はじめに
某ユーチューバーが、スーパーで(ちょっと韻を踏んでいる感じですね。)、会計前に、魚の切り身を食べ、空になった容器をレジに持っていったところ、窃盗罪で逮捕されたというニュースを見ました。
同じユーチューバーが、いろんなところに立ち寄ってコロナを拡散してしまったことも、話題になっていますね。
今回は、このユーチューバーのスーパーでの行為について、窃盗罪の成否を検討したいと思います。
窃盗罪がいつ成立するか(既遂時期)
(他人の意思に反して、)他人の財物を、自己の支配下に置いたときに、窃盗罪が成立(既遂)になります。
この事件との関連で言うと、たとえば、食品を、(スーパーの専用のカゴの中に入れるのではなく、)自分の服のポケットの中に入れたり、自分のカバンの中にしまったりすると、自己の支配下に置いたことになるので、窃盗罪が成立します。
ポケットやカバンにしまってしまうと、そのまま知らないふりをして、会計を通り抜けて、店外へ出てしまえますものね。
今回のユーチューバーの件も、魚の切り身をお腹の中に入れてしまったようなので(笑)、ポケットやカバンとは違って、もはや取り出せませんので、自己の支配下に置いたことにり、理論的には窃盗罪が成立するでしょうね。
でも、あとで空になった容器を会計に持っていっているので、支払う意思はあったわけですから、(けしからん行為であることは確かですが、)窃盗罪が成立するとしても、逮捕までするというのも、どうかなとは思いましたが。
まぁ、けしからん行為だから、理論上成立する窃盗罪で逮捕してやったというのが実情でしょう。
スマホで録画していたのだから、客観的証拠もばっちりですね。
ちなみに、テレビで見ましたが、万引きGメンは、万引きした人が店外に出るまで待つようです。そして、万引きした人が店外に出た時点で、「ちょっと、お客さん、会計していない物あるよね。」と声をかけます。
前述のように、窃盗の成立時期は、ポケットやカバンにこっそり商品を入れた時点なのですが、その時点で、万引きGメンが万引きした人に声をかけてしまうと、
「いや、会計するつもりだったよ。」
と言い訳されてしまいますので、その言い訳ができないように、店外に出るまで待つのだと思います。店外に出た後で、「会計するつもりだった。」というのは通じませんよね。
ドイツのスーパーで
私は、ドイツのミュンヘンで、2016年7月から2018年6月まで2年間生活していました。ドイツは、日本と違って、外食が結構高いので、ほとんど毎日スーパーに行って、自炊をしていました。
ドイツのスーパーでは、(会計時に有料で紙袋を買うこともできますが、)布製のマイバッグを持参している人が多かったです。エコですね。私もマネしてそうしていました。
日本も、7月からプラスチックバッグが有料になりましたので、同じようになりそうですね。
ドイツのスーパーで驚いたのが、お客さんが、会計前に、マイバッグにどんどん商品を入れていくことです。日本だと、上述のように、窃盗罪になりますよね。
ドイツでは、会計時には、自分が買う物を全て、ベルトコンベアーに乗せて、レジの人が一つずつピッとして、合計を出します。
つまり、買い物と会計の流れとしては、
① 商品を、マイバッグに入れる。
※日本なら、商品を自己の支配下においたとして、理論上、窃盗罪の成立する!
② マイバッグから商品を取り出して、レジのベルトコンベアーに乗せ、会計をする。
③ レジの人がピッとした商品を、再び、マイバッグに入れていく。
④ そして、全てのピッが終了して合計が出た時点で、会計する。
という流れでした。
また、ドイツのスーパーでもっと驚いたのが、冒頭の窃盗罪で逮捕された某ユーチューバーさんのように、会計前に、商品を飲んだり、食べたりする人が結構いたことです(笑)。
親と一緒にいる小さい子どもが、会計前に商品であるお菓子を食べ始めるくらいは、ご愛嬌だと思います。しかし、大の大人が、缶ビールやジュースを飲み始め、飲みかけのものをレジの人に見せて、会計するというのを何度か見かけました。もちろん、会計は後でちゃんとしているのですが。どうも、大々的にやらなければ、許容されているような雰囲気でした。
私は、そうはいっても日本の弁護士なので、いつも、ドイツのスーパーで、会計前に食べ始めたり、飲み始めたりする人を見るたびに、
「はいっ、窃盗罪成立!」
と心の中で呟いていました。
そういう私も、会計前に、(食べたり飲んだりはさすがにしませんが、)マイバッグに一旦商品を入れていたので、自分の行為についても、
「はいっ、窃盗罪成立!」
と心の中で呟いていました。
日本に帰ってから、同じことをしてしまうと、窃盗を疑われ、場合によっては窃盗罪で逮捕されてしまいますね。
これからはマイバッグを使うことが増えますので、ドイツでの昔の「悪い」癖がでないように、気を付けなければと思っています。