はじめに
前回の特許入門では、発明をしてみよう(発明の発掘・創出)と題して、発明がどの
ような発想から創出されるのか、についてご説明しました。
masakazu-kobayashi.hatenablog.com
具体的な発想としては、
① 「一体⇔別体」アイデア、
② 兼用アイデア、
③ 小型化アイデア、
④ 「単→複」(連携・連動)アイデア、
⑤ 通信機能アイデア、
⑥ 時代の要請アイデア、
⑦ 既存の概念を覆すアイデア
あたりでした。他にも様々あるかもしれません。
同時に、技術の転用(=ある技術分野の技術を、他の技術分野に転用すること)についてもご説明しました。
転がり止めを目的とした「六角形断面の鉛筆」から、同じく転がり止めを目的とした「マイクに設置する嵌め込み式の六角形ゴム」の創出です(ここでは、①「一体⇔別体」アイデアも使いました。)。
今回は、もうちょっと具体例を挙げてみたいと思います。
太陽電池(太陽光発電)
大分昔になるのですが、あるセミナーで、発明の発掘・創出というテーマでプレゼンする際に、具体例を探そうと思い、太陽電池に関する公開公報をざっと概観したことがあります。
太陽電池が、基本発明(コアな技術)としてあるとして、これを利用した発明(利用発明)としてどのようなものが考えられるか調べてみました。
なお、私は、太陽電池の専門家でも技術を理解しているわけでもありませんので、その点はご容赦ください。
(1)何に設定するか?
通常は、地上であったり、屋根の上だったりしますよね。
(必ずしも特許されたものではありませんが、)当時私が見た公報から、列挙すると、
自転車用ヘッドライト、イルミネーション、道路標識、信号機・踏切、
駐車場の遮断バー、模型飛行機、気球、窓ガラス、競技場、携帯電話、船舶、
腕時計、ベビーカー、海上のブイ、芝刈り機、電話ボックス、自動販売機、
・・・
私の知る限り、バスの停留所とかでも使われていますね。
さて、様々なもの(小さいものや動くもの)に太陽電池(技術)を適用するとなると、様々な工夫が必要となってくるでしょう。
たとえば、(現実にあるのか知りませんが)自転車用ヘッドライト、道路標識、信号機、遮断バー、携帯電話、腕時計、ベビーカーなどといったものの場合には、①一体化や③小型化の工夫が必要となってきます。
逆に言えば、太陽電池の③小型化が可能となれば、様々なものに適用できるということです。
海上のブイなどに複数設置する場合は、④「単→複」(連携・連動)アイデア、⑤通信機能アイデアを使うことになるかもしれません。
後述するように、気球など丸いものに使われるとなると、フレキシブルな形状のものが必要となってくるかもしれません。「(3)発想の柔軟性」で後述しますが、⑦既存の概念を覆すアイデアから始まって、気球での適用に至るのかもしれません。
逆に、気球での適用を考えたときに、フレキシブルにしなければ、という必要性から、⑦既存の概念を覆すアイデアを採用し、それに向けて技術的な工夫をするのかもしれません。
船舶や海上のブイに適用されるのであれば、固定されておらず、波のある不安定な(動く)状況下で使用されますし、送電が難しい状況かもしれませんので、他の技術(海洋技術や、蓄電技術等)と組み合わせる必要が出て来るかもしれませんね。
(太陽の出ていない夜に)イルミネーションで用いる場合には、蓄電技術は必要ですよね。
(2)何を目的とするか?
太陽電池は、電気を生み出すためですが、私が調べた中には、その使い道として、融雪のためというのがありました。現実的かどうかわかりませんが、面白いですね。
雪の降る地域で使用されるということなので、そもそも設置場所にも、一工夫必要なのかもしれません。
(3)発想の柔軟性
太陽電池の固定観念って、(A)板状、(B)固定、(C)屋根の上といったところでしょうか。
先に紹介したアイデアのうち、「⑦ 既存の概念を覆すアイデア」というのを考えてみると、これらの固定概念の逆、すなわち、(a)フレキシブル、(b)可動式(モバイル)といったところでしょうか。
(a)フレキシブルなシート状のものは、様々な場所に設置しやすくなると思いますし、(b)可動式というアイデアは、たとえば、先に挙げた競技場やあたりで何か発明が生まれそうですね。(b)モバイルというアイデアとは、携帯電話(スマホ)はじめ様々ありますね。
スマホといえば、この固定観念も同じく板状ですが、最近は折り畳めるもの(フレキシブルなもの)も出てきてますね。
(C)屋根の上に対する逆転の発想としては、(c)(軒先の)屋根の裏側というのがありました。
「あれっ、太陽光当たらいのでは?」と思いましたが、豪雪地帯で用いられ、太陽光が、雪→壁→屋根の裏と反射して、発電するのでしょうか。ちょっと実現可能性があるものなのか分かりませんが・・・。
洋上での風力発電
もう1つの例として、洋上での風力発電を考えたとき、従来の地上での風力発電に対し、他の技術分野の技術の適用が必要となりそうです。
たとえば、
① 洋上・浮体という観点からは、船などの海洋技術
② 保守・点検という観点からは、航空宇宙技術、原子力発電所等の遠隔技術
③ 蓄電技術
あたりが必要になるかもしれません。
洋上での風力発電についても、ブイでの太陽光発電と同様、複数箇所で発電する場合は、④「単→複」(連携・連動)アイデア、⑤通信機能アイデアを使って、様々な発明が生まれそうです。
最後に
コアな技術(たとえば、太陽電池、風力発電)を様々に工夫して、様々なところに適用することで、ビジネスが広がるかもしれません。
適用の際に、様々な他の技術分野を自社で取り込む、あるいは、他の技術分野の別会社と連携することでも、ビジネスが広がるかもしれません。
特許戦略(知財前略)がビジネス戦略の重要な地位を占めるということは、これらの簡単な例でもお分かりか頂けると思います。