はじめに
今回は、性交等についての犯罪である強制性交罪(昔は、被害者が女性に限定された強姦罪と言われていました。)について取り上げようと思います。
これも、定期的に、芸能人等の事件で話題になりますね。
強制性交罪
この犯罪が成立する要件は、
① 故意に
② 暴行又は脅迫を用いて
③ 性交等をする
ことですが、実務で実際に争われるのは、同意があったか無かったという点です。
確かに、性交等はあって、まぁ、性交は、通常、何らかの有形力の行為が伴ってしまうので、「暴行」にも該当し、その故意(行為に及ぶ意図)もあったけど、被害者(相手方)の同意があったから、無罪だ、というわけです。
犯罪一般で、同意があると犯罪にならないものは結構あります。
・住居侵入罪(友達の許可を得て友達の家に入っても住居侵入にはならない。)
・傷害罪(ボクシングなど)
・強制わいせつ罪(男女等のカップルのイチャイチャ)
なお、殺人は同意があっても同意殺人罪・嘱託殺人罪になります。最近お医者の件で話題になりました。
今回の強制性交罪も同様で、通常の男女が同意のもとで行えば、犯罪にはなりません。
(ただし、18歳未満の者に対しては、児童福祉法違反がありますので、注意。)
実際の事件で多いのは、いきなり加害者が見知らぬ被害者を襲ったような事件ではなく、加害者・被害者に一定の人間関係があり、かつ、同意らしきものはあったかもしれないが、とにかく、被害者が「同意は無かった。無理やりやられた。」と後で警察に駆け込むという事件です。
① 何となく付き合ってるか付き合ってないか微妙な関係において、性交はあったが、後で、被害者が後悔し、後で「同意がなかった」と主張する場合
② 何となく付き合ってるか付き合ってないか微妙な関係において、被害者が酔っ払ったところ、加害者は大丈夫と思って、性交に及んだ場合(準強制性交罪が問題となります。)。被害者は、酔ってはっきり覚えていないが、いずれにしても、後で後悔して、「同意」がなかったと主張する場合
③ 被害者に、別のパートナーがおり、他者との性交がばれてしまったので、被害者としては、無理やりやられたと言うことで、保身を図る場合
などがあります。
争いになった場合(加害者は被害者の同意があった、被害者は同意していないと主張する場合)には、真に同意があったか無かったかは、神様しか分かりません。
しかし、現実には、被害者側の供述(同意していない)が信用されてしまう傾向があります。痴漢で、被害者側の供述が信用されやすいのと同様です。
そうすると、加害者の立場に立つことが多い人(典型的には男性)は、被害者になり得る立場の人(典型的には女性)との性交の際には、非常に気を付ける必要があります。
といっても、「何にどう気を付けるんだ!」という話ですが、
① 通常、性交の前に一筆書いてもらうというのも(笑)想定し難いですし、仮に、署名・押印ありの同意書をとったとしても、無理やり書かされたと言われれば終わりです。
② 口頭で、同意文言を録音するというのも、ちょっとあれですし。
結局のところ、状況証拠勝負になるかもしれません。
たとえば、10年付き合って、同棲もしており、男女トラブルもない(別れ際にない)、という状況ですと、あとで女性が同意がなかったとしても、状況からみれば、通常は強制性交等には該当しません。
もっとも、初対面で、飲みに行って被害者がかなり酔った状態で、そのままホテルに連れて行って性交に及んだ場合は、あとで、被害者から「同意がなかった」と言われると、たとえ、ホテルに向かうときに、加害者が被害者に「ホテル行くよ。いいよね。」と言ったのに対し、被害者が複数回うなずいたという事実があっても、「同意なし」と評価される可能性が高いです。まぁ、ホテルで、男女が互いに非常にいちゃついているのを従業員が見ていたなどの証言があれば、何とかなるかもしれませんが・・・。
まとめ
結局のところ、同意があったといえる十分な状況が整っていれば問題は少ないのですが、初対面の場合とか、そう長くない付き合いなのに飲酒の上で、性交に及ぶのはちょっと危ないです。
危ない橋は渡らないようにしましょう。
罪となるとすると結構重い(法定刑は5年以上の有期懲役)ので、逮捕・勾留もされますし、勾留が長引くと人生が吹っ飛びますので。