理系弁護士、特許×ビール×宇宙×刑事

理系弁護士・弁理士。特許、知財、宇宙、ビール、刑事事件がテーマです。

刑事事件-お店にいちゃもんをつけてしまうと・・・

はじめに

 

 あるユーチューバーが、衣料品店で買ったブランドのシャツが偽物だったと店員に迫り、店の業務を妨害し、ユーチューブにその様子を動画でアップして店の信用を毀損した、という容疑で逮捕されたそうです。

 

www.sankei.com

 

 今回の事件は、前に紹介したスーパーで会計前に商品を食べてしまった窃盗の事件と同じ人ですが、これよりも以前の事件のようです。

 

 「また、やった」というよりは、それ以前の事件なので、余罪でしょうか。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

  

店にいちゃもんをつけてしまうと・・・

 

 今回の事件に限らず、店にいちゃもんをつける過程で成立し得る問題について検討します。

 

業務妨害

 

 本件の記事では、「罵声を浴びせて返品を迫り」とあるので、これが事実だとしたら、脅す行為による業務妨害なので、業務妨害のうち、「威力」業務妨害は成立しそうですね。

 「偽計」業務妨害というのもあるのですが、これは虚偽の情報を流すなどによる業務妨害ですね。

 どちらも法定刑は同じですが。 

 

 ちなみに、弁護士も含めた法曹は、威力業務妨害罪と言えば、「被害者の机の引き出しに猫の死骸を入れた」という事例を勉強するため、威力業務妨害罪と聞くたびに、この醜い事例を思い出してしまいます。嫌ですね。

 

強要罪

 

 本件ではそのような事実はないようですが、以前の別の人による別の事件で、店員さんに無理やり土下座させたという事件があり、強要罪が成立しました。

 

 この強要罪というのは、店員などとの揉め事の際に、暴力を振るっていなくても(暴行を振るえば、暴行罪ですね)、怒りのあまりに相手に意思に反して土下座等を要求してしまったりすると、成立し得るので、注意が必要です。

 

信用棄損罪

 

 本件では、信用棄損罪も挙がっています。

 似たような罪として名誉棄損罪がありますが、信用棄損罪の場合は、お店の経済的な側面における人(店)の社会的信用を貶める行為です。

 

 本件では、買ったブランドシャツが偽物だったと迫っている状況をユーチューブにアップしたということなので、これが事実なら、信用棄損罪も成立しそうです。

 

自分で犯罪の証拠を作って公開してる・・・

 

 なお、本件が特殊なのは、自らの犯罪の証拠を、自ら作り出して、公開してしまっているところでしょうか。皮肉ですね。

 

 

ネットでの収益システム

 

 私、あまりネットの収益システムに詳しくないので間違っているかもしれませんが、ユーチューブとかは再生回数が増えると収益に結びつくようにできるのですよね。

 

 なので、単に「面白いこと」(これは素人には限界がありますよね)や「有益な情報を提供すること」を超えて、自分の収益(あるいは、有名になりたいという自己顕示欲もあるのかもしれません。)のため、過激だったり炎上したりするようなことをし、それがどんどんエスカレートするんでしょうね

 

 そして、このユーチューバーというのが子どもの人気の職業なんですよね。

 んー。

 

最後に

 

 全く理由なく、お店の店員などにクレームをすることは、もちろん問題外です。

 しかし、相当な理由でお店にクレームするのであっても、カッとなってしまい、(暴力を振るわないまでも)店員に土下座を強要したり、大声でこの「お店は、ひどい商品を売っている」と叫んだりすると、場合によっては前述した強要罪業務妨害罪、信用棄損罪などが成立し、逮捕・勾留されてしまうこともありますので、十分に注意しましょう。

 

 あと、収益に結び付くという動機の下、ユーチューブのような動画サイトやブログもなどで、お店や他人を言論で攻撃するような行為も、名誉棄損罪や侮辱罪、信用棄損罪、業務妨害罪となり得ますので、十分に注意しましょう。

 

 

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特許実務-間接侵害のリスクが高い部品・部材

 

f:id:masakazu_kobayashi:20201016190346j:plain

間接侵害等に関するプレゼンの項目

 

はじめに

 

