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刑事事件(コロナ関連-不正競争防止法違反も!)

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漂流教室楳図かずお

 

はじめに

 

コロナ関係のニュースにもそろそろ飽きてきたところですが、都心を中心に、また感染者が増加傾向にあり、まだまだ予断を許さない状況のようです。

今日(令和2年7月2日)は、久しぶりに、東京で感染者100人超えだそうです。

 

さて、ニュースを見ていると、コロナ関連の刑事事件(逮捕・勾留)も多いようです。

 

これらは、「未知の不安・恐怖」が生み出す事件とも言えそうですね。

 

最近は、ついに、私の専門分野である知的財産法分野の法律の一つ、不正競争防止法違反でもコロナ関連で逮捕者が出たようなので、おおっと思い、記事にすることにしました(この件は知財事件ではありませんが。)。

 

今回は、コロナが関連して、刑事事件になる場合(実際の事件と可能性のある事件)をまとめたいと思います。

 

業務妨害

 

飲食店などで、「俺はコロナだ」などと言った場合、(本当の場合はもちろん、嘘であても、)飲食店はうぁーっとなり、閉店し、消毒をしたり、従業員の検査などを強いられることになります。

ですので、お店に対する威力業務妨害になります。

何件か威力業務妨害罪で事件が発生しているようですね。

 

今年の3月に愛知県の蒲郡市での事件では、家族などに「コロナばらまいてやる」などと言って出かけ、パブで従業員らと密着したり、カラオケをしたりしていたようです。

この場合は、従業員などに対しては、「俺はコロナだ」と直接言ったわけではないようなので、(相手の意思を制圧する)「威力」というよりは、(相手の錯誤を誘発する)「偽計」業務妨害罪が成立するのかもしれません。

なお、結局、加害者は、コロナで亡くなったそうです。

 

一方で、同じ3月に、(コロナ関連ではありませんが、)ある方が、店員さんに「僕サーズ」(SARZ)と言ったと、間違って受け取られてしまい偽計業務妨害で、誤認逮捕がされた事件がありましたね。

現在は、記事が消されていますね。実名報道だったのでしょうか。

 

ビデオカメラという客観的証拠を確認せず、店員の供述のみで逮捕(身柄拘束)に至ったという、酷い事件でした。んー、これ、誤認逮捕ではないでしょうか。

 

(未知の)恐怖・不安というのは、一般人だけでなく、警察までもこのような無謀な行動に至らしめるわけですね。本当に恐ろしい。

 

傷害罪

 

自分がコロナに感染していることを認識しながら(故意)、他人に接触してコロナに感染させた場合には、傷害罪が成立し得ます。

先の蒲郡市の事件も、傷害罪の成立もあり得たかもしれません。

 

しかし、因果関係が認められるか否かは、(直接殴って怪我を負わせるのとは違い、)病気の感染ルートには様々な外因もあり得ますので、現実的には難しいところです。

また、被害者が亡くなってしまった場合には、傷害致死罪ということもあり得ます。

 

一方で、殺人罪ですが、コロナの感染致死率が数%と比較的低いですので、コロナに感染させてやろうという意図があっても、(ナイフで胸を刺す等の場合と比べて)コロナに感染させようとする行為が、死に至る危険性が類型的に高くない以上、殺人罪というのは難しいかもしれません。

 

もっとも、被害者が持病を持っていたり、高齢者であって、コロナに感染すれば、ほぼ確実に死に至ってしまうことが明らかで、加害者が、それを認識しつつ、被害者をコロナに感染させようとしたという状況が揃えば、殺人罪も理論的にはあり得るかもしれません。現実には、殺人罪での逮捕は限りなく小さいと思われます。

 

一方で、刑法には、過失傷害罪があり、自分がコロナに感染していることを容易に知り得たにも関わらずこれを怠って他人に感染させてしまった、あるいは、自分がコロナに感染しており、他人との接触に注意すべきなのに、感染防止措置を怠り、感染させてしまったという場合には、過失傷害罪もあり得ます。

しかし、過失傷害罪は30万円以下の罰金ということもあり、そのような件があったとしても、逮捕にまでは至らないでしょう。

 

不正競争防止法違反

 

不正競争防止法は知的財産法分野の法律ですが、コロナ関連で、不正競争防止法違反で、逮捕者が出ました。

 

news.yahoo.co.jp

 

「従業員が検査で全員陰性だった」という虚偽の広告をしたということです。

 

不正競争防止法21条2項5号に、誤認惹起表示罰則規定があり、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金という、まぁまぁ重い罪が規定されています。

 

不正競争防止法違反の刑事事件というのは、営業秘密の漏洩という重大な事案はときどきありますが、誤認惹起表示では、あまり逮捕されたりということは少ないです。

 

今回の逮捕は、けっこう有名なお店だったらしいので、「こういうことやると逮捕するよ」という見せしめに近い逮捕でしょうか。

僕サーズ事件もそうですが、コロナ危機に接して、警察が様々な取り締まりを強化している傾向にあるのも気になるところです(監視社会)。

 

まとめ

 

コロナ関連で、業務妨害罪、傷害罪、不正競争防止法違反の罪など(他にもいくつか考えられます。)、現実に刑事事件で逮捕者が出たり、刑事事件になり得るものがあります。

 

一方で、この未知の不安・恐怖は、人々に犯罪をさせたり、また、先に述べたように、警察の行動にも(取り締まり強化や誤認逮捕に至るまで)変化をもたらしています。

 

まずは、私も含め、下記の日本赤十字社のビデオを見たりして落ち着く必要がありそうです。

 

そして、時間がありましたら、冒頭の写真の「漂流教室」という楳図かずおさんのすごく面白い漫画がありますので、是非読んでみてください。

人間が危機に瀕したときの醜い部分が余すところなく描かれていますペストの話も出てきます)。

 

 

www.youtube.com