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刑事事件-受刑者に対する陰部検査

はじめに

 

 今回は、日弁連が、大阪刑務所に対して、受刑者に陰部検査やら全裸で身体検査をしていることに対して、重大な人権侵害であると勧告している話題について記事にしたいと思います。

 

www.nichibenren.or.jp

 

要するに、人として扱っていないということ

 

 勧告書によれば、大阪刑務所は、

 

「全ての受刑者を対象に,年数回定期的に,受刑者が,刑務官が見ているもとで,陰茎を上に持ち上げて陰嚢を見せ,刑務官が目視で確認する態様で陰部検査を行っている。」

 

「少なくとも2016年9月27日まで,工場で作業を行う受刑者に対し,始業前及び終業後に,毎回,複数の受刑者が全裸になって並び,刑務官が受刑者を目視するという全裸の身体検査を行っていた。」

 

「2016年11月21日以降,工場で作業を行う受刑者に対し,作業の前後に,毎回,受刑者がパンツ1枚を着用して一人ずつ検査位置手前の線に立ち,刑務官に対して,両腕を真上に伸ばして脇の下を見せるとともに,指を広げて両手の表裏を見せ,両腕を下ろし称呼番号を明確に言って検査位置に一歩進み,次に,パンツの前面に両手親指を入れて腰ゴムを広げ,刑務官から「よし。」と告げられれば更に一歩進み,各指で左右に腰ゴムを広げながら腰背部に送り,足首を返して足裏を見せ,刑務官から「よし。」と検査終了を告げられれば,更衣室内を別区画に進み,始業時は工場衣を,
終了時は居室衣を着用する,との要領で身体検査を行っている。」

 

のだそうです(括弧内は引用です。赤色を付したのは私です。)。

 

どうでしょうか。

皆さんは、誰かが罪を犯したらこういう扱いをされるということで、宜しいんでしょうかね。

 

 「自分は、絶対、犯罪なんてしない。」

 「自分とは関係ない遠い世界の話だ。」

 

という感想でしょうか。

 

 私は、刑事弁護をしているので、ごく普通の人が、(ストレスやらトラブルやらに起因して)ふとしたきっかけから犯罪をしてしまい、刑務所に行ってしまうのをたくさん見ています。

 

 あなたがそうでなくても、家族の誰かが、このようなことになってしまうかもしれません。

 

 罪を犯した罰として懲役刑というのがあるわけですが、自由に刑務所から出れず、刑務所内で作業をしなければなりません。朝起きる時間や、寝る時間、ご飯の時間、ご飯の内容、自分で決められません。相当な人権制約ですが、罪を犯したことに対する罰(懲役刑)なのである程度は仕方ないかもしれません。

 

 でも、全裸の身体検査はどうでしょう。

 

 受刑者が、何か隠し持っているかもしれないと、それを探そうとしているのでしょうね。

(別に、刑務官は、受刑者の裸を見たいわけではないでしょうし。)

 

 しかし、どうでしょう。

 何か隠し持っていたりするのを防止する手立ては、全裸検査だけでしょうか。

 

 空港でテロを防止する必要があります。爆弾やら刃物やら持ち込んでるかもしれません。

 さて、我々、全裸検査されますかね。

 誰か、何か隠し持ってるかもしれませんよね。

 

 今は、何かを発見するために、様々な技術がありますよね。刑務所にも導入できませんでしょうか。

 

 より人権制約の小さい手段って、普通に思いつきますよね。

 

 それとも、全裸検査(屈辱・恥辱)も、懲役刑の一部なんでしょうかね。

 

 現在、何時代でしたっけ。

 

 あと、ついてですが、受刑者って、番号で呼ばれますよね。

 未決拘禁者(まだ、罪が確定していない被疑者・被告人)も、警察署の留置施設や拘置所で番号で呼ばれてますよね。

 

 これ、人として扱ってませんよね。

 番号で呼ぶって、やむを得ないことでしょうか。

 

 私、刑事弁護人として、警察署に被疑者に接見(=面会)に行って、

 

 「誰誰さんの接見お願いします。」

 

って受付で言うのです。そうすると、受付の警察官は、留置係に内線で電話し、被疑者の在監を確認してくれます。

 

 ときどき、(外国人だったり、ちょっと変わった苗字だったりした場合、)警察官に名前がうまく伝わらないことがあるんですよ。例えば、

 

 「ワタベさん、ワタナベさん???」

 

って感じで。

 

 その時、私、一回、思い立って、「あなたたちが、○○番って言っている人ですよ。」

 

て警察官に行ってみたことがあります。

 

 ちょっと驚いた顔で私を見ました。

 

 「ほら、人を番号で呼ぶのって、自分たち同士では慣れてしまって当然のようにしてるけど、私のような外部者が、突然、被疑者を番号で読んだら違和感あるでしょ。人権の意識って、そういうものですよ。特に、警察官の職務なんて、場合によっては法で人権を制約できてしまうわけですから、特に人権に配慮しなければならない仕事でしょ。」

 

って言おうかと思いましたが、やめました。

 

 そう、違和感持たないと。

 

 わざわざ被疑者にその人の「番号」を聞いたりしませんが、接見の際やら手続きの際に、警察官同士が、被疑者を番号で呼び合っているので、私にもその番号が聞こえてくるのですね。なので、偶々その被疑者の「番号」知ってたのです。

 

最後に

 

 別に、私、人権派弁護士でも何でもありません。

 

 私、日弁連はあまり好きではありませんし、私の意見は別にしても、(被害者の代理人をする弁護人もいるわけですので)、勝手に、死刑反対が弁護士の総意かのように言っている点など、おかしいなぁと思います。

 

 でも、この受刑者に対する全裸検査という待遇は、日弁連がいうように、人権侵害で明らかな誤りでしょうね。

 

 まぁ、他人事だと思っている方も多いでしょうが、政治家の先生も逮捕されたりしますので、我々一般庶民も警察署や拘置所や刑務所に収容されることも、あり得ないわけではないのです。ストレスの多い時代ですし。

 

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