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特許入門13(他の技術分野への発明の適用)

はじめに

 

久しぶりに、特許入門に戻ってきました。

 

従来、「円形断面の鉛筆」しかなかった仮想世界において、机からの転がりを防止できる六角形断面の鉛筆の発明した場合、この発明をどう権利化するか(具体的には、どのようなクレームに書くべきか)というお話をしてきました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

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復習すると、

発明者は、鉛筆の転がりを防止するために、「六角形断面の鉛筆」を発明しました。

 

しかし、より広い権利をとろうとするために、上記文言の形式上位概念化により、「多角形断面の筆記用具」というクレームを考えました。

 

・六角形→(上位概念化)→多角形

・鉛筆→(上位概念化)→筆記用具

 

更に、鉛筆の転がりを防止するという課題を解決するために形状を工夫するという技術思想課題解決原理を追求していくと、鉛筆の周面において、どこかに「平坦面」を有しさえすれば、技術思想を具現化できます。

 

そこで、「(転がり防止のための)平坦面を有する筆記用具」という、より広いクレームを考えることができました。

 

今回は、鉛筆に端を発した発明につき、他の技術分野への適用について、考えてみたいと思います。

 

「六角形断面の鉛筆」の他の技術分野への適用

 

ところで、IPランドスケープという用語が最近流行っていますね。知財分野の意識高い系としては必須の用語と言えます(笑)。

 

一昔前は、知財でのおしゃれ用語と言えば、ポートフォリオでしたでしょうか。私が特許庁に入庁したときに、よく耳にしました。

 

IPランドスケープについては、意味が分からなくとも、とりあえず、

これからは、(経営戦略において)IPランドスケープが重要である。」

と言っておけば、意識の高い若手の知財実務家は「うん、うん」とうなずいてくれるはずです(多分)。

 

Wikipediaによると、IPランドスケープとは、自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すもの、端的には、知財を経営戦略に生かす、というものだそうです。

 

ja.wikipedia.org

 

抽象的な用語の羅列で、「ちょっと何言ってんだか分からない。」という感じですが、この記事では、もう少し地に足のついた具体的な話をしたいと思います。

 

あなたの会社は、文房具メーカーで、ある従業員が、上記の仮想事例(円形断面しかない鉛筆の世界)で、六角形断面の鉛筆を発明しましたとします。

 

また、六角形鉛筆の仮想事例ですいません。

 

これについて、前述のように、広いクレームで、特許権を取得することも大事ですが、それとは別に、この素晴らしい発明を、他の分野でも活用できないか(独占できないか)、ということも考えてみた方が、ビジネス・チャンスが広がる可能性がありますよね。

 

 

そこで、これ。マイクです。

 

f:id:masakazu_kobayashi:20200720213917j:plain

出展(https://www.denchiya.net/c/sound/soundvictor/WM-P970

 

あなたの会社は文房具メーカーですので、鉛筆の発明をしただけかもしれません。しかし、その発明技術的思想あるいは課題解決原理(転がり防止のために形状を工夫する)というのは、他の技術分野でも利用できるはずです。

 

机の上に置かれて、鉛筆と同様に、転がり落ちてしまうもの・・・たとえば、マイクです。

 

ほら、もし、マイクもこれまで円形断面のものしかなかったとすれば、マイクの技術分野にもビジネスを広げられそうです。

 

他の技術分野への適用の際の工夫

 

それでは、あなたの会社は、六角形断面のマイクを製造し、マイク業界に殴り込みをかけますしょうか・・・

 

これは、うまく行くかもしれませんし、うまく行かないかもしれません。

 

他の技術分野に進出する際には、その業界のことを良く知らないと行けません。既に寡占状態にあるかもしれないし、参入障壁はないにしても、事実上参入が難しいかもしれない。どこかのマイクメーカーと組んだ方がよいかもしれません。ちょっと経営の話が出てきたので、IPランドスケープとはいかないまでも知財戦略っぽくなってきました(笑)。

 

私は経営者ではありませんので、ここで、特許の話に戻したいと思います。

 

既に、マイク業界には、円形のマイクが販売されている。転がり落ちないという素晴らしい六角形断面のマイクであっても、なかなか、既存の市場に食い込むことは難しいかもしれません。

 

そこで、「マイクの頭部分に外付けする多角形ゴム」というのは、どうでしょうか。

なお、上の写真のマイクの先端部分の多角形(8角形?)は、外付けのものか、ゴム製のものかは分かりませんが、このイメージのために引用させて頂きました。

 

外付けにすれば、既存のマイクに装着可能ですので、新しいマイクを売るよりも、簡単に市場に食い込めそうです。マイク自体を売るよりは利益が低いかもしれませんが、利益率と量で良いビジネスになるかもしれません。

 

ここで、「マイクの頭部分に外付けする多角形ゴム」というのは、多角形断面の鉛筆との関係で、新たな発想(発明)のように思われますが、そうでもありません。

 

私のように7年半も審査官をしてしまうと、同じような特許的発想が繰り返し出てきますので、その特許的発想が身についてしまいます。

 

たとえば、「別体⇔一体」(従来は別体であったものを一体化するとか、逆に、従来は一体であったものと別体化する)は機械分野ではよくある特許的発想です。

 

たとえば、鉛筆付き消しゴムというのは、従来、別体であったものを一体にした例ですね。

 

この仮想事例でも、六角形断面の鉛筆を、マイクに適用する際に、六角形の形状を一体ではなく、別体にしてみるという特許的発想をすれば、従来の円形断面のマイクへの適用が容易になります

 

そして、別体にして嵌め込むのですから、柔軟性のあるゴムというのが常套手段かもしれません。

 

そんなに凄い発想ではなく、ごく普通の特許的発想です。

 

このようにして、鉛筆の分野から、マイクの分野へ、単に、多角形のゴムの輪を作ることで進出し、市場を独占できるかもしれません(あくまで仮想です。実際にはそううまくは行かないかもしれません。)。

 

特許的発想には、他にも色々あります。企業秘密なので、ここで公開するのは、「一体⇔別体」だけに留めておこうと思います。

 

・・・嘘です、また、別の機会に、ご説明したいと思います。

 

まとめ

 

転がり防止のための六角形断面の鉛筆の発明から、同じ課題を持つマイクについて、その適用の際における特許的発想について説明しました。

 

皆様の事業における発明においても、①その技術的思想ないし課題解決原理を捉えて、他の技術分野に進出できないか、②進出する際に、どのような適用の工夫が考えられるか、を考えてみてください。良いビジネスが生まれるかもしれません。

 

IPランドスケープという用語が使いたくて、経営にまで言及してみましたが、まぁ、知財戦略の一事例と言っても、それほど言い過ぎではないかもしれません。

 

私は、性格柄、いつも意識が低いので、無理してでも意識高い(系)のように振舞おうと思ってはいるのですが、頭も体もついていきません。

 

まぁ、地に足の付いた地道な仕事をしていこうと思います。でも、口だけの知財コンサルみないなものも楽そうなのでやってみたい。言い過ぎました。

 

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