はじめに
進歩性の基本的考え方(18)です。
「20回シリーズ」+「ケーススタディ1~5」の記事を書く予定で、
ほぼ完成しているので、まもなくこの進歩性シリーズも、「一応」終わります。
ご興味のある方は、進歩性のタブで各記事をお読みください。
ちなみに、前回の記事(公然実施品に関する進歩性判断の問題)は、下記です。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
組合せ類型とロジックの強さ
パターン
文献(に開示された発明)同士の組み合わせについては、様々なパターンが考えられます。
典型的には、スライドの(3)主引用発明+副引用発明ですが、場合によっては、スライドの(1-B)同一文献の中の実施例同士を組み合わせようとする場合もあるでしょうし、(2)主引用発明と周知技術を組み合わせようとする場合も多いでしょう。
もちろん、引用発明(公知発明)の組合せは、2つに限らず、3つ、4つでも、進歩性を否定できる場合もあるでしょう。
ちなみに、複数の公知文献(公知発明)の組合せについては、「容易の容易は容易でない」という格言(笑)ないし戒め(笑)があり、私も審査官のときに、何か、有難いお言葉のように習いましたが、これについては、将来的に、記事を一つ書けそうなので、また別の機会に。
複数の公知文献(公知発明)の組合せに関連する記事として、下記進歩性の基本的考え方(3)の「論より証拠」もご参照ください。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
パターン(1-B)同じ文献の実施例同士の組み合わせ
この(1-B)同じ文献の実施例同士の組合せは、下手をすると、基本的なパターン(3)主引用発明+副引用発明よりも、組合せが難しい場合がありそうです。
というのは、(1-A)1つの実施例で新規性を否定できる場合とは異なり、ずばりの実施例がなく、「敢えて」異なる実施例同士の「良いとこどり」をするからです。
「ズバリの実施例が書いていないってことは、この文献からは、
当業者は、本件発明を想定していないんだから、容易想到って言えないん
じゃないの?
むしろ、ズバリの実施例が書いていないってことは、
本件発明を容易想到とできない阻害要因さえあるんじゃないの?」
っていうのが、同じ文献内の実施例同士の組合せが難しいと感じる問題意識でしょうか。
もちろん、(紙面の関係で、格調高く言えば、先願主義との関係で)たまたま
実施例に開示されていないだけで、複数の実施例同士を組み合わせる場合が、
(進歩性の論理として)、無理なく導けるのであれば、進歩性否定は可能でしょう。
結局、ケースバイケースですね。
パターン(2)主引用発明+周知技術の組み合わせ
周知技術を、発明の構成を埋め合わせるために使う場合です。
周知技術が用いられるパターンについては、下記記事をご参照ください。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
周知技術(慣用技術もほぼ同じ概念)は、その技術分野において良く知られた技術(よく用いられる技術)なので、一般的には、様々な(主)引用発明との組合せがし易い場合が多いでしょう。
しかしながら、周知技術であるからといって、オールマイティに全ての(主)引用発明に組み合わせられるとは限りません。
たとえば、(主)引用発明が極めて特殊なものであれば、(その技術分野ではよく用いられているであろう)周知技術の組み合わせを阻害するもの(阻害要因がある)かもしれませんので。
ですので、実質的には、パターン(3)主引用発明+副引用発明と検討すべきこと(論理付けの検討)が変わらない場合もあるかもしれません。
組合せに行き詰まったら・・・
特許クリアランス、つまり、他社特許対応のために、先行技術文献調査をし、進歩性を否定できそうな文献をとっかえひっかえして、組合せなどを検討するわけですが、その際のポイントを上記スライドでご説明しようと思います。
・・・
最後に
と思ったら、結構な文字数になってしまったので、また、次回。