 本日、私が業務委託で働いている会社で、間接侵害等のリスク分類とそのポイントについてプレゼンをしました。同タイトルで総論のお話をし、各論として出席者から事前に頂いた5件の間接侵害が問題となる具体的事例での解説をしました(各論については、社内の実際の事例なのでここで説明はできませんが)。

 

 総論部分の内容については、実は、以前記事にしました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

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 今回のプレゼンで、色々質問を頂いて、あらためて自分の理解の不十分さも認識するとともに、同時に大変勉強になりました。

 

 やっぱり、何かを理解するのに一番良いのは、事前準備してプレゼンをし、質問攻めにあうことですね。大変ではありますが。

 

 さて、今日プレゼンをし、出席者の皆様から質問を頂き、あらためて、間接侵害のリスクが高い製品(部品・部材等)とは、どういうものかについて考えさせられましたので、ちょっとまとめておきたいと思います。

 

間接侵害のリスクが高い部品・部材等

 

 (最終的に他社の部品・部材等と組み合わされる)自社が製造・販売する部品・部材等について、間接侵害のリスクが高い場合について検討してみたいと思います。

 ここでは、コア技術品と呼ぶことにしたいと思います。

 なお、機械部品やモジュールを想定しています。材料とかは、(後述する特許性の判断のところで)ちょっと考え方が変わってくるかもしれません。

 

コア技術品に、汎用性がある場合

 

 まず、ネジのようないわゆる汎用品(特許法101条2号、5号参照)であれば、そもそも、間接侵害品となるリスクはありません。

 

 しかし、汎用品ではないとしても、それ自体で特許性のある技術的特徴を有するコア技術品であり、かつ、それが汎用的に用いられるものである場合には、(製品としては、様々なところで使用されるので、売上げも伸びて素晴らしいのですが、)その後の流通や最終製品のバラエティを把握することが難しくなるので、(思わぬところで特許権侵害が生じてしまうという意味で、)間接侵害のリスクが高くなってしまいます。

 

 逆に、汎用性が高くなければ、その後の流通や最終製品のバラエティは把握しやすいので、間接侵害品としての特許クリアランスは、調査範囲が限られるという意味において、比較的容易ということになります。

 

コア技術品が、他社の「それなりの」部品・部材等と組み合わされて製品化される場合

 

(1)コア技術品が、他社の「しょうもない」部品・部材等との組合せで利用される場合

 

 まず、コア技術品が、他社の「しょうもない」部品・部材との組合せで利用される場合は、確かに、コア技術品が、不可欠品(特許法101条2号参照。)などの間接侵害品に該当するリスクは高まります。

 

 しかし、実際には、それほど深刻な問題にはならないかもしれません。

 

 というのは、コア技術品について、自社で特許出願をし(特許化し)ておけば、それが公知になりますので、他社によって後に出願される(「しょうもない」部品・部材との)組合せ発明については、予め他社による特許化は阻止され、あるいは、特許化されたとしても、自社の公知技術に基づいて後に無効化することが比較的容易であると思われるからです。

 

 したがって、この場合、(客観的要件等を満たして)間接侵害となるリスクが高くても、同時に、特許を無効化できる可能性も高いことになり、リスクは相対的に下がることになります。

 

(2)コア技術品が、他の「それなりの」部品・部材と組合せで利用される場合

 

 一方で、コア技術品が、様々な他社の「それなりの」部品・部材(コア技術品と同等な部品・部材等)との組合せで利用される場合は、リスクが高くなります。

 

 前述のように、たとえ、自社がコア技術について特許出願をし、公知となっていても、(1)の場合とは異なり、他社が組合せ発明について特許権を取得してしまう可能性が高く、しかも、無効化できない可能性が高くなるからです。

 

 これは、なかなか厄介です。

 

 リスク軽減策としては、自社として、想定される様々な組合せ発明についても特許権を取得しておくということが考えられますが、これはあくまでも理想論です。

 

 コア技術品が汎用品であればあるほど、自分の事業と関わらないところでの組合せ発明については、出願段階では(従属項を設けるなどして)自社として組合せ品まで特許化(公知化)することは、そもそも想定すること自体が難しいかもしれませんし、後に組合せ発明を別出願するとしても、事業外の発明であったりすると、コストやリソースとの関係で、現実的には難しいからです

 

 いや、「素晴らしいコア技術品については、あらゆる組合せをどんどん特許出願して、事業を拡げていきましょう」と、法律特許事務所の人間としては言いたいところですが・・・(笑)。

