はじめに
あるユーチューバーが、衣料品店で買ったブランドのシャツが偽物だったと店員に迫り、店の業務を妨害し、ユーチューブにその様子を動画でアップして店の信用を毀損した、という容疑で逮捕されたそうです。
今回の事件は、前に紹介したスーパーで会計前に商品を食べてしまった窃盗の事件と同じ人ですが、これよりも以前の事件のようです。
「また、やった」というよりは、それ以前の事件なので、余罪でしょうか。
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店にいちゃもんをつけてしまうと・・・
今回の事件に限らず、店にいちゃもんをつける過程で成立し得る問題について検討します。
業務妨害罪
本件の記事では、「罵声を浴びせて返品を迫り」とあるので、これが事実だとしたら、脅す行為による業務妨害なので、業務妨害罪のうち、「威力」業務妨害罪は成立しそうですね。
「偽計」業務妨害罪というのもあるのですが、これは虚偽の情報を流すなどによる業務妨害ですね。
どちらも法定刑は同じですが。
ちなみに、弁護士も含めた法曹は、威力業務妨害罪と言えば、「被害者の机の引き出しに猫の死骸を入れた」という事例を勉強するため、威力業務妨害罪と聞くたびに、この醜い事例を思い出してしまいます。嫌ですね。
強要罪
本件ではそのような事実はないようですが、以前の別の人による別の事件で、店員さんに無理やり土下座させたという事件があり、強要罪が成立しました。
この強要罪というのは、店員などとの揉め事の際に、暴力を振るっていなくても(暴行を振るえば、暴行罪ですね)、怒りのあまりに相手に意思に反して土下座等を要求してしまったりすると、成立し得るので、注意が必要です。
信用棄損罪
本件では、信用棄損罪も挙がっています。
似たような罪として名誉棄損罪がありますが、信用棄損罪の場合は、お店の経済的な側面における人(店)の社会的信用を貶める行為です。
本件では、買ったブランドシャツが偽物だったと迫っている状況をユーチューブにアップしたということなので、これが事実なら、信用棄損罪も成立しそうです。
自分で犯罪の証拠を作って公開してる・・・
なお、本件が特殊なのは、自らの犯罪の証拠を、自ら作り出して、公開してしまっているところでしょうか。皮肉ですね。
ネットでの収益システム
私、あまりネットの収益システムに詳しくないので間違っているかもしれませんが、ユーチューブとかは再生回数が増えると収益に結びつくようにできるのですよね。
なので、単に「面白いこと」(これは素人には限界がありますよね)や「有益な情報を提供すること」を超えて、自分の収益(あるいは、有名になりたいという自己顕示欲もあるのかもしれません。)のため、過激だったり炎上したりするようなことをし、それがどんどんエスカレートするんでしょうね。
そして、このユーチューバーというのが子どもの人気の職業なんですよね。
んー。
最後に
全く理由なく、お店の店員などにクレームをすることは、もちろん問題外です。
しかし、相当な理由でお店にクレームするのであっても、カッとなってしまい、(暴力を振るわないまでも)店員に土下座を強要したり、大声でこの「お店は、ひどい商品を売っている」と叫んだりすると、場合によっては前述した強要罪、業務妨害罪、信用棄損罪などが成立し、逮捕・勾留されてしまうこともありますので、十分に注意しましょう。
あと、収益に結び付くという動機の下、ユーチューブのような動画サイトやブログもなどで、お店や他人を言論で攻撃するような行為も、名誉棄損罪や侮辱罪、信用棄損罪、業務妨害罪となり得ますので、十分に注意しましょう。