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その弁護士は、本当の特許弁護士か?

その弁護士は本当に特許弁護士か?

特許の紛争案件は、一般的な紛争(賃貸借をめぐる紛争や、借金問題や、相続問題など)と違い、独特の法律と独特の実務があるので、普通の弁護士はなかなか扱いません。特許の紛争を扱える弁護士を、ちょっと格好つけて「特許弁護士」と呼んでみることにします。

私も、理系で、元特許審査官で、今も実際に特許紛争扱っていますので、一応、特許弁護士のはしくれです。ときどき、他の知り合いの弁護士から、手に負えないからと、特許関係の紛争等の案件を紹介してもらえるので、大変有り難く思っています。

 

最近は、弁護士も食べていくのが大変なので、あまり実務のことを知らなくても、特許紛争や他の知財紛争に手を出す(ウェブサイトで専門だと謳う)"特許弁護士"も増えているようです。簡単な解説付きの立派なホームページは、いかにも専門家のように見えますね。

 

そうすると、特許を本当に扱える弁護士を見分けるのが難しい場合があるかもしれません。

 

特許弁護士の探し方(見分け方)その1

一番いいのは、知り合いの弁護士に紹介してもらうことです。特許を扱える弁護士(事務所)はだいたい決まっています。ですので、その知り合いの弁護士さんは、あなたに、本当の特許弁護士を紹介できるはずです。

刑事事件に巻き込まれた場合もそうですが、やっぱり、最初に相談できる知り合いの弁護士がいるというのはとても大事だと思います。

 

特許弁護士の探し方(見分け方)その2

次に、その弁護士が本当にちゃんと特許紛争を扱えるかは、たとえば、以下の質問をしてみるとよいかもしれません。

 

特許権侵害訴訟の(=特許権に基づいて侵害者に裁判を提起する)際、最初に、どういう証拠を裁判所に提出するのですか?」

 

特許権侵害訴訟の要件事実は本に載っており、ちょっと勉強していれば分かりますが、具体的に各要件事実(=侵害を立証するための根拠となる事実)を立証するための証拠として何を提出するかは、実際に実務(特許権侵害訴訟)を扱っていないと知らないことが多いです。各要件事実毎に通常提出すべき証拠が即答できないと、その「特許」弁護士は、ちょっとあやしいかもしれません。

よく、私も経験するのですが、相手方である原告の代理人弁護士が、訴状とともに提出されるべき証拠を揃えておらず、裁判所から提出を促されることがあり、その場合、「あっ、この原告の代理人は特許紛争やったことないな(慣れてないな)。」と分かります。とりあえず、この記事では、答えを書かず、また、いずれ書こうと思います。

 

次に、ウェブサイトなどで特許弁護士を探す場合を考えると、用語の使い方で、素人の"特許弁護士"だと分かるかもしれません。

それは、「特許発明」、「特許」、「特許権」の用語の使い分けです。

 ・「特許発明」を「実施する」

 ・「特許」査定、「特許」の無効 ※「特許」は審査官のする「行政処分

 ・「特許権」の行使、「特許権」の侵害 ※「特許権」は文字通り「権利」

というふうに、3つの用語は厳密に意味が違います。

 

特許弁護士の探し方(見分け方)その3

これらを誤って使っている(例えば、特許権の無効(正しくは、特許の無効)、特許の実施(正しくは、特許発明の実施。行政処分は実施できませんよね。)、あるいは、特許の行使(正しくは特許権の行使。行政処分は行使できませんよね。)といった用語の使い方をしている人は、素人の"特許弁護士”かもしれません。

 

もっとも、私も含め、特許弁護士でも、口頭では、厳密・正確には使っていない場合もあります。

また、慣行として、権利の意味で「米国特許」と言ったりしますので、微妙です。私のセミナーのタイトルも、キャッチーさを優先して「強い特許とは?」というフレーズを使っていたりします。(正確には、行政処分たる特許が、「強い」というのはおかしいですね。正確には、「強い特許権とは?」です。

 

"特許弁護士"の文章(準備書面や、雑誌での解説)を読んだとき、あまりにも先の3つの用語の使い分けが滅茶苦茶だと、特許紛争の素人だと分かります。

もっとも、ウェブサイトの内容は、既存の説明の切り貼りだったりするので、そのアラは見つけにくいかもしれません。

 

理系である必要はないが

特許紛争は、発明(技術)を扱うので、理系弁護士ではないとダメと思う方もいらっしゃることがありますが、そんなことはありません。文系(たとえば法学部卒)の弁護士でも、立派な特許弁護士はたくさんいらっしゃいます。うちの事務所の文系の弁護士さんも楽々と特許紛争を扱っていらっしゃいます。

もちろん、私のように理系だと、技術者さんとの意思疏通が円滑だったり、技術の理解が早かったり、その技術分野の弁理士さんがいなくても対応できる場合も多いので、メリットではあります。

もっとも、バイオとか理解が難しい分野もありますので、私も、その場合は、専門の弁理士さんと協力して、特許紛争を扱ったりします。