はじめに
今回は、死刑制度についてです。ちょっとセンシティブな話題ではありますが、一弁護士がどう考えているかを述べたいと思います。
最初に申し上げますが、私は死刑制度については大変不勉強です。死刑制度がない国があることや、国内でも様々な議論自体があること自体は知っていますが、その内容は詳しくは知りません。
普段は、ただの特許実務をしているだけですからね。刑事弁護でも死刑が問題になるような事件は扱っていません。
下記記事で、京都の弁護士さんが、日弁連(日本弁護士連合会)の死刑廃止決議について、無効を求めた訴訟のニュースがありました。
普通の方から見ると、「何、この訴訟?」って感じでしょうか。
弁護士会と死刑制度廃止決議
まず、弁護士って、日本弁護士連合会(日弁連)とどこかの地方の弁護士会(私の場合は、第二東京弁護士会)に必ず所属しなければなりません。強制加入ってやつです。
確か、お医者さんとの関係で、医師会は強制ではなく、任意加入だったかと思います。
ですので、嫌でも、弁護士たる以上、日弁連とどこかの地方の弁護s会(たとえば私の場合、第二東京弁護士会ですが)に所属しなければなりません。
なお、会費も結構高いのです。
それを前提に、日弁連や様々な地方の弁護士会が、死刑制度反対の決議をしているわけです。
人権を守る弁護士としては、人権侵害の際たるものである死刑、他国の中には廃止の動きがある、死刑の執行の仕方が残虐であるなど、人権規約や憲法を持ち出して、死刑制度は廃止すべきだと言ったところでしょうか。
死刑制度廃止論者の正確な立論は、正直なところ知りません。
問題点
問題は、この京都の弁護士さんが訴えまで提起しているように、弁護士にとって強制加入団体である日弁連が「死刑制度反対」の決議をしているところが問題です。
これ、普通の方が見れば、
「弁護士は『みんな』、死刑制度廃止を訴えているんだな」
と思うでしょう。
でも、別にそんなことはありません。
確か、日本人に、どこかがアンケートをした際に、死刑制度賛成か反対かだと、若干賛成が多いくらいだったかと記憶しています。
私の感覚だと、弁護士さんだけにアンケートをとっても、ほぼ同じ比率だと思います。
この日弁連やいくつかの地方弁護士会が、勝手に、所属する弁護士はみんな死刑制度に反対しているかのごとく振舞っているのが問題です。私も、正直気に入りません。
私も含め、被告人の弁護をします。人を殺してしまったりして、死刑になってしまうかもしれない方を弁護士ます。そのときには、私は、もちろん、死刑を回避するために全力を尽くしますし、誰がなんと言おうと、死刑は残虐で憲法違反だ、と主張します。被害者が泣こうが何しようがです。
それは、弁護士は、依頼者のために、全力を尽くすためにその存在意義があるからです。
弁護士は、依頼者が世界中を敵に回しても、その依頼者の味方をします(こういうとカッコ良いですが、報酬を頂くことが前提です。そうすると別にカッコよくありまえんよね。)。
一方で、弁護士は、依頼されれば被害者(の家族)の代理人(味方)をも務めるわけです。最近は、刑事事件手続でも被害者参加制度があり、弁護士が被害者をサポートしたりするわけです。ぶっちゃけて言えば、被告人の罪を重くするためです。被害者の家族が被告人の死刑を望めば、そのために全力を尽くします。
このように、弁護士は、依頼を受ければ、どのような立場の人のためにも弁護(代理)するわけです。
被害者のご家族の代理人を務めて、殺されてしまった被害者のために全力を尽くすとすると、被害者のご家族が被告人の極刑を望むのであれば、その代理人たる弁護士としては、誰に何と言われようと、「被告人の行為は死刑値する!」と主張するべきです。
ということで、日弁連が死刑制度の廃止を叫ぶと、「被告人の死刑を望む」被害者のご家族からすれば、「弁護士は、我々の味方にはなってもらいえないんだ。」と思われてしまいます。これは弁護士としては不本意です。
私は、これが一番の問題だと思います。
京都の弁護士さんがどのような理由で訴えを提起あれ、ご主張をされているのかは正直あまり知りません。ちょっと忙しくて勉強する暇がありません。
最後に
ということで、皆さんに知っておいて欲しいことは、
① 日弁連や地方の弁護士会の「死刑反対の決議」にも関わらず、その構成員である
弁護士は、別に、全員が全員「死刑反対」とは思っていません。
正確な数字は分かりませんが、一般の方と賛成・反対の比率はそれほど変わらない
のではないかと思います。
私自身、憲法や刑法やらで人権の重要性を勉強しましたが、それが直ちに死刑廃止
論に結び付くとは思いませんでした。
刑の基本は応報刑、「目には目を歯には歯を」です。ちなみに、ドイツでは、
「ソーセージにはソーセージを」というらしいです。
そして、弁護士は、依頼者の味方です。被告人のために死刑を回避するために全力を尽くすこともあれば、被害者のために、全力で死刑をとりにいくこともあります。
ただ、現在の死刑の執行方法については、問題点はあるかもしれませんね。
私の死刑に対する正直な見解を述べると、私も含めた日本国民が、たとえ家族を殺されたとしても、被告人には(無期懲役で留め)死刑を望まないという成熟したレベルにまで達すれば、そのときが死刑を廃止すべきときだと思います。
でも、私の場合、家族を誰かに殺されたら、当然、その被告人には死刑を望みます。私は成熟していませんし、そのような域には死ぬまで達しないような気がします。
私のように、刑事弁護に熱心で、罪を犯してしまった方の味方をしている弁護士でも、別に、死刑反対論者とは限りません。
いずれにしても、現時点で、私のような「未熟」者が多数であれば、死刑制度はまだ廃止するには時期尚早だと思います。無理に廃止すると、自力救済(=被害者の家族が、被告人を殺しに行く)という法が望まない不幸な事態が発生するかもしれません。
不勉強なくせに、ちょっと踏み込み過ぎましたね。すいません。