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刑事事件-被疑者・被告人に対する感情

 

 

はじめに

 

 今回は、被疑者・被告人に対する感情というテーマで記事を書きたいと思います。

 

被疑者・被告人に対する感情

 

 弁護人は、被疑者・被告人を弁護するという立場にありますので、自白している(=罪を認めている)被疑者・被告人に対して、

 

 「こんな犯罪をしやがって!けしからん。」

 

などという怒りの感情は、ほとんどありません。

 ただし、事件の内容や、被疑者・被告人の態度、たとえば、

 

 「犯罪をして何が悪いんだ!」

 

というような人に対しては、普通に、

 

 「ひでぇなぁ、こいつ。」

 

と思うことは正直あります。もちろん、言葉には出しません。

 

原則として感情は出さない

 

 弁護人である私は、被疑者・被告人に対して感情を出すことは、原則としてしません。

 皆さんが思っているよりも、はるかにビジネスライクに進めて行きます。

 

 被疑者・被告人にとって有利な結論、つまり、身柄拘束が解かれ、不起訴となり、あるいは、裁判になっても執行猶予や減刑がなされるよう、淡々やるべきことをやるだけです。

 

被疑者・被告人に対して、パフォーマンスで感情を出すことはある

 

 被疑者・被告人が罪を犯した上で、反省をしていないような場合には、反省を促すことで有利な結果を得るために、ときどきですが、弁護人である私が、パフォーマンスとして感情的に振る舞うことはあります。

 

 悲しい顔をすることもあれば、怒りとともに話すこともあります。

 

 また、コミュニケーションを円滑にする必要があるときには、真に同情していなくても、同情しているという感情を出すことで、事件をうまく進めようとすることもあります。

 

法廷の場でも、パフォーマンスで感情を出すことはある

 

 自白事件では、被告人にとって少しでも有利な結果を得るべく、被告人が真に反省していることを裁判官に示す必要があります。

 

 もちろん、被告人自身が、法廷で、①自分が犯した罪を十分に認識していることを示し、②被害者に対する思いを具体的に語り、更には、③犯罪を繰り返さないことを具体的な方策とともに誓うというのが理想なわけですが、正直なところ、法廷の場で、それをうまくできる饒舌な被告人はほとんどいません

 

 被告人質問で、理詰めで攻めてくる検察官や裁判官がいますが、普通の人は、しかも緊張感のある法廷で、理路整然としゃべれないという事実を分かっていません。彼らの期待値は高すぎます。

 

 そこで、弁護人が、法廷で、ちょっと怒ったようなパフォーマンスで厳しい質問を投げかけ、その反射的効果として、被告人が反省している姿を見せるというテクニックを使うことはあります。

 

 なお、なぜ、被告人にとって厳しい質問を、味方である弁護人がするのかと疑問に思われる方もいるかもしれません。

 

 しかし、被告人にとって厳しい質問は、弁護人がしなくとも、検察官が被告人に対する反対質問でほぼ必ずやってきます

 

 ですので、予め、弁護人が被告人にとって厳しい質問も終わらせてしまい、検察官が反対質問において不必要に同じ質問を繰り返さないように封じるという手を使います。

 

法廷で涙を流す裁判官は・・・

 

 私は弁護人として、被害者に対してはもちろん、被告人に対して同情で涙を流すことはありません。そのような感情にさえなりません。悪く言えば、感情移入を全くしていません。

 また、私が扱った事件で、被告人に感情移入して涙を流すパフォーマンスをすべき事件にもまだ出会っていません。

 

 一方、検察官が、ときどき、法廷で(被害者を思い)涙を流すことはあるようですが、被害者側の立場でのパフォーマンスだと信じます。真に、感情で涙を流しているのであれば、プロではありません。

 

 裁判官が、被告人・被害者のどちらの立場にもない判断者なわけですから、法廷で、感情的になり、声を詰まらせたり、涙を流すなどというのは言語道断です。

 

 判決の後に、説諭をする裁判官もおられますが、感情抜きに説諭するのであればよいかもしれませんが、感情をこめて説諭するのはあまり賛成しません。

 

 もっとも、効果的であろうとの判断の下、被告人に真の反省を促すためにやられているのだとすれば、不適切とまでは言えないかもしれません。ただ、裁判官は法廷と裁判記録の供述でしか被告人を知らないわけで、この被告人にとって効果的か否かまでの判断はできないだろうと思っています。

 

最後に

 

 被疑者・被告人が刑事事件を起こしてしまい、落ち込んで泣いたり、その家族が被疑者・被告人に対して怒り狂ったり、被疑者・被告人が心配なあまり感情的になったりというのはよくあることです。

 

 でも、その被疑者・被告人にとって、最も有利な形で事件を終わらせるためには、(パフォーマンスによって感情を出す場合を除き、)弁護人は、感情的にならず、極めてビジネスライクに事件と向き合うのがベストだと思います。

 

 きっとお医者さんも、深刻な病気の患者に対して、涙を流すなど同情的・感情的になり過ぎてしまっては、客観的にベストな手術はできませんよね。

 

 私は、弁護人として、幸いにも、感情的にはなりません。

 

 

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