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特許入門23-紛争時対応(被疑侵害者側)

はじめに

 

 今回は、特許入門のタイトルで、被疑侵害者側(被告側)の紛争時対応についてご説明したいと思います。

 

 内容は、おもいっきり特許実務なので、特許実務のタイトルに含めるべきかとも思いました。

 

 しかし、以下の内容はというと、特許分野にいる方にとっては非常に基本的なことが多いので、むしろ、特許業界に入って間もない方向けのイメージで、特許入門に位置づけることにしました。

 

レター(警告状)

 

 最初は、特許権者からレターが来るでしょうね。

 

 レターの内容は、

 

 ① ハードな警告状(今すぐ、製造・販売を辞めろ!)もあれば、

 ② ソフトなレター(弊社特許発明と貴社の製品の関連性についてお伺いしたい、

  ライセンスは要りませんか?)

 

といったものまで様々です。

 

 特許権者に代理人がついているようでしたら、①と②の中間的なものが多いかもしれません。

 

 後述の「和解の可能性」で触れますが、レターの見極めが必要となります。

 

 特許権者は、何が何でも製造・販売停止を要求しているのか(独占)、ライセンスでお金をとりたいのか(利用)。

 

 もっとも、上記の①、②のようであれば明らかですが、その中間的なレターだと、最初の段階では、レターの文面だけでは分からないかもしれません。

 

 しかし、レターのやりとりや直接交渉の中で見えてくるかもしれません。

 

検証

 

 レターに、充足性(特許発明と製品との対比)のクレームチャートが付いていれば、それを検討するわけですが、最初のレターでは、必ずしもクレームチャートまでは付いていないかもしれません。

 

 最初の応答では、特許権者に、

 

 ①「ちょっと時間ください。」(検討時間を要する旨のレター)とか

 ②「えーっと、貴社が対比してないから、わかんないなぁ、そっちで対比してよ!」

  (これも時間稼ぎかもしれませんが、そもそも特許権者側に充足性の主張・立証が

   ありますからね。)という返答をすることが多いです。

 

 一方で、たとえクレームチャートが送られて来ていなくとも、潜在的紛争の可能性がありますので、粛々と、特許権者が特定した特許発明と、自社の被疑侵害品特許権者がレターで特定したものだけでなく、その他の特許発明に関連しそうな製品も含む。)を対比し、充足性の有無を検討する必要があります。

 

 さて、数値限定のあるクレームなど、場合によっては、検証実験が必要になってくるかもしれませんね。

 

 最終的に、訴訟に至る可能性もありますので、非侵害(非充足)の立証に必要な証拠を準備することが必要になるかもしれません。

 

 証拠としての実験報告書の類にも、証明力のレベルに違いのある様々なものが考えられます。証明力が高い順に、

 

 (1)公証人立会いによる事実実験公正証書(証明力高い、費用も高い)

 (2)三者機関による実験報告書大学の先生の意見書

    (証明力それなり、費用もそれなり)

 (3)自社での実験報告書自社の従業員(研究者)の陳述書

    (証明力小さい、費用も小さい)

   ※なお、三者(その技術の専門分野の大学教授など)の立会いによる

    自社での実験報告書は、(2)と(3)の間の証明力のレベルかと思います。

 

設計回避

 

  非充足の議論ができるようなら、反論レターを送ればいいわけですが、どうも、充足してそうだという場合は、製品の設計変更による特許権の回避について検討しなければなりません。

 

 一方で、顧客や費用との関係で、設計変更や製品の回収などが難しいもあるでしょう。

 

 その場合には、特許を無効にするという手段をとる必要が出てきます。

 訴訟を提起された場合には、8割方「特許は無効だ!」と主張することになろうかと思います。

 

 充足性の検討とともに、特許の有効性の検討も必要になってきます。

 

最後に

 

 特許関連の記事は、すぐ文字数が多くなってしまいますね。

 続きは次回にします。

 

 ・特許無効の抗弁・無効審判等の対抗手段

 ・和解の可能性

 ・カウンター特許の準備

 

といったあたりのトピックの説明になりそうです。

 

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