理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件ーやっていないっていったのに・・・

はじめに

 

 今回は、最初は否認していた(=罪を認めていないで争っていた)のに、後で自白する(=罪を認める)被疑者について、説明したいと思います。

 

自白事件と否認事件

 

 初回の接見(=面会)で、

 

 「私は、そんな犯罪はしていません! 信じてください!」

 

とおっしゃる被疑者は、だいたい5~6人のうち1人くらいの印象です。

 

自白事件の場合

 

 罪を認めている(自白事件の)場合は、弁護士は、①示談をしたり、②家族から身元引受書を頂いたり、③被疑者に反省文を書いてもらうなど、起訴されない(=裁判にならない)ように、あるいは、罪を軽くするように情状立証を色々と頑張ります。

 

否認事件の場合

 

 一方で、罪を認めていない(否認事件の)場合は、警察や検察による取調べで、虚偽の自白をしないよう被疑者を励まし、取調べのアドバイスをし、取調べの様子を逐一報告してもらいます。

 無実であることを捜査機関に説明し、あるいは、起訴されて(裁判になって)も無罪のため、様々な活動をします。

 自白の場合より、接見の頻度は多くなることが多いです。

 

 このように、自白事件と否認事件とでは、弁護人がする活動内容は全然違ったものになります。

 

最初は罪は認めていないが・・・

 

 しかし、最初は、否認している(=罪を認めていない)ものの、勾留された数日経ち、更に、勾留延長で勾留が10日間を過ぎると、

 

 「実は、私、罪を犯しました・・・。

 

と自白する被疑者が結構います。

 

 否認している被疑者のうち、3、4人に1人くらいの印象です。

 

勾留が長引いて辛いので自白したい・・・

 

 ダメと言います。

 頑張りましょうと言います。

 勾留後、別に、自白したから直ちに釈放されるわけではありません。

 

弁護人に罪を告白するよりも先に、捜査機関に対して自白をすると・・・

 

 ちょっとがっかりします。

 本当は、被疑者と弁護人の信頼関係の下、先に、弁護人に先に罪を告白してもらい、対応を一緒に考えた方が良いのですが・・・。

 

 弁護士により先に捜査機関で自白すると、弁護士としては、別の意味でも、「んー」と思ってしまいます。

 

 被疑者が自白した場合、本当は無実なのに、取調べや勾留が続き、自白してしまったのではないか、と疑わなければなりません

 

 ですので、被疑者が本当に罪を犯したのか、検証する必要が出てきます。

 罪を犯した内容を具体的に説明してもらい、じっくり話を聞いて質問をし、本当かどうかを確認します。

 

 もっとも、弁護人には、捜査機関による捜査内容は被疑者段階ではなかなか教えてもらえませんし、弁護人は、基本的に心理学者でも神様でもないので、目の前の被疑者が言っていることが本当かどうか分かりません

 

 「本当に罪を犯したから、自白をしたのであって、勾留が辛くなって、あるいは、

  取調べが辛くなって、虚偽の自白したのではない。」

 

ということを慎重に確認しなければなりません。

 

 弁護人が無実の人を有罪にしてしまうわけにはいきませんので・・・。

 

 それから、捜査段階で自白し、調書(警察官による調書[員面調書]、検察官による調書[検面調書])をとられてしまうと、裁判の段階で、それを覆すのは不可能に近くなります

 虚偽で(勾留が辛くて、取調べが辛くて)自白してしまうと、裁判でやっぱり争おうとしても、もはや取り返しがつかない状態になります。

 

勾留期間の途中で自白されると・・・

 

 最初にご説明したように、自白事件と否認事件では、弁護人の活動内容が全く異なります。

 

 勾留期間の後半になって、突然自白され、被疑者が罪を犯したであろうことを確認できても、その段階から、被害者との間で示談するというのは、起訴されるまでの期間が既に残り少なくなっているので、非常に困難になります

 

弁護人としては、

 

 「早く言ってよ~。」

 

という気持ちになります。

 

 つまり、本当に罪を犯したのに、途中まで否認することは、被疑者にとって何のメリットもないどころか、デメリットが多すぎます。

 

なぜ、最初は否認するのか・・・

 

 いろいろな事件を見てきて、最初は罪を認めない(認めたくない)という心理があるように感じるようになりました。

 

 実は、弁護士になりたての頃、最初否認していた被疑者が後に自白したときに、私は真剣に怒ってしまいました。

 こっちは、否認事件だと思い、接見(=面会)を繰り返して励ましていたのに、突然裏切られたことに非常に腹が立ったからです。その件は、結局、解任されました(笑)。

 

 今は、経験を積み、「最初は罪を認めない人は一定程度いるんだ」という前提で、

 

 「 あなたが、罪を認めていないのであれば、もちろんあなたを信じ、

  無罪事件であることを前提に弁護活動をします。

   ただし、もし万が一、実罪を犯しているにも関わらず最初は否認し、

  後に自白されると、あなたにとってもの凄く不利な状況になります。

   私に限らず、否認の場合と自白の場合とで、弁護方針は全く異なります。

  たとえば、後で罪を認めても、もはや示談も時間がなく、うまく行きません。

   ですので、もし、罪を犯したのであれば、早めに教えてください。

   私は神様でも心理学者でもないので本当んことは分からないのです。

   もちろん、罪を犯していないのであれば、最後まで一緒に戦いましょう!」

 

という説明をするようにしています。

 それでも、最初は否認し、後に自白する人は結構います。

 その都度、本当かどうか、自分なりに慎重に検証しますが。

 

最後に

 

 正直なところ、否認事件だと弁護人としては戦闘態勢になりアドレナリンが出ます。

たとえて言えば、スーパーサイヤ人になる感じです。

 そして、後に、自白されるとがっかりして、気力がなくなります。

 

 罪を犯したのであれば、反省してもらい、示談ができれば示談をし、少しでも罪が軽くなるよう弁護人は活動します。

 

 罪を犯していないのであれば、捜査機関と全面対決です。

 

 しつこいですが、自白事件と否認事件は、弁護活動の内容が全く異なるのです。

 

 是非、最初から事実をありのまま話してください

 それを前提にベストを尽くしますから

 

 

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