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刑事事件-弁護士に対する不信感

 

はじめに

 

今回は、国選の刑事事件を担当していると度々出くわす国選刑事弁護人に対する不信感について書きたいと思います。

 

初回接見にて

 

被疑者国選事件(勾留決定された被疑者に対して、本人の希望で選任される国選事件)で初回接見(=面会)に行くと、結構な頻度で、

 

どうせ、国選だから、何にもやってくれないんでしょ?」

 

と言われることがあります。

 

国選弁護を希望しておきながら、いきなり、弁護士を突き放すこのフレーズ。でも、結構よく耳にします。しょっぱなから、ガクンときますね。

 

理由を聞いてみると、大半は、以前の国選弁護人で嫌な思いをしたから、というものです(一部は、他人からそう聞いたから。)。

具体的には、

 

・弁護人が、1回しか面会に来てくれなかった。

・弁護人が「必要最低限しか活動しない。」と言い、家族や友人への連絡もお断り。

・何か言う度に、弁護士が「それは、お前(被疑者)が悪いんだ」と繰り返す。

 

といったことをよく聞きます。

 

ちなみに、第一審の弁護人がひどかったから、判決には納得したものの、控訴(不服申し立て)をしたという被告人までいます。

 

被疑者・被告人にとって、結果はもちろんそうですが、(たとえ結果が出なくとも、これだけ弁護人が自分のために頑張ってくれて、それでもダメだったから仕方がないという)納得感も重要だということがわります

 

逆に、(同業者の肩を持つつもりはありませんが)弁護士の立場からよく聞くのは、

 

・私は、弁護活動はするが、被疑者・被告人の便利屋ではない。

・被疑者が、非協力的だからだ。

・仕事は、この国選刑事事件だけではない、他にもたくさんの仕事を抱えており、この国選刑事事件ばかりに時間は使えない。

 

と言った愚痴をよく聞きます。

 

国選刑事事件の場合、被疑者・被告人は、資力が乏しい等の理由により、国選弁護人を付けて欲しい旨依頼はできますが、私選(弁護士と直接契約して弁護活動を依頼する場合)と違い、弁護士を選ぶことはできません

 

ですので、1年目の新人弁護士から80歳を過ぎたベテラン弁護士まで、どんな弁護士に当たるか全く分かりません。

また、弁護士の中には、もの凄く熱心で有能な弁護士もいますし、国選事件は義務である公益活動の一つだから仕方なくやっているという、あまり熱心ではなく、経験も乏しい弁護士もいるかもしれません。

当然、被疑者・被告人と弁護士との間の性格等によるミスマッチもおこります。

(私も、被疑者・被告人と「合う」「合わない」というのは感じます。これは、民事事件を依頼される場合も同様です。)

 

私は、年齢は中間ぐらい(経験は中堅)、自分では熱心な方だとは思っていますが、それでも、被疑者・被告人から、文句を言われることも無くはありません。

 

国選弁護人のスタンス

 

どうも、色々聞いていると、国選弁護人をされる弁護士の先生のスタンスは、3種類のようです。

 

①熱心に弁護活動し、弁護活動以外も、被疑者・被告人のために極力何でもやってあげる弁護人

 

②熱心に弁護活動するが、弁護活動とは直接関係のないこと(たとえば、雑誌の差入れや友人への連絡)はやらない弁護人

 

不熱心、したがって、必要最低限の弁護活動かそれ以下の活動しかやらない弁護人。

 

私は、①と②の間くらいでしょうか。最初は、①のスタンスでやっていましたが、それこそ便利屋のように弁護士を使おうとする被疑者もいらっしゃって、そのような経験もあって、雑誌の差入れ等の弁護活動と直接関係のないことは、家族等にやってもらうようにお願いしています。もっとも、誰にも頼れない場合には、やってあげることもありますが・・・。頼み方とか態度とかもありますよね、私も人間ですから。

 

③の弁護士は、国選事件やらなきゃよいのにと思います。国選事件以外の他の活動でも公益活動になるので、国選事件を担当することは必ずしも必須ではないので。

 

標題の弁護人に対する不信感を、初対面でいきなりぶつけられると、私も人間なので、正直、弁護活動をやる気が失せてしまいます。

 

もっとも、もう選任されていますので、「私はちゃんとやりますよ。」と言って、ちゃんとやりますが。しかし、そういう被疑者・被告人に限って、もの凄くデマンディングだったりします・・・。

 

国選弁護人の報酬

 

話は変わりますが、国選弁護人の報酬は、活動内容に比べ、数万円と少ないです。

ちなみに、私選であれば、被疑者段階で着手金20万円~、無事起訴されずに起訴猶予等で釈放されれば、成功報酬として30万円~といったところです。

 

詳しくは、下記記事をご覧ください。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 

もっと、弁護士からは、「国選弁護人の報酬をもっと上げるべきだ!」とよく耳にします。「こんな少ない報酬だと、モチベーションが上がらない。」などと聞きます。

 

私は、全く反対意見で、国選弁護の報酬は、活動内容に対して少額であるのは確かですが、現状で良いと思っています

 

理由は、もし、国選弁護の報酬が上がってしまうと、弁護士にとって食扶持の一つになり、刑事事件にさほど熱心ではない弁護士も大量に国選事件に群がり、しかも、ろくに弁護活動をやらずに(あるいは、定型的にこなし)、少ない報酬だが件数で稼ぐという「儲け口」として成立してしまう恐れがあるからです。

弁護士業も、所詮は、自分が生活するための商売であり、弁護士も普通の人間ですから。

 

実際、国選弁護の活動は、(必要最低限しか面会に行かないなど)さぼろうと思えば、いくらでもさぼれてしまいます。

 

現状の少ない報酬であれば、明らかにペイしないものの、それでも「刑事弁護が好きだ」「弁護士たるもの刑事弁護はしっかり取り組むべきだ」などと考える熱心な弁護士だけが弁護活動をすることになるので、質が保たれるからです(それでも、上述のように、一部例外はいるようですが・・・)。

 

まとめ

 

ということで、まとめると、国選弁護人に対しては、必要な弁護活動に関しては、遠慮なく、お願いしましょう。

 

一方で、弁護活動に直接関係のないことは、あくまでもお願いベースなので、国選弁護人には遠慮がちに頼むようにし(笑)、できれば、家族や友人に頼むようにしましょう。

 

資力があって、本当に色々と熱心にやってもらいたい場合は、私選で依頼しましょう。特に、民事事件も絡むような場合には、私選で依頼する方がスムーズです。

 

ただし、家族等への連絡自体は、普通は、国選弁護人にお願いできると思います。もっとも、証拠隠滅に加担するかもしれないという疑いがある場合等は除きますが。

 

世の中の方の大半の方は、弁護士と関わるのは、人生で一度、2度という方も多い中、弁護士のイメージが悪くならないように(弁護士に対する不信感、悪い先入観を持たれないように)、国選刑事弁護に限らず、ちゃんとしなければといつも思っています。

 

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