理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件-喧嘩両成敗?

 

はじめに

 

 今回は、喧嘩による傷害事件などについて、私が担当した過去の刑事事件の経験も踏まえてご説明したいと思います。

 

喧嘩両成敗ではない!

 

子どもの喧嘩

 

 たとえば、小学校や中学校などで、生徒同士が喧嘩したとします。エスカレートして、双方怪我をしてしまったりするかもしれません。

 

 しかし、おそらく、学校としては、怪我の程度に関わらず、喧嘩両成敗で2人を叱り、罰を与えることになるでしょう

 

 私のときは、確か、廊下で正座とかでした。今だと正座とかは禁止でしょうか?

 

 なお、念のため、一方が他方を一方的に攻撃するだけのものは、一方的な暴行、いじめであって、喧嘩ではありません

 

 もっとも、一方が余りにも重い怪我をさせてしまった場合は、少年事件(14歳以上の場合)として、成人の場合の刑事手続とは手続きが違うものの、刑事処分となることもあります。

 

 私、刑事事件は結構やっていますが、実は、少年事件は修習生(弁護士等になるための研修生)のときに1、2件、実際の事件を見せてもらっただけで、弁護士になってからは担当したことがありません。

 

 機会があれば是非やってみたいとは思っているのですが、なかなか色々な件に手を出せるほど時間がありません。

 

 ちなみに、弁護士って、仕事を通じて、世の中のあらゆる問題に関与することができる素晴らしい仕事ではあるのですが、なにぶん、1日24時間と時間が限られているので、どうしても限界があります。

 私の場合は、知財案件を担当するだけで、十分なくらいの仕事量ですが、それに、離婚事件やら一般民事・企業法務やら、刑事事件までやっていると、パンクしてしまいます。でも、まぁ、できる限りやりますが。

 

 更に、余談ですが、(もう亡くなりましたが)私の祖父は農家ですが、保護司をやっていました。

 

 今は、保護司といっても何のことか知らない方も多いかもしれません。興味があれば、ググってみてください。

 

 私の実家には、よく金髪のヤンキーがたくさん来て、うちの祖父にぺこぺこと頭を下げていました(笑)。何とも不思議な光景でしたよ。

 

 昔は、「なんなんだろう。うちのおじいさんは、ヤンキー少年を束ねているのかなぁ。」と、「悪い意味で、祖父は偉いのかなぁ」思った記憶があります(笑)。しかも、祖父は大酒のみでしたしね。

 

 なお、後に、私の小学校の同級生も、(中学生になって)うちの祖父のところ(つまりは、私の家)に来ていました・・・。

 

大人の喧嘩

 

 さて、本題ですが、大人同士が喧嘩をし、双方怪我を負った場合などはどうなるでしょうか?

 

 同じように、喧嘩両成敗になるかと言えば、実は、必ずしもそうではありません。

 つまり、双方が傷害罪で逮捕、場合によって勾留や起訴となるわけではありません。

 

 具体的には、重い怪我を負わせてしまった方が、逮捕されて被疑者となり、重い怪我を負わされてしまった方は被害者になります

 

 そして、被害者の方は、被疑者に対して、比較的軽い怪我を負わせてしまっていても、必ずしもその点を捉えて、逮捕・起訴されるとは限らないのです

 

 検察官には、事件の処理について、ある程度の裁量があるので、本件については、重い怪我をさせた方を逮捕・勾留し、軽い怪我を負わせたに過ぎない方は被害者として、逮捕・勾留されないこともあるのです。

 

 私が担当した何件かの喧嘩による傷害事件は、被疑者自身は、確かに被害者に怪我を負わせてしまっていたものの、被疑者自身も被害者に攻撃されて怪我をしていることが結構ありました。

 

 「あいつが悪いのに、なぜ、俺だけ逮捕されるんだ!」

 

というのは、お決まりのセリフです。

 

 起訴されたとして、被告人の行為が、(自白していることを前提に、)傷害罪にあたるとして、どのような刑を科されるかは、様々な事情(量刑事情)を考慮されて、罪の重さが決まります

 

 たとえば、被害者が先に挑発をしてきた、あるいは、先に手を出してきたのであれば、その点が被告人に有利な事情として刑を軽くする方向で考慮されるかもしれません。

 

 しかし、とにかく、一般的には、重い怪我を負わせてしまった方が、被疑者・被告人になってしまうことが多いです。必ずしも喧嘩両成敗ではありません。

 

 喧嘩なのに、被害者に何十万円も払って示談をすることがあります。

 結局、この社会では、怪我を負わせてしまった方が負け(逮捕→勾留→起訴)なのです。

 

 生きていれば、相手に腹を立てて、殴ってしまいたいと思うこともあるでしょう。明らかに相手が不合理なこともあるでしょう。

 でも、我慢しましょう。その場を離れましょう。

 何より、関わらないことが一番です。

 

まとめ

 

 喧嘩のきっかけは様々で、どっちもどっちということが多いのですが、刑事事件の観点からすると、結果、すなわち、どちらが重い怪我を負ったかにより、一方だけが被疑者・被告人となることが多いのです

 

 「あっちが、挑発してきたんだ。」

 「あっちが、先に手を出してきたんだ。」

 

という事情は、量刑の際に考慮され得るとしても、それによって、自らが逮捕・勾留・起訴を免れるわけではありません

 

 もちろん、正当防衛が成立するような事情があれば別ですが、正当防衛も皆様が思っているほど簡単には成立せず、非常に限定的な条件の下でしか成立しないのです。

 

 とにかく、喧嘩になると双方エスカレートしてしまい、思わぬ重い結果(怪我や死亡など)が発生してしまいます。

 

 喧嘩になりそうになったら、その場を離れることです。特に、酔っているときは特に注意です

 

 繁華街の場所にもよりますが、周りも酔っている人が多いですし、喧嘩の発生確率が非常に高いです。

 

 執行猶予付きの判決となった被告人に対してはいつも、

 

 「①自動車の運転、②酔っぱらっての喧嘩、器物損壊には、くれぐれも気を付けてね。」

 

と言います。

 

 自分が粗暴的な性格ではないとしても、喧嘩というのは、けっこう誰でも巻き込まれることが多いからです。

 

 飲んだとき、できれば、人と接触しないようタクシーで帰りましょう。

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

 


弁護士ランキング