 

最後に

 

 まとめると、

(1)汎用品ではないものの、それ自体で特許性を有する技術的特徴を有し

(2)(他の部品・部材等と組合せるなど)汎用的に用いられ

(3)他社の「それなりの」部品・部材等と組み合わされる

(4)部品・部材等

 

は、製品としては売上げに寄与する素晴らしい性質を有しているのですが、

 

一方で、

 

(1)自社が、様々な組合せ発明について、自社の事業外であるなどの理由で、特許を取得する現実的可能性が低い一方、

(2)他社に、組合せ発明について特許権を取得され、

(3)汎用的に用いられるが故に、流通や組合せ製品のバラエティを把握することが難しく、

 

その結果、(思わぬ組合せ製品との関係で)間接侵害とあってしまうリスクが高く、特許クリアランスが難しくなります。

 

 そして、お金持ちの大企業は、訴訟対象になりやすいので、特に注意ですね。

 

 

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ビール紹介(一番搾り 糖質ゼロ)

 

 はじめに

 

 今日は、年に1度の健康診断の日でした。

 

 健康診断表には、過去2年分の「成績」が記載されているのですが、いつも肝臓の「科目」は、落第であるE判定、つまり、「追試」(要検査)です。

 

 おそらく、今年もそうなるんだろうなぁと思いながら、憂鬱な気分になりました。

 

 そこで、今回は、多少なりとも尿酸値を下げ、健康を改善する可能性を探るべく、最近発売されて話題になっている「キリン 一番搾り 糖質0」に期待を込めて購入し、飲んでみました。

 

  前回から、ビール紹介記事を始めています。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 

キリン 一番搾り 糖質0

 

 ものすごく色々と頑張ってやっと実現した糖質0ビールでしょうから、あまりケチはつけたくありませんが、冷静に飲んでみました。

 

 ちなみに、スーパーで買いましたが、値段は普通のビールと同じでした。

 

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キリン 一番搾り 糖質0

原材料

 麦芽、ホップ、糖類です。麦芽100%ではないのですね(しかし、ドイツ留学経験者とは言え、そこは別に問題ありません。)。

 

 しかし、糖類が入っているけど、最終的に糖質ゼロになるんですね。

 

 アルコール4%。これもまぁ普通。

 

 まず、普通のビールより色は明らかに薄いです。健康診断つながりで言えば、薄い色の尿の方が健康なので、色の薄さは、まぁいいですね。

 まぁ、味が勝負なので。

 

泡立ち

 泡立ちはそれほど良くありません。でも悪もありません。

 それも、許容範囲ですね。

 

炭酸

 通常の一番搾りと同様、炭酸はしっかりしています。

 キレも良いです。

 

 予想より、麦芽が十分感じられます。糖類が原材料に含まれるとはいえ、発泡酒とは違い、麦芽が多く使われているのですね。

 

 爽やかで、さっぱりしています。

 しかし、ちょっと薄い気がします。というか、麦芽は感じますが、水で薄めた感じ。

 何か、あまりにも後味がなく物足りないという感じです。

 

 バドワイザーとかハイネケンが好きな人にはよいかも・・・。

 

  なので、さらっと飲めてしまい、「あれ、ビール1缶飲んだっけ?」っていう感じです。

 

最後に

 

 やはり健康は大事ですし、3杯目以降からは、このビールにするように努力したいと思います

 

 でも、やっぱり、1杯目、2杯目(最初の1リットルくらい)は、普通のビールが飲みたいですね。

 

 引き続き、ビール各社様の研究・開発を心より応援したいと思います。

 

  

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刑事事件-上告棄却決定に対する異議申立て

 

はじめに

 

 今回は、上告棄却決定(刑事事件が最高裁まで行ったが、無罪や量刑不当の主張が認められなかった場合)が出てしまった後の、不服申立ての手段である異議申立てについて紹介したいと思います。

 

 私が、刑事事件の上告審を積極的に担当していることについては、以前記事にしました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

異議申立て

 

 裁判制度は、第一審(簡易裁判所or地方裁判所)、控訴審高等裁判所)、上告審(最高裁判所)の三審制で、刑事事件も同様です。

 

 しかし、上告棄却決定については、更に、異議申立てが可能です。

 もっとも、最高裁の同じ裁判合議体が判断しますので、上告棄却決定が覆る可能性は、残念ながら、ほぼありません。

 

