はじめに
ブログを再開しましたが、知財関係の記事としては、数値限定発明・パラメータ発明について、連載記事を始めてみたいと思います。
これまでは、「進歩性」という、おどろおどろしいテーマで記事を書いていました。しかし、本文は15記事で、ケーススタディは3記事で止まってしまっていましたね。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
進歩性についても、気が向いたら、また続きを書こうと思います。
あと、もしかしたら、(ちょっと分かりずらいと言われる)サポート要件についても、同時並行で記事にするかもしれません。
ご注意
記事の内容に基づいた結果について、私は、一切の責任を持ちません。
しかし、明らかに間違っていたら、ご指摘ください。こっそり訂正します。
数値限定発明やパラメータ発明をめぐる紛争に巻き込まれてしまったら、最寄の「実績のある」特許弁護士・弁理士にご相談ください。
なお、私は、某著名弁護士と同様、1件1億円で受任します(嘘)。タイムチャージは、20万円です(これも嘘)。
記事の内容は、事務所の意見を代表するものではありません。無名な弁護士・弁理士の、全くもって個人的な経験に基づく見解に過ぎません。ご了承ください。
あと、私は昔は審査官だったのですが、機械分野の審査官でした(エンジンなどの動力機械)。
ご存じの方も多いかと思いますが、機械の審査官と化学の審査官では、(考え方が違い過ぎて)会話が嚙み合わない場合が結構あります。
特許弁護士になって、化学・薬学分野の特許発明も扱うようになり、やや中立になっただろうとは思っていますが、特に、化学の方から見たら、「ちょっと違うなぁ」というお考えもあるかもしれません。そのときは、是非ご指摘ください。
今だに、昔の感覚で、「数値限定なんて、ぜんぶ、設計事項だろ!」と心の奥底で思ってしまう自分がいます(笑)。
今は、「数値限定は、進歩性の有無を決することの多い発明特定事項である。」と念ずるようにしています。実際の裁判では、そうですしね。
目次
以下のメニューで、数値限定発明やパラメータ発明のトピックについて書きたいと思います。
数値限定発明
まずは、数値限定発明からです。
数値限定発明の定義
数値限定発明とは?
数値限定発明の定義は、どこからともなく、上のスライドにある定義がよく登場します。
発明を特定するための事項を、数値範囲により数量的に表現した発明。
特に、注意すべき点はありません。
数値とは?
数値が何を示すか様々です。
ここに挙げたように、組成、寸法、温度、強度、硬さ、圧力、粘土、pHなど、いくらでもあります。
あと、同じ、「硬さ」を示すものとしても、ビッカース硬さやら、何やら、いろいろありますので、キリがありません。
「一般には、当該技術分野で一般的に用いられるもの」という限定を付けましたが、何というか、当該技術分野では、みたこともない「○△値」みたいなものは、数値限定発明というよりも、あらたに規定したパラメータのようなものですので、パラメータと区別するべく、限定しました。
具体例
数値限定発明の規定は、たとえば、感じです。
「・・・平均粒子径が0.1μm以上0.8μm以下である・・・」
余談ですが、この(数値限定の対象である)「平均粒子径」というのが曲者だったりします。これからの記事で、頻繁に登場するでしょう。
数値限定によるメリット
数値限定を、発明特定事項として用いるメリットとしては、
① 構造等で発明を特定することが難しい場合でも、その技術的事項を、
数値限定により特定できる場合がある。
物質の組成なんかはそうでしょうね。
逆に、従来は、構造により特定されており、数値による特定が難しかったものの、
近時の測定技術・解析技術の向上により、新たに物理的・化学的側面が見いだされた
場合には、数値限定発明が発掘され得ます(これは、次回の前バラし)。
もう一つのメリットですが、
② 数値には、言葉のような曖昧さがないので、理想的には侵害立証が容易である
(が、現実には・・・)。
と一応書いてみました。
理屈(理想)としてはそうなのですが、実際には、数値の範囲がどこまでかやら、
もっとやっかいな数値の示す対象が何かなどを巡って、紛争で争われます。
数値限定は、むしろ、紛争の種かもしれません(笑)。
これから、嫌というほど登場します(笑)。
最後に
今回の記事は、ほぼ中身のないものになってしまいましたが、次回(数値限定発明の発掘)からは、本格的な内容に入りたいと思っています。