、程度問題かなと思います。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 

 つまり、阻害要因も、決定的に組合せを不可にするものから、それほどではないもの(他のプラスの動機付け要素が強ければ、結果として組合せられると評価されるもの)まであり、結局のところ、他の要素との総合考慮で組合せの可否が決まるような要素だと思っています(あくまで私見)。

 

 結局、上記記事のイコライザーの摘み(下記スライド)が全体として右に行くほど、進歩性が否定されやすいということになりそうです。

 

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進歩性を否定するロジックの強さ

 

周知技術との関連

 

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阻害要因-周知技術等なら組合せに際し阻害要因はないか?

 

 周知技術等(周知技術、慣用技術、技術常識)は、その分野において一般的に知られていたり、慣用されていたりする技術なので、他の公知文献とは一般的に組合せがし易いはずです。

 

 しかし、周知技術等であれば、いかなる公知発明とも組合せ可能である(免罪符となる)わけではありません。

 

 公知文献自体が、周知技術等を排除するような構成であれば、阻害要因ありで、組みわせ不可ということもありそうです。

 

 周知技術等を用いた組合せについては、下記記事でも書きました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

最後に

 

 これで一通り、進歩性の基本的考え方(1)~(20)のスライド説明と、

ケーススタディ(1)~(5)の記事を書き終えました。

 

 何となく、(私見で、独りよがりですが、)頭が整理できました。

 一記事30分を目標に記事を作成し続けてきましたので、内容の誤りや誤記も

多いかと思います。

 ご批判ご意見あれば、お寄せ下さい。

 

 

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