 それでも、なお、なぜ異議申立てをするかというと、

 

① 執行猶予付き判決であった前刑の執行猶予を満了させるために確定を遅らせるため

  (前刑の執行猶予期間が満了する前に、本件が確定してしまうと、前刑の執行猶予が取り消され、前刑と今回の刑とを合算した年数の懲役に服さなければならなくなってしまいます。一方で、異議申立てなどで本件の確定前を遅らせ、確定前に前刑の執行猶予期間が満了してしまえば、前刑の罪による懲役には服す必要がなくなります。)

 

② 事件の確定を遅らせ、刑務所に行くのを遅らせるため

  (在宅事件などで、刑務所に行く前に、なるべく頑張って仕事してお金を稼ぎ、刑務所に行く前に家族の生活費を残すためなど。)

 

などの場合に、(本来的な理由ではありませんが、)利用されます。

 

期間制限

 

 異議申立ての申立て期間は、非常に短く、被告人に送達された翌日から数えて3日以内必着です。

 

 たとえば、大阪にいる被告人の上告事件の場合、東京にいる私の方が先に上告棄却決定を受けることが多いのですが、大阪の被告人が上告棄却決定を受領した翌日から3日以内に、異議申立書を提出(必着)しなければなりません。

 

 たとえば、金曜日に上告棄却決定が被告人のところに到着すると、月曜日には異議申立書を提出(必着)しなければならないので、〆切がタイトで大変です。

 

 最近担当事件で、私は、万が一にも期限を徒過してしまうのが怖いので、念のため、上告棄却決定を自分が受領した日のうちに、異議申立書を、最高裁の夜間受付に提出しに行きました(予め準備してありました。)。

 

 夜間の書面提出に関しては、

 ① まず、最高裁の入口で「入構票」なるものをもらい、入構時間を記入し、

 ② 電話ボックスが大きくなったような密閉空間で(1人用)、提出書類を備え付けの封筒に入れて密閉し、入構票の写しを封筒に糊で張り付けて、密閉空間内にあるボックスに提出し、

 ③ その後、入構票に退構時間を記入し、警備員の署名・押印をした入構票の写しを、控えとして受け取ります。

 

 そして、念のため、翌日、最高裁の担当書記官に電話し、異議申立書の受領を確認しました。

 

 異議申立書を提出してから、申立ての棄却決定が出るまでは、だいたい約2週間くらいです

 つまり、2週間、本件が確定するのを遅らせることができます。

 

最後に

 

 上告棄却後の異議申立てについては、実はこの制度自体を知らない弁護士も多いのですが、刑事事件の確定や刑に服することを遅らせることができるという理由で、被告人からの依頼により、ときどき利用します。

 

 しかし、申立て期間が3日間と大変短いので、注意が必要です。

 

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特許実務-特許保証規定がない!

 

はじめに

 

 前2回に分けて、間接侵害と特許保証について説明しました。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 具体的には、ある会社が、他社へ部品を供給したり、他社から供給を受けたりする場合で、自社での特許クリアランスが十分に行えない状況において、間接侵害や直接侵害のおそれがある場合に備えて、相手方に特許保証(=第三者特許権等を侵害した場合の保証)を要求するための特約(=契約での取り決め)についての記事でした。

 

 今回は、そもそも、部品供給契約等において、特許保証の定めがなかった場合に、どのような事態なるか(なお、救済されるか)について説明したいと思います。

 

特許保証がない場合

 

 本来は、第三者特許権等の侵害リスクに備えて、あらためて、特許保証を含めた契約をすべきですが、様々な事情で、特許保証を得られていない状況が考えられます。

 

 たとえば、昔からの取引基本契約のみで売買がなされており、今更あらためて契約を締結することがないなど、特許保証がない場合が考えられます。

 

 この場合は、一切、特許保証が得られないことになるでしょうか?

