理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

特許実務-間接侵害のリスクが高い部品・部材

 

f:id:masakazu_kobayashi:20201016190346j:plain

間接侵害等に関するプレゼンの項目

 

はじめに

 

 本日、私が業務委託で働いている会社で、間接侵害等のリスク分類とそのポイントについてプレゼンをしました。同タイトルで総論のお話をし、各論として出席者から事前に頂いた5件の間接侵害が問題となる具体的事例での解説をしました(各論については、社内の実際の事例なのでここで説明はできませんが)。

 

 総論部分の内容については、実は、以前記事にしました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

  

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 今回のプレゼンで、色々質問を頂いて、あらためて自分の理解の不十分さも認識するとともに、同時に大変勉強になりました。

 

 やっぱり、何かを理解するのに一番良いのは、事前準備してプレゼンをし、質問攻めにあうことですね。大変ではありますが。

 

 さて、今日プレゼンをし、出席者の皆様から質問を頂き、あらためて、間接侵害のリスクが高い製品(部品・部材等)とは、どういうものかについて考えさせられましたので、ちょっとまとめておきたいと思います。

 

間接侵害のリスクが高い部品・部材等

 

 (最終的に他社の部品・部材等と組み合わされる)自社が製造・販売する部品・部材等について、間接侵害のリスクが高い場合について検討してみたいと思います。

 ここでは、コア技術品と呼ぶことにしたいと思います。

 なお、機械部品やモジュールを想定しています。材料とかは、(後述する特許性の判断のところで)ちょっと考え方が変わってくるかもしれません。

 

コア技術品に、汎用性がある場合

 

 まず、ネジのようないわゆる汎用品(特許法101条2号、5号参照)であれば、そもそも、間接侵害品となるリスクはありません。

 

 しかし、汎用品ではないとしても、それ自体で特許性のある技術的特徴を有するコア技術品であり、かつ、それが汎用的に用いられるものである場合には、(製品としては、様々なところで使用されるので、売上げも伸びて素晴らしいのですが、)その後の流通や最終製品のバラエティを把握することが難しくなるので、(思わぬところで特許権侵害が生じてしまうという意味で、)間接侵害のリスクが高くなってしまいます。

 

 逆に、汎用性が高くなければ、その後の流通や最終製品のバラエティは把握しやすいので、間接侵害品としての特許クリアランスは、調査範囲が限られるという意味において、比較的容易ということになります。

 

コア技術品が、他社の「それなりの」部品・部材等と組み合わされて製品化される場合

 

(1)コア技術品が、他社の「しょうもない」部品・部材等との組合せで利用される場合

 

 まず、コア技術品が、他社の「しょうもない」部品・部材との組合せで利用される場合は、確かに、コア技術品が、不可欠品(特許法101条2号参照。)などの間接侵害品に該当するリスクは高まります。

 

 しかし、実際には、それほど深刻な問題にはならないかもしれません。

 

 というのは、コア技術品について、自社で特許出願をし(特許化し)ておけば、それが公知になりますので、他社によって後に出願される(「しょうもない」部品・部材との)組合せ発明については、予め他社による特許化は阻止され、あるいは、特許化されたとしても、自社の公知技術に基づいて後に無効化することが比較的容易であると思われるからです。

 

 したがって、この場合、(客観的要件等を満たして)間接侵害となるリスクが高くても、同時に、特許を無効化できる可能性も高いことになり、リスクは相対的に下がることになります。

 

(2)コア技術品が、他の「それなりの」部品・部材と組合せで利用される場合

 

 一方で、コア技術品が、様々な他社の「それなりの」部品・部材(コア技術品と同等な部品・部材等)との組合せで利用される場合は、リスクが高くなります。

 

 前述のように、たとえ、自社がコア技術について特許出願をし、公知となっていても、(1)の場合とは異なり、他社が組合せ発明について特許権を取得してしまう可能性が高く、しかも、無効化できない可能性が高くなるからです。

 

 これは、なかなか厄介です。

 

 リスク軽減策としては、自社として、想定される様々な組合せ発明についても特許権を取得しておくということが考えられますが、これはあくまでも理想論です。

 

 コア技術品が汎用品であればあるほど、自分の事業と関わらないところでの組合せ発明については、出願段階では(従属項を設けるなどして)自社として組合せ品まで特許化(公知化)することは、そもそも想定すること自体が難しいかもしれませんし、後に組合せ発明を別出願するとしても、事業外の発明であったりすると、コストやリソースとの関係で、現実的には難しいからです

 

 いや、「素晴らしいコア技術品については、あらゆる組合せをどんどん特許出願して、事業を拡げていきましょう」と、法律特許事務所の人間としては言いたいところですが・・・(笑)。

 

最後に

 

 まとめると、

(1)汎用品ではないものの、それ自体で特許性を有する技術的特徴を有し

(2)(他の部品・部材等と組合せるなど)汎用的に用いられ

(3)他社の「それなりの」部品・部材等と組み合わされる

(4)部品・部材等

 

は、製品としては売上げに寄与する素晴らしい性質を有しているのですが、

 

一方で、

 

(1)自社が、様々な組合せ発明について、自社の事業外であるなどの理由で、特許を取得する現実的可能性が低い一方、

(2)他社に、組合せ発明について特許権を取得され、

(3)汎用的に用いられるが故に、流通や組合せ製品のバラエティを把握することが難しく、

 

その結果、(思わぬ組合せ製品との関係で)間接侵害とあってしまうリスクが高く、特許クリアランスが難しくなります。

 

 そして、お金持ちの大企業は、訴訟対象になりやすいので、特に注意ですね。

 

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ
にほんブログ村

 


弁護士ランキング

 


弁理士ランキング