 

 必ずしもそうではありません。契約に規定がない場合には、民法や商法の規定に戻って考える必要があります。

 

民法、商法の規定

 

 特許保証に相当し得る民法の規定は、瑕疵担保責任です。

 ・・・と言いたいところなのですが、4月からの民法改正の施行により、契約不適合責任という名称になり、ちょっと変わっています。

 

 法の改正というのは、弁護士にとっては恐ろしいことです。ずーっとキャッチアップしていかなければならないのですから・・・。

 

 そうはいっても、実質的に大きく変わるものではなく、売買の目的物に瑕疵がある場合(契約内容に不適合な目的物の場合)に責任を追及するための制度です。

 

 「第三者特許権等を侵害している、ひどい目的物を売りやがって!」

 

という感じで、目的物に瑕疵(欠陥)がある場合に責任を問うのです。

 

 もっとも、たとえば、リンゴの表面が少し腐っていたなどとった(目に見えるような)「物理的な瑕疵」ではなく、「法律的瑕疵」に該当します。

 しかし、このような「法律的瑕疵」も契約不適合責任における「瑕疵」に該当し得ます。

 

 ですので、買主は、売主に対して、この契約不適合責任の要件を満たせば、責任を追及することができます(民法562条以下)。

 

 具体的には、

 

 ①「ちゃんとしたの(侵害品ではないもの)を持ってこい!」(追完)、

 ②「まけろ!」(代金減額)

 ③「もう、おまえとは取引をやめる!」(解除)

 ④「金払え!」(損害賠償)

 

といった請求をすることができます。

 

契約不適合責任の問題点

 

 それでは、契約で特許保証を取り決めなくても、民法で契約不適合責任を追及すれば足りるのではないか、というと、必ずしもそうではありません。

 結構、致命的な問題があります。

 まずは、以下の民法の規定を見てください。

--------------------------------------------------------------------------------------------------

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 知った時から1年以内に売り主に通知をすることを求めています。

 「まぁ、1年もあれば大丈夫じゃない」、と思うかもしれませんが、企業同士(商人間)の場合には、商法の規定が適用されることを忘れてはいけません。

 

--------------------------------------------------------------------------------------------------

(買主による目的物の検査及び通知)
第五百二十六条 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない
2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

--------------------------------------------------------------------------------------------------

 

要するに、

 

 ・買主は、目的物を受領後、直ちに検査しなければならない。

 ・瑕疵(内容不適合)を発見した場合は、直ちに、売主に通知しなければならない。

 ・検査ですぐに発見できない瑕疵(内容不適合)の場合は、受領後6か月以内に通知

しなければならない。

 

 侵害品(第三者特許権を侵害するような目的物)が売買の目的物の場合、先に述べた物理的な瑕疵(リンゴが一部腐っているなど)とは違い、検査ですぐく発見できません。

 ですので、上の3番目の場合、つまり、受領後6か月以内に通知することが、要件になります。

 

 しかし、特許権侵害の事実は、なかなか、納品後6か月で判明しませんよね。

 むしろ、警告状をもらって、特許権侵害の事実を知ったときには、既に納品から6か月が過ぎているということの方が普通だと思われます

 

 ということで、この商法526条2項の厳しい期間制限により、実質的に、契約不適合責任を問うのが難しくなっています。

 

 翻って、古い取引基本契約などに、特許保証の規定自体がなくても、(改正前の民法に習い)瑕疵担保責任の規定はあるかもしれません。その契約で、瑕疵担保責任のためのより長い期間が設定されていればよいのですが、実際には、おそらく、前述の商法の規定(6か月)と大差ないかもしれません。あるいは、3か月と更に短くなってしまっているかもしれません。

 

最後に

 

 ということで、結局のところ、特許保証規定は、できれば、契約にちゃんと規定しておいた方が良いということになります。

 (契約は相手のあることなので、こちらの都合の良いことばかりを書くことができるわけではありませんが、)売買の目的物が第三者特許権を侵害しているとう不測の事態に備え、相手方からの保証を確保しておきたいところです。

 

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ビール紹介(網走ビール)

 

はじめに

 

 私は、現在、法律事務所(東京駅と有楽町駅の間)と某社知財部(港区)で働いているのですが、国内外の様々なビールを購入するという点では、大変恵まれた環境です。

 

 特に、東京駅から有楽町、銀座のあたりは、アンテナショップ(日本中の都道府県のご当地のものが売っているショップ)が多く、これまでは用もないのであまり立ち寄ったことはなかったのですが、最近ふと立ち寄ると、ご当地ビールが結構置いてありました。

 

 たとえば、有楽町駅の交通会館には、地下に和歌山のアンテナショップ、1Fに秋田のアンテナショップなどがあり、それぞれご当地ビールが置いてあります。その他にも、この周辺には、さまざまな都道府県のアンテナショップがあります。

 

 以前に、秋田刑務所に面会に行った際に、下記記事で、秋田の地ビールを紹介しましたが、なんとすぐ近くのアンテナショップに売っていたのです。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 また、有楽町ビックカメラでは、ドイツを含む世界中のビールが買えます

 また、最近は有楽町駅の高架下にクラフトビールのバーもできはじめました。

 

 素晴らしい環境ですね。

 

 現在も、コロナ渦のせいで、海外渡航はできず、国内旅行もなかなか行けません。

 

 そこで、「ビール紀行」とは並行して、「ビール紹介」のタイトルで様々なビールを紹介したいと思います。

 

網走ビール

 

 

 網走と言えば、網走刑務所が有名ですが、私は残念ながらまだ行ったことがありません。刑事弁護をしている弁護士としては、一度は行ってみたいです(務めたくはありませんが。)。

 

 ということで、今回は、網走ビール株式会社網走ビールです。

 

www.takahasi.co.jp

 

 さて、1杯目は、流氷ドラフト。

 注ぐまで知らなかったので、びっくりしました。

 色のインパクトが半端ないですね。決してソーダではありません。

 オホーツク海の流氷を仕込水に使用しているそうですが、色は着色でしょうね。

 

 網走ビールのホームページを見ると、カラフルなビール(発泡酒)がラインナップで並んでいます(笑)。

 

 厳密には、ビールではなく、発泡酒です。

 麦芽の使用率が25%未満と低く、麦芽を感じられないので私には物足りませんでした。

 

 あっさり飲みやすいし、色やら流氷を使っているやら珍しいので、まぁ、パーティーとかで重宝しますね。

 また飲むとすれば、3杯目以降に飲むビール(発泡酒)といった感じでしょうか。

 

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流氷ドラフト

 

 2杯目は、ホワイトエールです。

 

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ABASHIRI White Ale


  ホームページを見ると、網走産秋播小麦「きたほなみ」を原料に使用しているそうです。流氷やら小麦やら、地元産の素材を使っているというのは、何より素晴らしいですね。

 

 オレンジビール、コリアンダーシードなどの副原料が使われています。

 

 で、これも厳密には発泡酒です。

 

 以前に飲んだベルギービールのような感じでしょうか。小麦は感じられるのですが、ドイツのヴァイツェンとはだいぶ違いますね。

 

masakazu-kobayashi.hatenablog.com

 

 

 このビール(発泡酒)もあっさりして飲みやすいので、3杯目以降に飲むタイプでしょうか。

 

最後に

 

 これからの職場の近所(アンテナショップなど)で購入したビールを紹介したいと思います。

  

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刑事事件-酒気帯び運転(道路交通法違反事件)

 

はじめに

 

 最近は、自動車事故に関する刑事事件がよく話題になっていますね。

 他の同種事案に比べて軽すぎるのではないか等、SNS上で話題になっています。

 

 今回は、私が、過去に担当した私選の道路交通法違反事件(酒気帯び運転)について紹介します。

  知り合いの知り合いの紹介で受任しました。

 

事案

 

 平成25年の事件です。ちょうど、自動車運転の刑罰が厳しくなってきたころです。

 若い女性で、資格を必要とする仕事に就いており、いわゆる酒気帯び運転(0.15ミリグラム以上のアルコールを保有する状態での運転)で、他人の家の庭に突っ込んでしまい、逮捕・勾留され、その後、起訴されました。

 酒気帯び運転は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 お仕事の関係でかなり悩んでいたらしく、お酒を飲んでしまったが、ある用事を思い出し、その状態で運転をしてしまいました。

 

逮捕翌日に受任し、弁護活動

 

 逮捕された翌日に依頼を受けました。ちなみに、関東ですが、東京の事件ではありません。

 

 依頼を受けた当日に、直ちに、庭の住人と示談をしました。実質的な被害はなかったのですが、3万円をお支払い、宥恕文言の付きの示談書をとりかわしました。

 

 その後、本人の反省文(二度とお酒を飲まない誓約)、両親の嘆願書、上司の嘆願書など、弁護人ができるあらゆることをし、関係者が協力的であったこともあり、極めてスピーディーに証拠を集め、自分の中で、ほぼ100点の出来でした。

 

 しかしながら、残念ながら勾留され、かつ、起訴されました。

 この時点で、若かりし頃の私、検事に対し、相当にイラついていました。今でもよく覚えています。

 起訴前に、検事から、この種の事案では一律で起訴する運用基準になっている(ここは、いかにも役人っぽいですね。)と言われ、(元特許審査官という役人だった私は)「だったら、その運用基準を開示してください!」とまで言いました(笑)。

 

 私の専門である特許出願の分野だと、特許審査基準があって(私はもと審査官で役人)、これはちゃんと公開されていますよね。

 

裁判の結果

 

 両親に被告人の監督者として出廷してもらい、証言をしてもらいました。

 被告人に前科・前歴はありませんでした

 公判での弁護活動も、協力者のおかげでほぼ満点でした。

 

 検察官の求刑7月に対し、判決は懲役7年執行猶予3年でした。

 執行猶予が付きましたので、刑務所に行かずには済みました。

 

 しかし、資格関係の仕事のため、(欠格事由ではないのですが)資格を取り消される可能性がでてしまいました

 

事件の量刑等について

 

 私としては、資格関係の仕事についている方なので、起訴を免れたかったのですが、捜査段階でできる最大限のことをやり、示談を含めてすべてうまく行ったのですが、起訴されました。

 

 まだ、弁護士になって何年も経っていなかったので、何より検事に対し、非常に腹立たしく感じたのを覚えています。

 

 弁論要旨(裁判での弁護人の主張)において、通常主張すべき、示談や、身元引受人の存在や、上司の嘆願、本人の反省等に加え、

 当時の私は、どうしても言わずには我慢できなかったのか、

 

 同じ東京高裁の管轄に事案で、当時話題となった有名人の自動車運転過失致死罪(不注意により人を轢いてしまい、亡くなってしまった事件)で罰金100万円で終わった事件を持ち出して公平性を問うとともに、

 

 「弁護人の被疑者段階において、略式起訴による終局処分(※要するに略式罰金)をめざして全力で弁護をしたものの、残念ながら、検事は、『〇〇検察庁の基準によれば、原則として、本件は公判請求の事案である。』と言って譲らず(なお、当職は、その運用基準について開示を求めたが、応じなかった。)、検察官による勾留延長請求が却下され、被告人(※当時は被疑者)の身柄が解放された後、被告人の結婚式の直後に、被告人を呼び出した上で、略式起訴(罰金)ではあく、敢えて公判請求(起訴処分)をした。」

 

と述べて、何と、公訴権濫用論(検察官による起訴自体が、検察官の権限の濫用であり、違法である旨)の主張までしていました。公訴権濫用論の主張は、もしかしたら、最初で最後かもしれません・・・。

 

 私、昔は、かなりイケイケで過激でしたね。

 

最後に

 

 刑事事件の事案は、様々で、同じような事案でも全く同じものはありません。

 

 同じような事案で、ある人は逮捕されず、別の人は逮捕され、また、ある人は略式罰金で終わり、別の人は起訴(裁判)されて懲役となる。

 

 弁護人としては、当該事件で、被疑者・被告人に有利となるあらゆる証拠を集めるのが大事で、他の事件と比べて、どうこうというのはそれほどは主張しません。(が、どうしてもというときは、今回紹介した件のように言ってしまいます・・・。)

 本来であれば、ニュースで話題になった事件(自動車事故関連の事件とは言え、過失の事件であり、同種の事件とまでは言えません。) よりも、過去の裁判例を調査し、対比して、主張するのがより説得力がありますね。

 もっとも、時代によって刑罰が重くなったりもします。最近だと、自動車関連の刑事事件や性犯罪、詐欺罪などです。

 この当時、自動車関連の刑事事件は、ある悲惨な事件が報道されたのをきっかけに、特に重くなっていた頃でした。

 

 今も、自動車事故関連の刑事事件で、その意見が正しいか否かは別として、(そもそも逮捕されていないことについて)公平性を問う意見がSNSで多数を占めています。

 

 繰り返しになりますが、事件というのは、1つとして同じ事件はありません。

 しかし、やはり、公平性という観点は、一般の人にとっても、私のように専門であっても、気になるところです。

 

 裁判員裁判がはじまって大分経ちますが、国民の納得感の得られる司法が実現してもらいたいところです。 

 

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